国土交通省は、都市デジタルツインを進めるProject PLATEAUについて、2027年度に向けた第2回情報提供依頼(RFI#2)を開始しました。募集期間は令和8年10月20日から令和8年11月13日までです。
今回のポイントは、単なる意見募集ではありません。募集テーマの中に、BIMデータを活用した3D都市モデルの更新、点群・3DGSなどの先進技術、AIと3D都市モデルの活用、災害対応、盛土規制法関連業務の効率化など、建設業や測量、設計、施工管理、自治体業務支援に近いテーマが並んでいます。
発表内容 | Project PLATEAU 2027年度向け 第2回情報提供依頼(RFI#2)の実施 |
募集期間 | 令和8年10月20日(火)から令和8年11月13日(金)まで |
情報提供主体 | 各募集テーマの実施主体となりうる企業、大学、研究機関、団体等 |
募集テーマ数 | 10件 |
主な建設関連テーマ | BIMデータ活用、3D都市モデル更新、点群、AI、災害対応、盛土規制法関連業務 |
注意点 | RFIへの情報提供が、その後の業務採択を保証するものではありません |
今回のRFIは「将来の発注テーマをつくる前段階」です
今回のRFIは、国土交通省が来年度以降に取り組む可能性のあるテーマについて、民間企業などから技術面・実現性面の意見を集めるものです。
ここは大事です。
今回、意見を出した企業が必ず採択されるわけではありません。 もし国土交通省都市局の事業として実施される場合も、あらためて業務等の公募が行われる予定とされています。
つまり、これは「今すぐ受注できる案件」ではありません。
一方で、今後どのような公共DX案件が生まれていくのかを読む材料にはなります。
公共工事も、自治体業務も、測量も、設計も、だんだんとデータを前提に動くようになっています。現場で「図面が古い」「台帳と現況が合わない」「災害時にどこから確認すべきか分からない」といった困りごとは、どの地域にもあります。
PLATEAUは、その解決の土台として3D都市モデルを整備・活用していく流れです。
中小建設業が特に見ておきたいテーマ
今回の募集テーマは10件です。すべてを追う必要はありません。
中小建設企業にとって関係が深そうなのは、特に次のテーマです。
管理No | テーマ | 中小建設業との接点 |
|---|---|---|
01 | BIMデータを活用した3D都市モデルの更新の効率化 | BIM、建築確認、竣工情報、建物データの活用 |
03 | 3D都市モデルのデータ更新の効率化・更新コスト削減 | 測量、台帳更新、自治体データ整備 |
07 | 点群・3DGS等の先進技術を活用した3D都市モデルの高度化 | 点群測量、3D計測、施工・維持管理DX |
09 | 衛星データと3D都市モデルを活用した災害時の被害把握 | 災害復旧、初動対応、地域建設業の防災領域 |
10 | 3D都市モデルを活用した盛土規制法関連業務の効率化 | 盛土、造成、地形確認、自治体支援業務 |
特に注目したいのは、BIMデータを3D都市モデルの更新に使うというテーマです。
いまの3D都市モデルは、都市計画基本図や航空測量成果などをもとに整備されています。そのため、更新タイミングが元データに左右されます。新しく建った建物がすぐに反映されない。現況とデータがずれる。こうした課題があります。
そこで国土交通省は、建築物の設計・施工段階で作られるBIMデータを、3D都市モデル更新に活用できないかを検討しています。
これは、建設会社にとって小さくない話です。
BIMが、社内の設計・施工管理だけでなく、都市データや行政手続きとつながる可能性があるからです。
BIMは「大手だけのもの」ではなくなっていく可能性があります
中小建設業の現場では、まだBIMに距離を感じる会社も多いと思います。
「うちは専門工事だから関係ない」
「元請から言われたときだけ対応している」
「ソフトも人材も高い。すぐには無理」
そう感じるのは自然です。
ただ、今回の資料を見ると、BIMは単に建物を3Dで描くものではなく、建物の形状、用途、構造、階数、高さ、位置情報、時点情報などを扱うデータ基盤として見られています。
将来的に、建築確認申請や行政側の都市モデル更新とBIMがつながるなら、BIMを扱える会社と扱えない会社の差は、少しずつ広がるかもしれません。
もちろん、すべての中小建設企業が今すぐ大きな投資をする必要はありません。
ただ、経営者としては、自社がどの範囲のデータ対応力を持つべきかを考える時期に入っています。
たとえば、次のような確認です。
- 自社はBIMデータを受け取れるか
- 協力会社や設計事務所とBIMでやりとりできるか
- 点群や3D測量データを施工管理に使った経験があるか
- 竣工情報や施工記録を、後から使える形で残しているか
