国土交通省は、令和8年(2026年)8月分の「建設総合統計」を公表しました。建設総合統計は、国内の建設活動を「出来高ベース」で把握するための加工統計です。着工や受注の金額を、工事の進捗に合わせて月次の出来高に展開し、建設工事の実際の進み具合に近い形で推計するものです。

公表内容

建設総合統計 令和8年(2026年)8月分

公表日

令和8年10月20日

出来高総計

5兆9,986億円

前年同月比

2.6%増

民間総計

3兆3,719億円

民間総計の前年同月比

5.8%増

公表先

政府統計の総合窓口「e-Stat」

留意点

今回公表値は、今後の遡及改定等により変わり得る

今回のポイントは、建設出来高全体が前年同月比で増加していることです。特に、概要資料から読み取れる範囲では、民間総計が前年同月比5.8%増となっており、民間側の建設活動が一定の強さを持っていることがうかがえます。

建設総合統計は「いま現場で動いている仕事量」を見る統計です

建設業の経営では、受注額や着工件数だけを見ると、実際の現場稼働とのズレが出ることがあります。大型工事は、契約や着工の時点で金額が大きく見えても、売上や出来高は工期に沿って少しずつ立ち上がるためです。

その点で、建設総合統計は、建設活動を出来高ベースで把握する統計です。つまり、「契約した金額」ではなく、工事の進捗に応じて、どれだけ建設活動が行われたかを見るための材料になります。

中小建設企業にとっては、次のような判断に使いやすい統計です。

  • 市場全体の仕事量が増えているのか、鈍っているのかを確認する
  • 民間工事と公共工事のどちらに勢いがあるのかを見る
  • 自社の受注感覚と、統計上の市場動向にズレがないかを点検する
  • 採用、外注体制、資金繰り、設備投資を考える前提にする

単月の数字だけで経営判断を決める必要はありません。ただし、自社の肌感覚を客観的な数字で補正するという意味では、非常に有効です。

8月は総計で前年同月比2.6%増、民間は5.8%増

今回公表された令和8年8月分では、出来高総計が5兆9,986億円、前年同月比2.6%増となりました。

また、民間総計は3兆3,719億円、前年同月比5.8%増です。これは、中小建設企業にとって見逃せない数字です。

民間工事が伸びている局面では、元請・下請を問わず、次のような変化が起きやすくなります。

  • 職人・協力会社の取り合いが強まる
  • 見積依頼は増えるが、採算の見極めが難しくなる
  • 材料費・外注費・労務費の上昇を価格転嫁できるかが差になる
  • 忙しさに流されると、低採算案件を抱えやすくなる

市場が動いていること自体は前向きです。一方で、出来高が増える局面ほど、会社ごとの利益差が広がります。仕事が多いことと、利益が残ることは別問題だからです。

中小建設企業としては、「受注量」ではなく「粗利と現場負荷」をセットで見ることが重要です。

数字が増えている時ほど、受注判断の基準を曖昧にしない

建設市場が堅調に見える時期は、経営判断が難しくなります。目の前の仕事を断りにくくなり、結果として、人手不足、工程遅延、外注費増、管理不足が重なりやすくなります。

そのため、こうした統計を見るときは、単に「市場が良さそうだ」と受け止めるだけでは不十分です。むしろ、市場が動いている今こそ、自社の受注基準を明確にすることが大切です。

確認したい観点は、次の通りです。

  • どの工種・エリア・取引先で利益が残っているか
  • 売上は増えているが、現場管理者や職人に無理が出ていないか
  • 追加変更、手戻り、待機時間が利益を削っていないか
  • 外注費や材料費の上昇を見積に反映できているか
  • 公共・民間の比率が、自社の体制に合っているか

特に、民間工事の動きが強い局面では、スピード感のある見積対応が求められます。その一方で、条件確認が甘いまま受注すると、後から利益が崩れやすくなります。

忙しい時期ほど、見積・契約・原価管理の基本動作が会社を守ります。

統計は今後改定される可能性があります

国土交通省は、今回公表する値について、今後変わり得るとしています。

建設総合統計では、毎年6月、つまり4月分公表時に、確定した建設投資額の実績値から算出される補正率を用いて、直前の3月分から過去3カ年分を遡及改定します。また、基礎統計等の品質改善に対応して、遡及改定される場合もあります。

したがって、今回の数字は、固定された最終値ではなく、現時点での市場把握のための数字として見る必要があります。

経営で使う場合も、1カ月分だけを切り取るのではなく、次のように扱うのが現実的です。

  • 3カ月から半年程度の流れで見る
  • 民間・公共の方向感を分けて見る
  • 自社の受注残、稼働率、粗利率と照らし合わせる
  • 最新版が出たら前月までの見方を修正する

統計は予言ではありません。ただし、自社の経営判断を感覚だけに寄せすぎないための地図になります。

中小建設企業が今回見るべき実務ポイント

今回の公表から、中小建設企業が実務上確認したいのは、次の3点です。

1つ目は、自社の受注環境が市場全体と同じ方向に動いているかです。市場全体が増えているのに自社の引き合いが弱い場合、営業先、紹介経路、価格、対応スピードのどこかに課題があるかもしれません。

2つ目は、売上増が利益増につながっているかです。出来高が増える局面では、現場数が増え、管理の目が届きにくくなります。売上が伸びても、外注費や手戻りで利益が薄くなっていないかを確認する必要があります。

3つ目は、人員体制と協力会社体制を先に見直すことです。需要があるからといって、無理に案件を抱えると、品質、安全、工程、利益のすべてに影響します。採用だけでなく、協力会社との関係づくり、現場管理者の負荷、若手育成の進め方まで含めて考える必要があります。

今回の統計は、景気の良し悪しを眺めるためだけのものではありません。自社がどの案件を取り、どの案件を見送り、どの体制を強化するかを考える材料として使うべき情報です。

自社の受注・原価・体制を整理するきっかけにする

建設総合統計のような市場データは、そのままでは少し距離のある情報に見えます。しかし、自社の数字と重ねると、見えるものが変わります。

たとえば、受注は増えているのに利益が残りにくい、現場は埋まっているのに資金繰りが重い、採用しても現場に定着しない。こうした課題は、個別の問題に見えて、実際には受注方針、原価管理、人員配置、教育、デジタル活用がつながって起きていることが少なくありません。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。市場環境を踏まえて、うちの場合はどの数字から見ればよいか、何から整えるべきかを整理したい段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、考えを整理する場として必要に応じてご活用ください。

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