月3〜4件のリフォーム案件がありながら、職人不足で受注を増やせない専門工事会社
関東圏で新築・リフォーム工事を手がける、20名弱の専門工事会社があります。取引先からの相談は安定しており、特にリフォームの受注を増やせる余地がありました。
一方で、実際に施工する大工が足りません。会社全体では月3〜4件ほどのリフォーム案件が動き、工期は2週間程度のものから2〜3カ月かかるものまでさまざまです。案件を組み合わせれば職人の仕事をつなげられるものの、人数が足りず、受注を待ってもらう場面が出ていました。
「受注を増やしたいのに、職人がいないから待ってもらっている」という状態です。
仕事がないことではなく、施工できる人数が足りないことが成長の制約になっていました。
そこで候補に挙がったのが、社員職人の採用と、経験者への外注募集です。ただし、この二つは同じ「人を増やす手段」でも、適する状況が異なります。
すぐに施工力を増やすなら経験者の外注、経験の浅い人を育てて将来の中核にするなら社員採用が基本です。
急ぎで欲しい即戦力と、将来育てたい社員職人を同じ募集にまとめないこと
今回、最優先だったのはリフォーム工事を任せられる大工の確保でした。新築工事と違い、リフォームでは既存部分を壊し、現場ごとの状態を見ながら納める力が求められます。新築経験があっても、すぐに同じように対応できるとは限りません。
そのため、会社が本当に必要としていたのは、経験がほとんどない人ではなく、一定の経験があり、現場に入って仕事を進められる職人でした。
ところが、人手不足になると募集条件を広げたくなります。
- 経験者だけでなく未経験者も対象にする
- 外注だけでなく社員も同時に募集する
- 新築とリフォームの両方を一つの原稿で募集する
間口を広げれば応募者は増えるように見えますが、受け入れ方まで曖昧になりやすくなります。特に問題となったのは、経験の浅い外注職人を誰が教えるのかという点でした。
既存の外注職人に教育を任せる案も出ましたが、教える側には自分の施工があります。発注側が追加の負担を設計しないまま「若手を見てほしい」と頼んでも、継続的な育成にはつながりにくいものです。
経験の浅い人まで外注で受け入れると、即戦力を確保するはずの外注募集が、教育負担を増やす結果になりかねません。
一方で社員として迎えるなら、安定した雇用と育成の機会をセットで示せます。ただし、この会社では当期の社員職人の人件費を予算に織り込んでおらず、誰がリフォーム大工を育てるのかも固まっていませんでした。
社員採用は募集を始める前に、予算、教育担当、仕事量、定着までの見通しをそろえる必要があります。
そのため、まずは経験者の外注募集に絞り、社員採用は受け入れ体制を整えてから検討する順番となりました。
経験者と経験の浅い人では、会社を選ぶ理由も受け入れに必要な体制も異なること
社員採用と外注募集を使い分けるうえでは、会社側の都合だけでなく、働く側が何を判断材料にするかを整理する必要があります。
経験者が外注先を選ぶ際は、主に次の点が重要になります。
- 自分の経験に見合う条件か
- 継続して仕事を受けられるか
- 対応するエリアが明確か
- 工事の種類や規模が自分に合うか
- 現場をつないで安定して働けるか
今回の会社には、取引先から継続的に案件が入り、職人が増えれば受注をさらに広げられるという強みがありました。リフォーム案件には大小があるものの、複数の現場を組み合わせることで、仕事が途切れにくい状態をつくれる見込みもあります。
経験者の外注募集では、「案件があります」ではなく、仕事の量、工期の幅、施工内容、今後増やせる受注まで具体的に示すことが重要です。
一方、経験の浅い人は、自分がどれほど施工でき、いくら稼げるのかをまだ具体的に判断しにくい状態です。外注として働くメリットを理解しきれないまま現場に入ると、期待とのずれが起きやすくなります。
その場合は、社員として一定の安定を用意し、仕事を覚える順番や教える人を明確にしたほうが、本人にとっても会社にとっても関係を築きやすくなります。
外注は自立して施工できる人との事業上の協力関係、社員採用は育成を含めて長期的に戦力化する関係として整理すると、判断しやすくなります。
もう一つの背景は、必要な時期の違いです。この会社は受注機会を逃さないため、早い段階でリフォーム大工を必要としていました。社員を採用して一から育てる方法では、目の前の施工力不足をすぐには解消できません。
「いつまでに一人前の施工力が必要か」が、社員と外注を分ける最初の判断軸になります。
必要な時期、教育体制、仕事量、定着可能性の順に採用区分を決める進め方
社員か外注かは、最初からどちらか一方に決める必要はありません。目の前の受注に対応する施策と、将来の施工体制をつくる施策を分けて考えると整理しやすくなります。
1.いつまでに施工力が必要かを決める
数週間から数カ月以内に施工人数を増やしたい場合は、教育を前提にしない経験者の外注募集が候補になります。
半年後や来期を見据えて施工体制をつくる場合は、社員採用も選択肢に入ります。特に経験の浅い人を迎えるなら、採用から独り立ちまでの期間を見込む必要があります。
急ぎの受注対応と、中長期の組織づくりは、同じ募集で解決しようとしないことが大切です。
