企業データだけでは「本当に狙うべき30社」まで絞り切れない専門工事会社の営業開拓
新規営業先のリストは、条件を入れればある程度まで抽出できます。売上規模、所在地、業種、従業員数などを指定すれば、数百社の候補を出すこと自体は難しくありません。
一方、実際の営業では、その数百社すべてに同じ優先順位でアプローチするわけにはいきません。ある専門工事会社でも、企業信用情報データベースから候補を抽出した後、ホームページを行き来しながら施工実績を確認していました。
たとえば、内装工事会社を探していても、内装一括工事を扱う会社と内装仕上げだけを担う会社が混在します。店舗工事でも、高級な個店を中心に手がける会社と、チェーン店を中心に施工する会社では、求められる施工体制や協力会社の位置づけが異なります。
営業先選定では、会社の規模や業績だけでなく、「どの物件で、どの工事を、どの立場で請けているか」まで確認する必要があります。
候補を絞る目的は、単に社数を減らすことではありません。営業会議で「なぜこの会社を狙うのか」を説明でき、担当者が次のアプローチへ迷わず進める状態をつくることです。
数百社の候補を担当者の勘だけで2〜3社に絞ることの難しさ
営業候補が多いほど、最終的な優先順位が担当者の経験や勘に寄りやすくなります。
経験豊富な担当者であれば、会社名、主要取引先、施工実績などを見ながら「この会社は対象になりそうだ」と判断できます。しかし、その判断基準が言語化されていなければ、別の担当者が同じリストを見たときに異なる企業を選ぶ可能性があります。
現場では、次のような状態が起こりがちです。
- 売上規模は大きいが、自社が入り込める工事を扱っていない
- 業績は伸びているが、希望する物件種別の施工実績がない
- 内装工事会社ではあるものの、一括工事ではなく部分工事が中心である
- 店舗工事の実績はあるが、自社が得意とする個店ではなくチェーン店が中心である
- 評価点は高いものの、何を根拠に高得点となったのか説明できない
「100社から20社を自動で出せるとよい」という発想は自然です。ただし、企業データだけで施工領域や商流まで完全に判定するのは簡単ではありません。
数値上の優良企業と、自社にとって営業すべき企業は同じではありません。
売上や利益率が高くても、自社が入れる商流でなければ優先度は下がります。反対に、企業規模が突出していなくても、自社が得意とする物件を継続的に施工し、元請けまたは一次請けとして発注機能を持っているなら、有力な候補になり得ます。
売上・利益の定量情報と案件名・工事内容の定性情報が分かれている構造
営業先を絞りにくい背景には、判断に必要な情報が一つの場所にそろっていないことがあります。
企業信用情報データベースでは、売上高、成長率、利益率、従業員数、主要取引先などを確認できます。これらは、事業の安定性や発注余力を比較するうえで有効です。人数に対して利益が大きい会社であれば、高単価の仕事を受注している可能性も考えられます。
ただし、定量情報だけでは、次の点まで判断できないことがあります。
- マンション、店舗、工場など、どの物件種別が中心か
- 大規模物件や100戸を超える集合住宅の実績があるか
- 個店とチェーン店のどちらを多く扱っているか
- 元請け、一次請け、二次請けのどこに位置しているか
- 自社が協力会社として入れる工事範囲があるか
これらは、企業ホームページの施工実績、案件名、工事概要、公開資料などを確認しなければ見えてきません。
つまり、営業先の選定には二種類の情報が必要です。
- 企業の体力や成長性を示す定量情報
- 自社との適合性を示す施工実績や取引構造の情報
企業データは「営業する余地がある会社」を探すために使い、施工実績は「自社が営業する理由」を確かめるために使います。
どちらか一方だけでは、候補の抽出はできても、営業会議で納得感のある提案まではつながりません。
必須条件で除外し、5項目で採点してから施工実績を人が確かめる選定手順
営業先選定は、最初から完璧な自動判定を目指すより、候補抽出と最終判断を分けると運用しやすくなります。
1.営業できない企業を必須条件で除外する
最初に行うのは、評価ではなく除外です。対応エリア、企業規模、工事業種など、営業対象にならない条件を先に設定します。
たとえば、次のような条件です。
- 自社の施工対応エリア外である
- 必要な工事領域を扱っていない
- 想定する売上規模から大きく外れている
- 自社が入れる取引構造ではないことが明らかである
必須条件は、なるべく企業データベース上で判定できる項目に寄せます。ここで対象外を除けば、担当者がホームページを確認する件数を減らせます。
必須条件は「良い会社を選ぶ基準」ではなく、「営業対象にならない会社を外す基準」として設計します。
2.評価項目を5つ程度に絞る
