前提

既存の地場建設会社を優先しながら少人数で施工を回す地域専門工事会社の現在地

東北地方で地域の建設会社から工事を請け負う、7名ほどの専門工事会社があります。新しい社員が1名加わったばかりで、まずは今の人数で既存工事を安定して回し、新入社員が仕事に慣れた段階で次の採用を考える方針です。

取引は地場建設会社が中心です。材料費や人件費、採用費などが上がる一方、請負価格への転嫁は簡単ではありません。今後も一社だけに仕事を依存するつもりはないものの、積極的な営業には迷いがあります。

「今ある建設会社さんを優先しないといけないので、新規、新規と動いていいのか悩みます」

地域の建設業では、発注者、元請、協力会社、同業者が別々に存在しているわけではありません。応援を頼んだり、頼まれたりする関係もあり、別の現場では取引先同士になることもあります。付き合いのある会社を飛び越えて営業すれば、既存の商流に角が立つ可能性もあります。

この会社に必要なのは、既存取引か新規開拓かの二者択一ではなく、既存の約束を守れる範囲で取引先の偏りを少しずつ減らす営業設計です。

課題

新規案件を取れるかではなく既存商流と施工体制を守ったまま受けられるかという判断

新規販路を広げるとき、候補先の企業規模や案件量だけを見ても、自社に合う取引先かどうかは判断できません。仮に大手ゼネコンとの接点をつくれても、既存工事を優先できなくなったり、求められる書類対応に時間を取られたりすれば、会社全体では負担が増えることがあります。

少人数の会社ほど、新規案件の影響は営業部門だけにとどまりません。社長や現場責任者が見積もり、積算、打ち合わせ、施工管理まで担っている場合、一件の新規取引によって会社全体の動きが変わります。

そのため、開拓先は少なくとも次の4点で見る必要があります。

  • 既存案件を優先しても対応できる施工余力があるか
  • 人件費を含めても必要な利益を残せるか
  • 安全・品質・請求などの書類対応を継続できるか
  • 既存取引先や同業者の商流と競合しないか

特に利益率は、工種だけでは決まりません。材料費が大きく変わらなくても、現場ごとの人員配置や賃金によって採算は変わります。売上が増える案件でも、人手を取られて既存案件に影響が出れば、期待した利益が残らない可能性があります。

販路開拓の課題は営業先の不足ではなく、施工余力・利益率・書類負荷・商流の競合を事前に見極める基準が定まっていないことにあります。

背景

応援の貸し借りと長年の付き合いが営業先の境界を曖昧にする地域建設業の商流

地域の建設業では、会社同士の関係が長年の協力によって成り立っています。人手が足りないときには応援を頼み、別の機会には自社が協力する。こうした関係は、契約書や取引額だけでは測れない事業基盤です。

一方、新規営業では、その関係性が見えにくくなります。声をかけたい会社が既存取引先と深くつながっていたり、同業者がすでに入っていたりすると、単純な営業活動が既存商流への参入と受け取られる場合があります。地域内に知り合いが多いほど、「知らずに入った」では済ませにくくなります。

だからといって、既存取引先から流れてくる仕事だけを待つと、特定企業への依存は残ります。既存取引先の受注量や発注方針が変わったとき、自社だけでは仕事量を調整しにくい状態です。

また、取引先の規模が大きければ、必ずしも自社にとって仕事がしやすいとは限りません。大手との取引では書類や運用ルールが厳しくなることがあります。一方、地場建設会社では書類負担を抑えながら、現場に合わせた相談をしやすい場合もあります。

地域建設会社の営業では、企業規模の大きさよりも、既存の協力関係を保ちながら自社の体制で継続対応できる相手かどうかが重要です。

解決

4つの判断軸で候補先を絞り紹介と小さな実績から取引を広げる進め方

最初に行いたいのは、営業件数を増やすことではなく、既存取引を基準に「受けてもよい仕事」を定めることです。現在の売上構成と案件別の採算を確認し、どの取引が利益と稼働の両面で会社を支えているかを整理します。

そのうえで、新規候補先を次の順番で確認します。

1. 既存工事を優先した後の施工余力を見る

新規案件を最大稼働時の人数で判断すると、既存取引先から急な依頼が入った際に対応できません。まず既存工事に必要な人数と期間を押さえ、その残りを新規案件に充てられる余力として考えます。

新入社員が加わったばかりなら、すぐに受注量を増やすのではなく、現場への定着と対応できる工事範囲を見ながら進める方が現実的です。

2. 売上ではなく必要工数を含めた利益率を見る

見積金額から材料費を引くだけではなく、現場に必要な人数と日数、移動、打ち合わせ、書類対応まで含めて比較します。過去の工事についても、利益率が高かった案件だけでなく、なぜ利益が残ったのかを分けて見ることが大切です。

3. 書類対応を継続できるかを見る

大手ゼネコンや大手発注者との取引では、現場対応以外の管理負荷が増える可能性があります。必要書類の種類、提出頻度、使用する仕組みを事前に確認し、誰が対応するのかまで決めておきます。

書類負荷が大きいから候補から外すのではありません。利益や継続性に見合うかを判断します。受注金額だけでなく、施工外の対応時間まで含めて採算を見ることが必要です。

4. 既存商流との競合有無を見る

候補先を一覧にし、既存取引先との関係、同業者の参入状況、紹介を依頼できる相手の有無を確認します。既存の元請を飛び越える形になる場合は、無理に直接営業を進めない方がよいこともあります。

接点をつくる場合も、いきなり大きな案件を取りに行く必要はありません。既存のつながりから紹介してもらう、応援や協力の相談から始める、対応可能な小規模案件で実績をつくるといった段階があります。その実績をもとに、次の取引先へ進む方法もあります。

候補先ごとに4つの判断軸を並べると、優先順位をつけやすくなります。

判断軸

確認する内容

施工余力

既存工事を優先した後でも対応できるか

利益率

人件費や対応工数を含めても利益が残るか

書類負荷

現在の人員で継続的に対応できるか

商流との競合

既存取引先や同業者との関係を損なわないか

新規販路は一気に増やすものではなく、候補先を絞り、紹介や協力関係から入り、小さな実績を積みながら広げる方が地域の商流になじみます。

まとめ

既存取引先を優先したいという考えは、新規開拓に消極的なのではありません。長年積み重ねてきた信用と、現在の施工体制を守るための自然な判断です。

一方で、一社への依存を減らしたいのであれば、仕事が流れてくるのを待つだけでなく、自社に合う取引先を選べる状態をつくっておく必要があります。

整理すべきなのは、次の4点です。

  • 既存工事を優先した後の施工余力
  • 人件費や対応工数を含めた利益率
  • 取引開始後に発生する書類対応の負荷
  • 既存取引先や同業者の商流との競合有無

守るべき既存関係を明確にしたうえで、競合しにくく、自社の施工体制に合う相手から段階的に実績をつくることが、無理のない販路拡大につながります。

自社に合う販路と開拓の順番を整理したい方へ

「既存取引先との関係をどこまで考慮すべきか」「どの会社から声をかければよいかわからない」という段階では、いきなり営業活動を始める必要はありません。まず売上構成、施工余力、案件別の採算、地域内の商流を並べると、自社に合う開拓先と進め方が見えやすくなります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の販路拡大を、現場体制や原価、組織の状況まで横断して整理し、候補先の検討から接点づくり、その後の実行まで支援しています。「うちの場合はどう考えるべきか」という整理の段階でも構いません。無理に営業を進めることはありませんので、今後の選択肢を考える場として気軽にご活用ください。

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