前提

大手企業への紹介に、受注までの道筋を求める地方の建設会社

取引先開拓で確かめたいのは、大手企業の誰かに会えることではなく、自社が狙う工事の発注判断につながる相手に会えるかどうかです。

富山県のある建設会社では、大手企業の役員や事業責任者を務めた人の人脈を活用する開拓方法について、経営者から率直な疑問が出ました。紹介を受けられること自体よりも、その先で誰が発注を判断するのかが気になっていたのです。

説明されたのは、紹介者と関係のある現職の支店長や役員などにつなぐ方法でした。それに対して、経営者が確認したかったのは、相手の知名度や紹介者との関係の深さではありませんでした。

「一番わかりやすいのが、決定権があるかどうかじゃないですか」

この会社にとって、新しい接点を持つことと、仕事を受けられることは別の話です。会う機会が増えても、そこから受注までの道筋が見えなければ、開拓方法として判断しにくいという事情がありました。

大手企業との接点を増やしたい会社でも、まず揃えておきたい前提は同じです。紹介先の企業名だけでなく、どの工事について、誰の判断を得るための面談なのかを明確にすることが出発点になります。

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課題

紹介された相手に決裁権がなければ、社内で話を上げ直す負担

問題は相手の役職が高いか低いかではなく、その相手との話が発注判断までどうつながるのかが見えていないことです。

経営者が懸念していたのは、紹介された相手に自社の説明をした後、そこからさらに上の役職者へ話を上げる必要が生じることでした。

「決定権のない人を紹介されて、そこからまた上に上げるんだったら、自分から行った方が早い」

紹介を受けても、その相手がどこまで判断できるのかがわからず、次に誰と話すかも決まっていなければ、接点ができた段階で開拓が止まってしまいます。経営者が避けたかったのは、まさにこの状態です。

ただし、この発言を「支店長には決裁権がない」「役員に会えば受注できる」という一般論に置き換えることはできません。対象となる工事や相手企業によって、確認すべき権限と意思決定の経路は異なります。この会社が狙う具体的な工事について、どの役職にどこまで権限があるかが確認されたわけでもありません。

整理すべきなのは、次の三つです。

  • 狙う工事の発注を判断する部署・役職はどこか
  • 紹介される相手は、その工事についてどこまで判断できるか
  • その相手だけでは決められない場合、誰へ、どのようにつなぐか

決裁権の有無だけで接点を切り分けるのではなく、決裁者までつながる具体的な経路があるかまで確かめる必要があります。

背景

紹介者の豊富な人脈と、経営者が求める発注権限とのずれ

紹介者が誰を知っているかと、その人が自社への発注を決められるかは、分けて確認する必要があります。

大手企業で役員や事業責任者を務めた人から、現在も関係のある相手を紹介してもらえるのであれば、接点をつくる方法として期待は持てます。一方で、経歴や人間関係の説明だけでは、紹介先が狙う工事の発注判断に関わっているかまではわかりません。

この相談でも、紹介する側は、元役員などの人脈と、現職の支店長・役員との関係を説明していました。しかし、経営者が知りたかったのは、その関係の先にある発注権限でした。同じ「取引先開拓」の話でも、説明している対象と確認したい対象がずれていたのです。

その背景には、面談の機会だけでは事業の成果にならないという経営者の考えがありました。

「どんなに件数があっても、決まらなかったらゼロなんですよ」

これは、紹介や面談に意味がないという話ではありません。経営者の目線では、受注に向けて何が進むのかが見えなければ、そこに時間をかける判断がしにくいということです。

また、経営者は、相手の社内で下から上へ話を上げる大変さにも言及していました。だからこそ、人脈を使うのであれば、通常の開拓と比べて、発注判断までの距離をどう縮められるのかを確認したかったと読み取れます。

