国土交通省は、令和7年の全国屋上・壁面緑化施工実績調査の結果を発表しました。令和7年に新たに施工された屋上緑化は約21.9ha、壁面緑化は約4.8haです。屋上緑化は、国立競技場約3個分にあたる規模とされています。

発表内容

全国屋上・壁面緑化施工実績調査の結果

対象期間

令和7年1月1日〜令和7年12月31日

屋上緑化の単年施工面積

約21.9ha

壁面緑化の単年施工面積

約4.8ha

累計施工面積

屋上緑化 約656ha、壁面緑化 約137ha

調査対象企業

全国の造園建設会社など573社

回収状況

280社、回収率48.9%

注意点

令和6年・令和7年データは暫定値

今回の発表は、法改正や補助金の案内ではありません。 ただし、中小建設業にとっては見逃しにくい内容です。 なぜなら、屋上緑化・壁面緑化が「景観づくり」だけでなく、雨水対策、脱炭素、生物多様性、建物価値向上と結びつき始めているからです。

まず押さえたい数字

国土交通省の調査によると、平成12年から令和7年までの26年間で、屋上緑化は約656ha、壁面緑化は約137haが施工されました。

令和7年単年では、次の通りです。

  • 屋上緑化:約21.9ha
  • 壁面緑化:約4.8ha
  • 屋上緑化の1件あたり施工面積は過去最高値
  • 建築着工数は令和7年に88,875件で、前年より約8,300件減少

ここが大事です。 建築着工数は減っています。 屋上緑化・壁面緑化の施工件数も、過去のピークからは減少傾向が見られます。 一方で、屋上緑化は1件あたりの施工面積が大きくなっています。

「小さな案件がたくさんある市場」から、少なくとも屋上緑化では、大きめの案件を技術力で取りにいく市場へ寄っている可能性があります。

工場・倉庫・車庫で屋上緑化の割合が高い

令和7年の建物用途別では、屋上緑化で「工場・倉庫・車庫」の割合が最も高く、38.3%となりました。

壁面緑化では、「事務所」の割合が最も高く、次いで「商業施設」と「工場・倉庫・車庫」です。 この3用途で、令和7年の壁面緑化全体の68.1%を占めています。

ここから見えることがあります。

屋上緑化や壁面緑化は、住宅や商業施設だけの話ではなくなっています。 工場、倉庫、車庫、事務所といった事業用建物でも、緑化提案の余地が広がっているということです。

中小建設業にとっては、次のような会話が増えるかもしれません。

「この倉庫、夏場の暑さを少しでも和らげたい」 「雨水流出を抑える工夫はできないか」 「外観だけでなく、環境配慮も示せる建物にしたい」 「新築時に、屋上や壁面の使い方まで提案してほしい」

こうした相談に対して、緑化そのものを自社施工しない会社でも、防水、外構、排水、躯体、維持管理、協力会社ネットワークを含めた提案ができます。

「見た目の緑」から「機能を持つ緑」へ

今回の資料では、近年の特徴的な傾向として、グリーンインフラの事例が紹介されています。

具体的には、次のような機能です。

  • 雨水の貯留・浸透による流出抑制
  • 生物多様性の確保
  • 都市のヒートアイランド現象の緩和
  • 都市の脱炭素化への寄与
  • 美しく潤いのある都市空間の形成

紹介事例には、東海国立大学機構の「Common Nexus」と、麻布台ヒルズがあります。

Common Nexusでは、湾曲した屋上緑化スペースが整備され、雨水の浸透や流出抑制のために、保水・排水マット、立体的な樹脂材による流水路、土留めなどが使われています。

麻布台ヒルズでは、起伏のある屋根形状に対して、蜂の巣状の仕切りで土壌を固定するジオセル工法、自動灌水装置などが用いられています。

ここで見たいのは、有名施設そのものではありません。 中小建設業が見るべきなのは、緑化工事が「植える工事」だけではなく、雨水管理・土壌流出防止・防水・灌水・維持管理まで含む複合工事になっているという点です。

新築時の提案に入り込めるかが重要になる

調査では、屋上緑化・壁面緑化ともに、施工実績の内訳として新築物件が多くを占めています。

令和7年のデータでも、屋上緑化は新築の施工面積が201,553㎡、壁面緑化は新築の施工面積が38,446㎡とされています。

つまり、後から「緑を足す」だけではありません。 新築計画の早い段階で、屋上・壁面・外構・排水・維持管理をどう組み込むかが重要になります。

これは、元請だけの話ではありません。 専門工事会社、造園会社、防水会社、外構会社、設備会社にとっても関係します。

たとえば、営業や現調の場で、次のような一言が出せるかどうかです。

「屋上の使い方は、設備置場だけで考えますか」 「雨水処理や暑熱対策も含めて検討しますか」 「将来の維持管理まで含めると、この仕様の方がよさそうです」

この一言が、単価競争から一歩抜けるきっかけになります。

中小建設業が今確認したい3つのこと

今回の発表を、自社の動きに置き換えるなら、まずは大きく3つです。

1. 自社の周辺業務に緑化提案が絡むか

造園会社でなくても関係します。

防水、外構、土木、建築、設備、改修、維持管理。 どこかで屋上・壁面・雨水・植栽基盤に関わるなら、緑化は隣の業務として見ておく価値があります。

2. 協力会社の顔ぶれを整理する

屋上緑化や壁面緑化は、単独で完結しにくい工事です。

植栽、防水、排水、構造、灌水、メンテナンス。 関係者が増えます。

だからこそ、「どの会社と組めば提案できるか」を先に整理しておくことが大切です。

3. 維持管理まで含めた見積の考え方を持つ

緑化は、完成して終わりではありません。 植物は育ちます。 水も必要です。 土壌や排水の状態も変わります。

施工だけでなく、維持管理の範囲、責任分界、点検頻度、費用の見せ方まで考えておくと、提案の質が変わります。

これは「環境対応」だけでなく、仕事の取り方の変化です

屋上緑化・壁面緑化は、環境に良い取り組みです。 ただ、それだけで見るともったいないです。

中小建設業にとっては、建物に付加価値をつける提案領域です。 そして、価格だけで比べられにくい領域でもあります。

もちろん、すべての会社がすぐに緑化工事へ参入する必要はありません。 ただ、施主や設計者から相談されたときに、

「それは専門外です」

で終わるのか。

「当社だけでは完結しませんが、排水や防水、維持管理も含めて一度整理できます」

と言えるのか。 ここには大きな差があります。

グリーンインフラは、大企業や大型開発だけの言葉ではなくなりつつあります。 自社の商圏、自社の顧客、自社の協力会社網の中で、どこまで関われるか。 そこを一度見ておきたい発表です。

自社ならどこから関われるかを整理する

今回のような市場動向は、すぐに売上へ直結する話ではないかもしれません。 それでも、数年後の提案力には効いてきます。

「うちは造園会社ではないから関係ない」ではなく、屋上、防水、外構、排水、改修、維持管理のどこで関われるかを整理しておくと、次の打ち手が見えやすくなります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。 「ものづくりに集中できる建設業界へ」という考えのもと、建設企業の持続的成長を支援しています。

今回のような新しい提案領域についても、販路拡大、協力会社づくり、見積・原価管理、社内体制の整理まで、会社ごとの状況に合わせて一緒に考えることができます。 「うちの場合はどう考えるべきか」「何から整理すべきかわからない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、まずは状況整理の相手としてお声がけください。

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