- 自治体や元請からデータ提出を求められた場合に対応できるか
ここが、今後の公共工事や地域案件でじわじわ効いてくる可能性があります。
盛土規制法や災害対応は、地域建設業との接点が大きい分野です
今回の募集テーマには、盛土規制法関連業務の効率化・高度化も含まれています。
盛土規制法の施行により、自治体には規制区域の指定、許可、施工状況の確認、既存盛土の調査、不法・危険盛土への対応などが求められています。
ここで3D都市モデルや地形データを使うと、現地調査情報の一元管理、規制対象の判定、地形データ比較による地盤変位箇所の可視化などが可能になるとされています。
地域の建設会社にとって、これはかなり現実味のある話です。
なぜなら、盛土、造成、法面、排水、災害復旧は、地域の地形を知っている会社の知見が生きる領域だからです。
また、衛星データと3D都市モデルを使った災害時の被害把握もテーマに入っています。大規模災害時には、自治体や防災関係機関が広範囲の被害を早く把握し、救助・救援、応急復旧につなげる必要があります。
そのとき、地域建設業の現場力と、デジタルデータをつなぐ仕組みが重要になります。
現場を知っている。道路の癖を知っている。崩れやすい斜面を知っている。過去の災害履歴を覚えている。
その知見を、3D都市モデルやデータ基盤と組み合わせられる会社は、自治体から見ても頼れる存在になりやすいはずです。
応募を検討する会社が確認したいこと
今回のRFIに情報提供できるのは、各募集テーマの実施主体となりうる企業、大学、研究機関、団体等です。応募者は法人、または法人に属する個人とされています。
応募する場合は、実施要領に沿って、応募様式に記入し、電子メールで提出します。参考資料の添付も可能です。ただし、メールサイズは10MBを超えないよう注意が必要です。
確認しておきたい点は次の通りです。
- 募集期間は令和8年11月13日まで
- 提出内容は2027年度以降の事業や調査・研究テーマ検討の参考資料として扱われる
- 提出資料は国土交通省都市局および受託者である合同会社デロイト トーマツのみの取扱いとされている
- 情報提供内容の知的財産権は応募者に留保される
- RFIへの情報提供が、その後の公募での採択を保証するものではない
応募する会社は、「自社技術を売り込む」というより、国の事業テーマづくりに、自社の現場知見や技術知見を入れていく感覚が近いと思います。
特に、測量、BIM、GIS、点群、自治体向けシステム、災害対応、盛土・造成関連の知見がある会社は、一度募集テーマを読んでおく価値があります。
応募しない会社も、ここから先の流れは見ておきたいです
今回のRFIに応募しない会社も多いと思います。
それで問題ありません。
ただし、募集テーマは見ておきたいです。なぜなら、ここに国がどの方向へ公共DXを進めたいかが出ているからです。
今回の資料から見える方向性は、次の3つです。
- 都市データは一度作って終わりではなく、更新し続けるものになる
- BIM、点群、衛星、AIなど、建設周辺のデータが行政実務とつながっていく
- 自治体業務、防災、盛土規制など、地域課題の解決に3D都市モデルを使う流れが強まる
これは、現場から見ると少し遠い話に見えるかもしれません。
でも、公共工事の発注書類、施工管理、出来形管理、維持管理、災害協定、自治体支援業務のどこかで、少しずつ関係してくる可能性があります。
「うちはまだ関係ない」ではなく、どの部分なら自社の強みと接続できるかを見ておく。これが大切です。
たとえば、土木会社なら、点群測量や災害時の道路被害把握。建築会社なら、BIMや竣工情報のデータ化。造成・外構・法面に強い会社なら、盛土規制法関連業務。測量会社や設計会社と組める会社なら、自治体向けのデータ整備支援。
入口はいくつもあります。
自社への影響を整理するところから始めても大丈夫です
Project PLATEAUのような話は、少し大きく見えます。BIM、AI、3D都市モデル、衛星データと並ぶと、「うちにはまだ早い」と感じる会社もあると思います。
ただ、最初から大きな投資を決める必要はありません。
まずは、自社の仕事の中でデータ化できていない情報は何か、元請や自治体から今後求められそうなデータ対応は何か、協力会社と組めば対応できる領域はどこかを整理するだけでも十分です。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。DXやBIMの話も、単なるツール導入ではなく、会社の受注戦略や人材育成、現場運用とつなげて考えることが大切です。
「うちの場合はどう考えるべきか」「何から整理すべきかわからない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、今回のような制度・技術動向を自社にどう引き寄せるか、壁打ち先として使ってください。