項目を増やしすぎると、入力にも説明にも時間がかかります。最初は、営業判断に直結する5項目程度に絞るのが現実的です。
一例として、次のように設計できます。
- 売上規模:継続的な発注が期待できる規模か
- 成長率:受注や事業領域が拡大しているか
- 利益率:価格だけでなく付加価値を重視する余地があるか
- 施工実績の適合度:自社が得意とする物件種別や工事内容と合うか
- 取引構造の適合度:元請け・一次請けなど、自社が入れる位置にいるか
売上や成長率はデータベースで確認し、施工実績と取引構造はホームページや公開資料で補います。情報源を項目ごとに決めておくと、担当者による調査のばらつきを抑えられます。
3.各項目を同じ基準でスコアリングする
評価方法は、3点・2点・1点でも、丸・三角・バツでも構いません。重要なのは、点数の意味をそろえることです。
たとえば施工実績なら、次のように定義できます。
- 3点:狙う物件種別と工事内容の実績が複数確認できる
- 2点:近い実績はあるが、工事範囲または物件種別が一部異なる
- 1点:関連実績を確認できない、または情報が不足している
取引構造についても、「元請けとして発注している」「一次請けとして協力会社を活用している」「自社が入る余地を確認できない」といった形で基準を定めます。
スコアは結論ではなく、候補を同じ物差しで比較するための道具です。
点数だけを見て「高得点だから間違いない」と判断すると、仕組み化がかえって思考停止を招きます。評価理由を一言で残し、後から説明できるようにしておくことが欠かせません。
4.自動化は候補を30社程度に絞るところまでにする
企業データベースと自動処理を組み合わせれば、数百社から一定条件を満たす候補を抽出できます。ただし、最終候補まで完全に自動化する必要はありません。
目安としては、機械的な抽出で判断の精度を7〜8割まで高め、残った20〜30社を人が確認します。そのうえで、営業会議に出す2〜3社を選びます。
この役割分担なら、担当者は単純な検索作業ではなく、施工実績や商流を読み解くことに時間を使えます。
自動化の役割は「正解を決めること」ではなく、「人が確認すべき範囲を狭めること」です。
5.案件名と工事内容を見て、選定理由を文章にする
最終確認では、会社概要だけでなく、案件名や施工実績の中身を見ます。
同じ店舗工事でも、高級な個店と全国チェーンでは工事の進め方が異なる可能性があります。マンションでも、戸数や新築・改修の違いによって必要な施工体制は変わります。工事名や物件種別が分かれば、自社との接点をより具体的に説明できます。
最終候補には、少なくとも次の三つを付けます。
- 選定した理由
- 確認できた代表的な施工実績
- 自社がどの工事・立場で入れると考えたか
営業会議では、「売上が伸びているから」だけで終わらせず、「店舗工事の実績が複数あり、その中でも自社が得意とする物件種別が確認できた。一次請けとして協力会社を使う余地があるため優先した」というところまで示します。
これにより、担当者が変わっても選定の考え方を引き継ぎやすくなり、アプローチ内容も組み立てやすくなります。
まとめ
建設会社の新規営業先は、企業データだけでも、担当者の経験だけでも十分には絞れません。
進め方の要点は次のとおりです。
- 対応エリアや工事領域などの必須条件で、対象外企業を先に除外する
- 売上規模、成長率、利益率、施工実績、取引構造など5項目程度で評価する
- 数百社から20〜30社への候補抽出は、できるだけ仕組み化する
- 最終候補は人が案件名、物件種別、工事内容まで確認する
- 点数だけでなく、「なぜこの会社なのか」を説明できる状態にする
最初から100点の仕組みをつくる必要はありません。まずは営業会議で使える70点程度の型をつくり、実際にアプローチした結果を見ながら評価項目や配点を修正するほうが、現場で使える選定基準に育っていきます。
良い営業リストとは、社数が多いリストではなく、選定理由と次の行動が明確なリストです。
自社に合う営業先の条件を一度整理してみませんか
「候補企業は出せるが優先順位を決められない」「売上や従業員数以外に、何を見ればよいか分からない」という段階でも、整理できることはあります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の販路拡大を、ターゲット条件の整理、企業データの活用、施工実績の確認、営業会議で使える選定基準づくりまで一貫して支援しています。現場や組織、原価、デジタル活用も含め、建設企業の持続的な成長につながる形で営業活動を整えます。
「うちの場合は、どの企業を優先すべきか」という段階からでも問題ありません。状況を伺いながら次に整理すべき点を一緒に確認します。無理に営業を進めることはありませんので、考えを整理する場としてご活用ください。