国土交通省は、令和8年度「既存建築物省エネ化推進事業(LCCO₂評価実施型)」の第2回提案募集を開始しました。対象は、民間事業者等が行う既存建築物、特に非住宅建築物の省エネ改修工事です。応募期間は令和8年10月16日から11月27日までで、採択事業は令和9年1月頃を目処に公表される予定です。
事業名 | 令和8年度 既存建築物省エネ化推進事業(LCCO₂評価実施型) |
募集内容 | 建築物の省エネ改修工事に関する企画提案募集 |
応募期間 | 令和8年10月16日(金)〜11月27日(金) |
主な対象 | 非住宅の既存建築物における省エネ改修工事 |
補助率 | 補助対象工事の1/3 |
補助限度額 | 5,000万円/件(設備部分は2,500万円) |
加算 | バリアフリー改修工事を併せて行う場合、当該工事費として2,500万円を加算可能 |
採択公表予定 | 令和9年1月頃を目処 |
問合せ先 | 既存建築物省エネ化推進事業(LCCO₂評価実施型)評価事務局 |
今回のポイントは「設備更新だけ」では足りないことです
今回の事業は、省エネ改修であれば何でも対象になる、という内容ではありません。
主な要件として、躯体、つまり壁・天井等の省エネ改修を伴うことが示されています。高機能換気設備を設置する場合も、躯体または外皮の改修を伴うことが求められています。
あわせて、改修前と比較して20%以上の省エネ効果が見込まれることが基本要件です。ただし、外皮改修面積割合が20%を超える場合は15%以上などの扱いも示されています。
中小建設業にとって重要なのは、これは単なる「空調を高効率機器に入れ替える補助金」ではないという点です。断熱、開口部、空調、換気、給湯、照明などを組み合わせ、建物全体の省エネ性能をどう上げるかを提案する事業として見る必要があります。
補助対象になる工事の幅は広いが、組み立て方が重要です
別紙では、補助対象として次の費用が示されています。
- 省エネ改修工事
- 省エネ改修工事と併せて実施するバリアフリー改修工事
- エネルギー計測に要する費用
工事イメージとしては、天井・外壁等の断熱、複層ガラスや二重サッシなどの開口部改修、高効率空調設備、換気、給湯、LED照明などが挙げられています。
また、バリアフリー改修として、スロープ設置、廊下等の拡幅、手すり設置、段差解消なども、省エネ改修と併せて実施するものとして示されています。
ここから読み取れるのは、単独工種の受注ではなく、複数工種を束ねた改修提案が評価されやすい構造です。専門工事会社であっても、元請や設計者、設備会社、建物管理会社と連携することで、提案の一部を担える可能性があります。
建設会社側から見ると「建物オーナーへの提案材料」になります
この事業の申請主体や詳細な応募方法は、募集要領等で確認する必要があります。一方で、建設会社の実務としては、補助金を使うのは建物オーナー側でも、提案の入口をつくるのは施工会社側になり得るという見方が大切です。
たとえば、倉庫、事務所、店舗、工場、福祉施設、教育施設など、非住宅の既存建築物では、空調負荷や照明、断熱性能に課題を抱えているケースが少なくありません。
そのような顧客に対して、単に「古くなった設備を交換しましょう」と提案するのではなく、省エネ効果、補助制度、将来の運用コスト、建物価値の維持を一体で説明することが、今後の改修営業では重要になります。
特に、エネルギー価格や脱炭素対応への関心が高まるなかで、建物オーナーは「必要なのは分かるが、投資判断が難しい」と感じています。そこに、補助制度を含めた改修計画を提示できる会社は、価格競争だけではない位置に立ちやすくなります。
2,000㎡以上の大規模建築物ではLCCO₂評価が論点になります
今回の事業名にも入っている通り、大規模建築物、具体的には2,000㎡以上の改修の場合、ライフサイクルカーボン評価を実施し、その評価結果を国に報告することが要件として示されています。
LCCO₂評価は、建物の使用段階だけでなく、資材や工事なども含めたCO₂排出を捉える考え方です。中小建設業にとっても、今後この考え方は無視しにくくなります。
今回すぐに自社で評価業務まで担う必要があるとは限りません。ただし、「省エネ性能」だけでなく「ライフサイクル全体の環境負荷」が工事提案の言葉になり始めていることは押さえておきたいところです。
今後、公共工事や民間の大規模改修でも、同様の考え方が広がる可能性があります。まずは、設計事務所や評価機関、設備設計者との連携先を持っておくことが実務上の備えになります。
応募期限から逆算すると、早めの案件整理が必要です
応募期間は令和8年10月16日から11月27日までです。採択は令和9年1月頃を目処とされています。
このスケジュールを見ると、これから新規に対象建物を探し、現地調査を行い、省エネ効果を整理し、工事内容を詰め、申請資料を整えるには、あまり余裕があるとは言えません。
中小建設企業がまず確認したいのは、次のような点です。
- 既存顧客に、非住宅の建物オーナーや管理者がいるか
- 断熱、開口部、空調、照明などの改修ニーズがある建物があるか
- 省エネ効果を試算できる設計者・設備会社・外部パートナーがいるか
- バリアフリー改修と組み合わせられる案件があるか
- 2,000㎡以上の案件ではLCCO₂評価の対応先を確保できるか
重要なのは、補助金情報を見てから動くのではなく、日頃から「補助対象になり得る改修案件」を社内で棚卸ししておくことです。今回の募集に間に合う案件が限られるとしても、この視点は次回以降の提案力につながります。
中小建設業は「省エネ改修を売る会社」へ少しずつ移行できます
建設業にとって、省エネ改修は単なる環境対応ではありません。既存建築物の老朽化、エネルギーコスト、快適性、テナント確保、資産価値維持といった経営課題に直結します。
そのため、これからの改修営業では、「何を直すか」だけでなく「直すことで建物の収支や使われ方がどう変わるか」まで説明できることが強みになります。
今回の制度は、補助率1/3、上限5,000万円という大きな支援枠が示されています。設備部分の上限や、バリアフリー改修の加算もあります。もちろん、実際に活用できるかどうかは、建物条件、工事内容、募集要領、審査結果によって変わります。
それでも、建設会社側としては、自社の営業資料や顧客提案の中に「省エネ改修」「補助制度」「運用コスト削減」「脱炭素」を組み込む好機です。特に改修・設備・内装・外装・サッシ・断熱に関わる会社は、顧客との会話の切り口として押さえておく価値があります。
自社案件に使えるかを整理するところから始める
今回のような制度は、要件を一つずつ確認しないと、自社や顧客の案件に使えるか判断しにくいものです。特に、省エネ効果の見込み、躯体・外皮改修の有無、設備改修との組み合わせ、申請体制、協力会社との役割分担は、早めに整理しておくと動きやすくなります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、建設企業の持続的成長を支援しています。今回のような補助制度についても、「自社の顧客に提案できそうか」「どの案件から確認すべきか」「社内で誰が何を準備するか」といった段階から一緒に整理できます。
無理な営業はいたしません。まずは、うちの場合はどう考えるべきか、何から確認すべきかを整理する場としてご活用ください。