前提

社長一人と協力会社で工事を回す設備工事会社の、採用動画を配信し始めた段階

採用動画の配信開始から数日という段階では、反響の良し悪しを決めるより、動画で何を伝え、その先で何を確認してもらうかを整理することが大切です。

佐賀県に拠点を置く、ある設備工事会社は、法人化を経て初めての従業員採用に動き始めていました。それまでは社長一人で事業を担い、協力会社へ工事を依頼しながら、自らも現場に出て対応してきた会社です。仕事量が増え、一人では回しきれなくなってきたことが、採用に踏み出すきっかけでした。

採用施策として始めたのは、数十秒ほどの短い動画広告の配信です。求人掲載や採用用のメッセージ窓口も含めて外部へ依頼し、候補者管理や運用、レポートの提出まで説明を受けていました。

ただ、配信先が多く、社長自身もすべてを覚えているわけではありません。「どこに出るかは聞いているんですけど、数が多くて押さえきれていない」という状態でした。

これは、依頼先から説明がなかったという話ではありません。また、配信を始めたばかりなので、採用動画がうまくいかなかったという話でもありません。すでに動き始めた施策を、自社が求める採用につなげるために、情報の中身を確かめたい段階です。

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課題

数十秒の動画だけでは伝えきれない「この社長と働く理由」

課題は動画の短さそのものではなく、短い動画で関心を持った人に、会社や社長を理解するための情報が続いているかという点です。

社長が望んでいたのは、単に設備工事の仕事を探している人から応募が来ることではありませんでした。

「この仕事をやりたいというだけじゃなくて、僕と仕事をしたいと思ってもらいたいんです」

自分の人となりを知り、考え方に納得したうえで入ってほしい。その思いがある一方で、「自分をどう知ってもらえばいいのか」という迷いもありました。

数十秒の広告で、会社概要、仕事の内容、社長の考え、待遇、将来像まで詳しく伝えるのは難しいものです。だからといって、すべてを盛り込んで動画を長くすれば解決するわけでもありません。まず誰の関心を引きたいのか、その人が応募を考えるうえで何を知る必要があるのかを分けて考える必要があります。

また、「社長の人柄が伝われば長く働いてもらえる」という期待と、実際に働き続けられる条件は別です。仕事への共感があっても、給与や待遇、任される役割が曖昧なままでは、候補者も判断しにくくなります。

「一緒に働きたい」と思ってもらう情報と、「ここで働ける」と判断してもらう情報の両方をそろえることが、採用動画の情報設計です。

背景

拠点展開の理由も、社長の人柄も、掘り下げて初めて伝わる情報

経営者の中にある考えは、短い言葉にしただけでは、意図どおりに伝わらないことがあります。

この会社には、地元の拠点を残しながら、九州内の都市部へ本社機能を移し、活動範囲を広げたいという構想がありました。ただ、「本社を移転したい」という説明だけでは、地元の仕事を縮小するのか、移転先だけで仕事をするのかまでは分かりません。

詳しく聞くと、社長の考えは違いました。

「地元を見捨てるという意味での移転ではないんです」

これまで仕事を任せてくれた取引先との関係を残し、地元の事業も続ける。そのうえで、交通の便がよい場所に拠点を置き、九州全域へ動きやすくしたいという意図でした。

採用情報として重要なのは、移転という出来事だけではなく、その理由と、何を残しながら広げるのかです。候補者が会社の将来を考える材料は、こうした説明の中にあります。

仕事への姿勢も同じです。別の専門工事会社では、現場に立ち会うことで、仕上がると目に入りにくくなる部分への技術的なこだわり、現場のきれいさ、取引先に敬語で接する姿勢が、採用で伝えるべき特徴として見えてきました。それらを言葉にし、その仕事観に共感する職人へ向けて求人原稿やホームページを整えています。

ここで大切なのは、その会社の表現をまねることではありません。「人柄がよい」「技術に自信がある」で止めず、実際の仕事や取引先への接し方から、何がその会社らしさなのかを確かめることです。

解決

採りたい人と約束できる内容を定め、動画・求人原稿・採用ページをつなぐ進め方

配信先や動画の本数を増やす前に、誰に届けるのか、何を伝えるのか、どこで詳しく説明するのかを一続きで整理します。

すでに動画の配信や求人運用を依頼しているなら、最初から別の施策へ切り替える必要はありません。今ある動画と掲載内容を確認し、不足している情報を補う進め方が取れます。

まず「社長と働きたい人」の中身を言葉にする

採りたい人を明確にするときは、経営者へのヒアリングと、自社の仕事の確認を行き来します。「自分と気が合う人」だけでは、制作側も候補者も具体像をつかめないためです。

この会社のように、初めて人を迎え、今後の事業展開も考えている場合は、次の内容をつなげて整理します。

  • これから会社として、どのような仕事や地域へ広げていきたいのか
  • 日々の施工や取引先との関係で、大切にしていることは何か
  • その考えに共感してほしい相手は誰で、入社後に何を任せたいのか

