国土交通省は、令和8年5月に公布された「物資の流通の効率化に関する法律の一部を改正する法律」の施行期日を定める政令が閣議決定されたと発表しました。施行日は令和8年11月1日です。
この改正は、トラックドライバーの負担軽減を図りながら物流を維持するため、長距離輸送を複数のドライバーで分担する「中継輸送」を推進するものです。建設業そのものを対象にした制度ではありません。ただし、建材・設備・仮設材・機械などを日々動かす建設会社にとって、資材調達と現場搬入の前提が少しずつ変わるサインとして見ておきたい内容です。
閣議決定された政令 | 物資の流通の効率化に関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令 |
改正法の目的 | トラックドライバーの負担軽減と物流維持のため、中継輸送を推進 |
改正法の公布 | 令和8年5月20日 |
政令の公布予定 | 令和8年10月21日 |
改正法の施行日 | 令和8年11月1日 |
建設会社が見るポイント | 建材・機材輸送、現場搬入、荷主としての協力姿勢 |
今回のポイントは「中継輸送」を制度として後押しすることです
今回の改正で中心になるのは、貨物自動車中継輸送事業です。
中継輸送とは、ひとつの長距離輸送を、複数のドライバーや車両の連携で担う考え方です。長距離をひとりのドライバーが走り切るのではなく、途中の中継拠点で運転者の交代や貨物の受渡しを行います。
法律要綱では、中継輸送に使う施設として、次のような機能を持つ「特定貨物自動車中継輸送施設」が定義されています。
- 二以上の貨物自動車が駐車・停留できること
- 貨物を車両相互間で積み替えるまで一時保管できること
- 高速自動車国道など、物流の結節機能を持つ道路の近くに立地すること
- 入浴設備を備えた待機所など、ドライバーの疲労回復に資する施設を併設すること
- 荷役場所への出入り管理装置や、搬入・搬出・仕分けを円滑にする情報処理システムなどを備えること
つまり、単に「途中で荷物を載せ替える」という話ではありません。ドライバーの働き方、物流拠点、情報システム、荷役の段取りを一体で整える制度として設計されています。
建設業への影響は「資材がどう届くか」に表れます
この制度は、建設会社に直接新しい許認可を求めるものではありません。主な対象は、貨物自動車運送事業者や中継輸送施設を使う事業者です。
ただし、建設業は物流の影響を強く受ける業界です。
鉄筋、型枠材、配管材、電気設備、内装材、建設機械、仮設材。現場は、毎日のように物が動きます。とくに遠方メーカーからの納品、広域で展開する資材商社からの配送、工場加工品の搬入では、長距離輸送が関係することもあります。
そのため、今後は一部の輸送で、次のような変化が出る可能性があります。
- 納品ルートが中継拠点を前提に組まれる
- 当日配送や時間指定の考え方が見直される
- 荷待ち・荷役時間の短縮を求められる場面が増える
- 資材業者や運送会社から、搬入条件の調整依頼が来る
- 現場側にも、受入時間や荷下ろし段取りの明確化が求められる
ここで大事なのは、物流の問題を運送会社だけの問題として見ないことです。現場の「朝一で全部入れてほしい」「前日夕方に変更したい」「荷下ろし場所は当日決める」といった運用は、これからますます調整が難しくなる可能性があります。
荷主・倉庫業者等にも「協力」の責務が置かれています
法律要綱では、事業者の責務として、一般貨物自動車運送事業者・特定貨物自動車運送事業者に対し、相互に連携して中継輸送を実施するよう努めることが示されています。
あわせて、荷主及び倉庫業者等は、業務の遂行に支障のない範囲内で、中継輸送の円滑な実施に協力するよう努めなければならないとされています。
建設会社が常にこの「荷主」に当たるとは限りません。契約形態や取引条件によります。資材メーカー、商社、販売店、元請、専門工事会社のどこが輸送を手配しているかによって立場は変わります。
それでも、現場で物を受け取る側としては、荷待ちを減らす、受入条件を明確にする、急な変更を減らすといった協力が、今後の取引のしやすさに直結していきます。
これは大企業だけの話ではありません。中小建設会社ほど、資材屋さん、運送会社、協力会社との関係性で現場が回っています。相手が困る段取りを続けると、納期・運賃・優先順位にじわじわ影響します。逆に、段取りのよい会社は、物流制約が強まる局面でも選ばれやすくなります。
まず確認したいのは「遠方から来るもの」と「時間指定が厳しいもの」です
今回の改正を受けて、すぐに社内規程を大きく変える必要があるとは限りません。まずは、自社の現場で物流負荷が高いものを棚卸しするのが現実的です。
見ておきたいのは、次の4点です。
- 遠方から届く資材・機材は何か
工場加工品、特殊資材、設備機器など、長距離輸送に依存しているものを確認します。
- 時間指定が厳しい搬入はどこにあるか
クレーン手配、道路使用、夜間搬入、狭小現場など、時間がずれると現場全体に影響するものを洗い出します。
- 荷待ちが発生しやすい現場はどこか
搬入口が狭い、仮置き場がない、職長不在時に判断できない、といった現場は改善余地があります。
- 資材業者・運送会社との連絡ルールは明確か
誰が、いつ、何を連絡するのか。搬入変更の締切はいつか。ここが曖昧だと、物流側にしわ寄せが出ます。
特に中小建設業では、現場監督や職長の経験値で何とかしている部分が多くあります。そこに制度変更や物流制約が重なると、属人的な段取りでは回りにくくなります。搬入予定、受入体制、変更連絡のルールを見える化することが、地味ですが効きます。
これからは「安く運ぶ」より「止めずに届く」が価値になります
物流は、建設会社から見ると外部の機能に見えます。ですが、現場が止まる理由の多くは、外部と内部の境目で起きます。
材料が届かない。届いたが置き場がない。荷下ろしできる人がいない。予定が変わったのに連絡が回っていない。こうした小さな詰まりが、工程の遅れ、残業、追加費用につながります。
今回の中継輸送の推進は、物流側の働き方を守りながら、必要な物資を必要なときに運ぶための制度です。建設会社としては、運送会社に無理をお願いする前提から、物流と一緒に工程を組む前提へ移ることが大切になります。
見積段階でも同じです。遠方搬入、時間指定、夜間搬入、狭小地搬入などがあるなら、運搬費や段取りコストを早めに織り込む必要があります。安く見せるために物流条件を曖昧にすると、あとで現場が苦しくなります。
これからの原価管理では、材料費だけでなく「届き方」まで見ることが、利益を守る視点になります。
自社への影響を整理するところから始める
今回の改正は、建設会社にとって「明日から何かが一斉に変わる」という話ではありません。一方で、物流の制約は確実に現場運営へ近づいています。
まずは、自社の主要な資材・機材について、どこから、誰が、どの条件で運んでいるのかを整理してみるとよいです。そこから、搬入ルール、協力会社との連絡、見積時の運搬条件、現場の受入体制までつながって見えてきます。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。物流や資材搬入の変化についても、「うちの場合はどこから見ればよいか」「見積や工程管理にどう反映すべきか」といった段階から一緒に整理できます。
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