人脈の価値は、肩書の大きさだけではなく、狙う工事の意思決定にどれだけ近づけるかという視点で見ていくと整理しやすくなります。

解決

狙う工事を起点に、発注権限と決裁者へのつなぎ方を確認

開拓先を選ぶときは、工事の対象、発注を判断する部署・役職、紹介相手の権限、次の接点を順番に確認すると、面談の目的が明確になります。

この相談では、具体的な工事ごとの意思決定経路を確認する前に、紹介できる相手の役職をめぐって認識が分かれました。こうした行き違いを減らすには、「誰を紹介できますか」だけで話を進めず、自社が求める発注との関係を一つずつ確かめていく進め方が考えられます。

まず、どの工事の発注判断につなげたいのかを揃える

「大手企業と取引したい」という希望だけでは、紹介先を選ぶ基準が広すぎます。自社が受けたい工事と、開拓したい相手の部署・支店との関係を確認するところから始めます。

相談の中でも、どの支店の誰に接点を持てば受注につながるか、という考え方は示されていました。そこからもう一段進めて、その接点が、狙う工事の発注判断とどう結びつくのかを確認することが大切です。

先に工事の対象を揃え、その工事を判断する相手を探す順番にすれば、企業名や役職名だけで開拓先を選ぶことを避けられます。

紹介者には、経歴よりも今回の発注判断との関係を確認する

紹介者の過去の役職は、接点を持てる理由の一つです。ただ、それだけで今回の工事についての権限までは判断できません。

紹介を受ける前に、次の点を具体的に確認するとよいでしょう。

  • 紹介先は、狙う工事の発注判断に関わる部署・役職か
  • 今回の工事について、その相手自身が判断できる範囲はどこまでか
  • 別の決裁者がいる場合、その人への接点まで想定されているか

この段階でわからない点があれば、わからないまま区別しておくことも重要です。「大手企業の役職者だから決められるはず」と推測せず、面談で何を確かめる必要があるかを整理します。

最終決裁者でない相手とは、次につなぐ役割を明確にする

紹介相手が最終決裁者でなくても、それだけで接点の価値がなくなるわけではありません。判断の分かれ目は、その相手を通じて、必要な決裁者へ進めるかどうかです。

自社の説明を聞いてもらって終わるのか、それとも発注判断をする人につなぐところまで話せるのか。この違いを、面談前に紹介者と揃え、面談の場でも確認していきます。

今回の経営者の懸念に対応するなら、少なくとも「この相手と何を話し、その後は誰の判断が必要になるか」まで見通せることが、接点を選ぶ際の判断材料になります。

直接決められる相手への接点か、決められる相手につながる接点かを区別し、どちらも不明な状態で面談だけを増やさないことが要点です。

なお、決裁権のある相手に会えたとしても、受注が保証されるわけではありません。ここで確認する目的は、受注を確約してもらうことではなく、誰の判断が必要なのかを把握し、開拓の進め方を具体的にすることです。

まとめ

大手企業への開拓では、「会える相手」と「発注を決める相手」を分け、その間をどうつなぐかまで確認することが重要です。

今回の建設会社が求めていたのは、著名な企業への紹介そのものではなく、受注に向けた道筋が見える接点でした。紹介者の経歴が豊富でも、相手の肩書が高くても、それだけでは狙う工事の発注権限はわかりません。

まずは受けたい工事を明確にし、その発注を判断する部署・役職、紹介相手の判断範囲、最終決裁者へのつなぎ方を確認します。すでに接点のある取引候補についても、この順番で見直せば、次に誰と何を話すべきかを整理しやすくなります。

大手企業の誰に接点を持つべきか、整理するところから

「紹介は受けられそうだが、受注までどう進めればよいかわからない」という段階でも、開拓先と接点の整理から始められます。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を横断して整理し、実行まで支援しています。取引先開拓では、自社が狙う工事と相手企業の接点を照らし合わせ、誰に働きかけ、何を確認しながら進めるかを一緒に考えます。

「うちの場合は、どの部署や役職に接点を持つべきか」といった、方針が固まる前のご相談でも構いません。無理に支援をおすすめすることはありませんので、次の一手を整理する場としてご活用ください。

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