判断軸は、社長が言いたいことだけでなく、採りたい人が「自分はこの会社で働きたいか」を判断できる内容になっているかです。

拠点展開であれば、「都市部へ進出する」という目標に、地元の取引を残す考えや、広域で動くための理由まで添えます。仕事へのこだわりであれば、現場や取引先への接し方で確認できる内容に落とし込みます。大きな理念の言葉を先に作るより、すでに実践していることから整理するほうが、発信と実態をそろえやすくなります。

動画は関心の入口にし、採用ページで詳しい判断材料を渡す

短い動画には、採りたい人へ最初に届けるメッセージを絞ります。そのうえで、動画だけでは説明しきれない社長の考えや会社の概要を、求人原稿や採用ホームページで確認できるようにします。

最初から大規模な採用サイトを用意することが前提ではありません。社長のプロフィールや事業の考え方を載せたページ、縦に読み進めながら会社概要を理解できるページでも、詳しく知るための受け皿になります。

確認したいのは、見た目の華やかさより、情報のつながりです。動画で関心を持った人が、会社を調べたときに同じ考え方を読み取れるか。求人原稿に書かれた仕事内容や待遇と、採用ページの説明が食い違っていないか。メッセージ窓口へ進んだ後も、同じ内容で説明できるかを見ます。

動画・求人原稿・採用ページは、それぞれ別の宣伝物ではなく、候補者が会社を理解していくための一連の情報としてそろえます。

将来の構想と、今約束できる待遇を分ける

将来像は採用で伝える大切な情報ですが、実現を目指していることと、入社時点で提供できることは区別します。

この会社の社長も、給与は少なくとも相場程度を考えていました。一方で、初めて一人を雇うため、どの程度生産性が上がるかはまだ見通せていませんでした。その状態で、将来の成長期待だけを高待遇の約束に置き換えるのは避けたいところです。

給与、手当、福利厚生、任せる仕事について、「今できること」「まだできないこと」「これから目指すこと」を整理し、動画や原稿の表現と照らし合わせます。候補者から質問を受けたときの回答まで確認すると、曖昧な部分も見つけやすくなります。

魅力を強く見せることより、発信した内容を実際の説明でも約束できることを優先します。

既存の依頼先と、配信の目的と情報の不足を確認する

外部へ動画制作や運用を依頼している場合は、すでに説明されている業務内容も含めて、改めて整理します。この会社でも、制作だけでなく候補者管理やレポート提出まで依頼していたため、「動画を作って終わり」と捉えるのは実態に合いませんでした。

依頼先とは、次の点を確認すると、媒体名をすべて覚えていなくても施策の全体像をつかみやすくなります。

  • 今の動画は、どのような人に何を伝える内容なのか
  • 動画を見た人は、どこで会社や仕事内容を詳しく確認できるのか
  • 求人原稿や採用ページには、社長の考えと実際の待遇が反映されているか
  • レポートでは、どの反響を確認し、次に何を見直すのか

配信開始直後の反響は見守りながら、こうした確認は並行して進められます。追加の動画が必要なのか、求人原稿の修正が先なのか、会社を説明するページの補充が先なのかも、不足している情報から判断できます。

まとめ

建設会社の採用動画は、配信することだけでなく、自社に合う人が会社を理解し、応募を判断できる情報につながっていることが大切です。

社長一人と協力会社で事業を続けてきた会社には、まだ言葉になっていない仕事観や、事業を広げたい理由があります。それをヒアリングや現場の確認から整理し、採りたい人へ向けた表現にすることが、発信の土台になります。

そのうえで、短い動画は関心を持ってもらう入口に、求人原稿や採用ページは詳しく判断してもらう受け皿にします。将来の構想と今約束できる待遇を分け、どこで確認しても説明がそろう状態を目指します。

配信を始めたばかりなら、成功か失敗かを急いで決める必要はありません。まず今ある動画と求人情報を並べて、「誰に、何を伝え、その人はどこで詳しく確かめられるか」を確認することが、次の一手になります。

採用動画と求人情報のつながりを整理したいときに

「動画は配信しているけれど、自社らしさまで伝わっているか分からない」という段階でも、今ある情報の整理から始められます。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。採用では、経営者の考えや仕事のこだわりを整理し、求める人材に向けた求人の打ち出し方や、動画・採用ページとのつながりを一緒に考えます。

すでに制作会社や運用会社へ依頼している場合も、その施策を前提に、何を補うとよいかを整理できます。「うちの場合は何から確認すればよいか」という段階で構いません。無理にサービスの利用を勧めることはありませんので、次の整理先としてご相談ください。

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