2.どこまで一人で任せたいかを明確にする
「大工経験者」という条件だけでは、実際に任せたい仕事とのずれが生まれます。新築とリフォームでは、求められる対応力が異なるためです。
今回のようにリフォームが優先であれば、募集時には次の点を明確にします。
- リフォーム経験が必要か
- 新築経験をどこまで評価するか
- 部分的な解体や既存部分への対応を任せるか
- 一人で現場を進められる水準が必要か
- 新築とリフォームの両方に対応してほしいか
年数だけでなく、「入った直後に何を任せられる人が必要か」まで定義することが、即戦力採用の精度を左右します。
3.教育を誰が、どの仕事の中で行うかを決める
経験の浅い人を対象にするなら、教育担当を曖昧にしないことが重要です。
既存の外注職人に育成を頼む場合は、本人の善意だけに依存せず、教える範囲や期間を決める必要があります。それが難しければ、未経験者や経験の浅い人の募集は社員採用として切り分けたほうが進めやすくなります。
今回の会社でも、新築工事では経験の浅い人を既存職人につけて育てた実績がありました。ただし、リフォームでは同じ教育方法を再現できるかがまだ明確ではありませんでした。
他部門で育成実績があっても、募集対象の工事で同じ教育体制を組めるかは別に確認する必要があります。
4.継続して渡せる仕事量を確認する
外注を募集する場合、仕事量は条件と同じくらい重要です。職人を確保しても、現場が途切れれば継続的な関係にはなりません。
確認したいのは、会社全体の受注件数だけではありません。
- 現在動いている案件数
- 受注を待ってもらっている案件の有無
- 1現場あたりのおおよその工期
- 大小の現場を組み合わせられるか
- 一人増えた場合に、どれだけ受注を増やせるか
今回の会社では、2週間程度の工事と数カ月に及ぶ工事を組み合わせ、職人が空かないように工程を組む余地がありました。募集時にも、この継続性を具体的に伝えることが重要になります。
外注募集では、現在の仕事量だけでなく、「あなたが加われば受注を増やせる」という将来の稼働見通しまで示します。
5.採用後に関係を続けられるかを判断する
外注は早期に施工力を補いやすい一方、会社の育成方針や組織づくりと必ずしも一致するとは限りません。社員は定着すれば中長期の施工体制をつくれますが、採用費、人件費、教育時間を見込む必要があります。
判断時には、次のように整理できます。
判断項目 | 外注募集が向く状態 | 社員採用が向く状態 |
|---|---|---|
必要な時期 | すぐに施工力が必要 | 半年後・来期を見据える |
求める経験 | 一人で任せられる経験者 | 未経験者・経験の浅い人も対象 |
教育体制 | 基本的に教育を必要としない | 教育担当と手順を用意できる |
仕事量 | 継続的に発注できる | 毎月の固定費を支えられる |
目的 | 受注機会への早期対応 | 将来の中核職人の育成 |
「外注か社員か」ではなく、「どの課題を、いつまでに解決したいか」から選ぶのが基本です。
今回の会社であれば、第一段階ではリフォーム経験のある外注職人に対象を絞ります。その反応を見ながら、第二段階として条件の見直しや社員職人の採用を検討します。
社員採用へ進む前には、少なくとも次の準備が必要です。
- 人件費を事業計画に組み込む
- 教育担当を決める
- 新築とリフォームのどちらから教えるか決める
- 独り立ちまでに任せる仕事を段階化する
- 入社後も安定して渡せる仕事量を確認する
即戦力の外注募集を先行しつつ、社員を育てられる状態を並行して整えることで、目の前の受注と将来の施工体制を両立しやすくなります。
まとめ
受注機会があるのに職人が足りない場合、単純に募集人数を増やすだけでは解決しません。必要なのは、すぐに現場を任せたい人と、これから育てたい人を分けることです。
経験者には外注として、仕事量、施工内容、稼働の安定性を具体的に示します。経験の浅い人には社員として、安定した働き方と教育の道筋を用意します。
即戦力は外注、育成前提なら社員という区分を土台に、必要な時期、教育体制、仕事量、定着可能性から優先順位を決めます。
目の前の受注を取りこぼさないことと、自社の職人を育てることは、どちらも重要です。ただし、同時に一つの募集で解決しようとせず、第一段階と第二段階に分けることで、現実的に進めやすくなります。
自社に合う職人確保の順番を整理したいときは
社員採用と外注募集のどちらを優先すべきかは、受注状況や教育担当の有無、来期の予算によって変わります。「うちの場合はどちらから始めるべきか」「外注を募集しても継続して仕事を渡せるか判断できない」という段階でも、整理することは可能です。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、人材、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。職人確保についても、募集を出すことだけでなく、必要な人材像、社員と外注の区分、教育体制、受注量とのバランスから一緒に整理します。
何を募集するか決めきれていない段階でも、現状を整理するところから始められます。無理に営業を進めることはありませんので、次の一手を考える際にご活用ください。