長年の社員が定着する一方、資材を積んで運ぶ仕事の担い手が気になる会社
社員が辞めないことと、次の担い手が育っていることは、分けて考えたい問題です。 鹿児島県で建設資材を扱う、ある中小企業でも、この二つが重なっていました。
「十年以上、人はほとんど変わっていないんです」
長く働く社員が多い会社です。一方、新しく入る人は少なく、同じ顔ぶれのまま年齢が上がっていました。
仕事量には波があります。人手が足りる時期もあれば、忙しさが集中する時期もあります。「今、増やしても、来年仕事が少なかったら」という迷いもありました。単純に人数を増やせばよいわけではありません。
それでも、先々を考えると気になる仕事があります。資材を積み、現場へ運ぶ業務です。
「営業なら続けられるかもしれない。でも、物を積んで運ぶのは、体力的に難しい」
これは、一定の年齢になれば働けないという話ではありません。長く現場を見てきたからこそ、今の仕事を同じ負担のまま続けられるのかが気になっています。
若手を迎えたい気持ちと、付ききりで教える余力の間にある迷い
採用対象を決めにくくしているのは、年齢の好みではなく、独り立ちまで既存社員の手をどこまで使えるかという問題です。
経営者が経験者採用を考える理由は、はっきりしていました。
「育成には時間がかかる。一年、二年でできるようになるのか。ずっと付ききりになるでしょう」
教える社員には、自分の営業や運搬の仕事があります。新人が入っても、その指導で既存社員が動けなくなれば、すぐに会社全体の余力が増えるわけではありません。
そこで候補に挙がったのが、中堅の経験者です。同業の経験があれば、仕事への理解がある。運送の経験があれば、運転や運搬を任せられる可能性がある。そうした考えでした。
ただし、経験者なら誰でも同じように任せられるわけではありません。また、若手なら長く働いてくれるとも限りません。
「今すぐ任せたい仕事」と「時間をかけて引き継ぎたい仕事」が一緒になっていると、経験者か若手かの二択から抜け出しにくくなります。 まずは、その二つを分けるところから考えたい状況です。
運転免許の行き違いと経験者の採用競争が、採用の判断を難しくする事情
この会社が気にしていたのは、教える時間だけではありません。任せたい車両を運転できるか、必要な人に実際に来てもらえるかも、採用を左右していました。
過去には、若い社員が乗るつもりだった車両について、購入時の確認で免許が対応していないと分かった経験がありました。
「誰が乗るんですかと聞かれて、この社員だと伝えたら、今の免許では乗れないと言われたんです」
その後、免許取得の負担が生じました。この経験が、「採用してから育てる」ことへの慎重さにつながっています。年齢だけを見ても、任せたい車両を運転できるかは分かりません。免許を持っているかだけでなく、その内容と使用車両が合っているかの確認が必要です。
一方、経験者採用にも別の難しさがあります。これまでは知り合いへの声かけが中心でした。ただ、業界を知り、すぐに動ける人は、ほかの会社も求めています。給与や休日、生活との両立も比較されます。
経験者採用は教育の負担を抑えられる可能性がありますが、採用しやすいとは限りません。若手育成は将来の選択肢になりますが、教える人と時間の確保が前提です。
長年社員が定着してきた実績は、大切な土台です。ただ、その実績だけで、これから入る人の定着まで見通せるわけではありません。採用時には、本人が仕事内容をどこまで理解しているか、転職で何を求めているかも確かめたいところです。
当面の運搬を補う要件と、将来の仕事を引き継ぐ育成条件の切り分け
経験者か若手かを先に決めるより、任せたい業務、必要な免許・資格、教育に割ける余力の順に整理すると、採用要件を絞りやすくなります。
当面補いたい仕事から、必要な経験を絞る
この会社であれば、まず確かめたいのは、資材を積んで運ぶ仕事をどこまで補いたいかです。業界全体の経験が必要なのか。それとも、運転・運搬の経験があれば、資材の扱いを教えることで任せられるのか。ここで採用対象が変わります。
経営者からも、「運送で働いていた人でもいい」という考えが出ていました。
同業経験者に限らず、任せたい業務に必要な経験まで絞れば、候補の見方を広げられます。ただし、運転できることと、資材の積み込みや運搬まで任せられることは、分けて確認したい点です。
整理する内容は、次の三つです。
- 入社時点で任せたい仕事は何か
- その仕事に必要な経験と、運転免許・資格は何か
- 入社後に教える必要があるのは、どの部分か
「即戦力が欲しい」を、具体的に何ができる人なのかへ置き換えることが、採用対象を決める第一歩です。
若手育成は、教える側の仕事も含めて判断する
若手や未経験者を採る場合は、新人の成長だけでなく、教える社員の負担まで見ておきたいところです。
誰が教えるのか。その間、その社員の営業や運搬をどこまで減らせるのか。どの業務を任せられるようになれば、付ききりの指導を減らせるのか。そこまで整理すると、受け入れられる範囲が見えてきます。
相談にあった「一年、二年でできるのか」という言葉は、標準的な育成期間を示すものではありません。自社の仕事を任せるまでの見通しが立っていない、という問いです。
すべての業務を一括して「独り立ち」と捉えるより、運転・運搬と営業など、任せたい業務ごとに考えるほうが整理しやすくなります。免許・資格の取得が必要なら、その時間と負担も含めて判断します。
若手を採る条件は、「若い人が来ること」だけではなく、「教える人が無理なく教えられること」です。
経験者の補充と、将来の育成を同じ採用で解決しようとしない
当面の運搬を補うことが優先なら、必要な運転経験や免許を持つ人を中心に考える方法があります。一方、長年の社員が担ってきた仕事を将来引き継ぐには、育成に時間を使う視点も残しておきたいところです。
両方を同時に進める必要はありません。まずは、今回の採用でどちらを優先するかを決めます。そのうえで、経験者に求める給与・休日の条件に応えられるか、未経験者を教える余力があるかを比べます。
年齢は、将来の体制を考える材料の一つです。ただ、即戦力性や定着を決める根拠にはしにくいものです。実際の経験、免許・資格、仕事内容への理解を確認するほうが、採用後の行き違いを減らしやすくなります。
まとめ
社員の高齢化への対応は、若手を増やすことだけではなく、今の仕事を誰に、どの条件で引き継ぐかを決めることから始まります。
資材を積んで運ぶ仕事を当面補いたいのか。長年の社員が担う仕事を、時間をかけて引き継ぎたいのか。この違いで、必要な経験も教育の組み方も変わります。
経験者採用には、採用競争や待遇の比較があります。若手育成には、指導する社員の時間と、免許・資格取得の負担があります。どちらにも良さと条件があります。
まずは一つ、採用で補いたい業務を決める。その業務に必要な経験・資格と、自社で教えられる範囲を並べる。そこまで整理できると、「何歳の人が欲しいか」よりも具体的な採用方針が見えてきます。
経験者を探すか、若手を育てるかを整理したいときに
採用対象が決まっていない段階でも、任せたい仕事と教育の余力から整理できます。 「運搬を任せられる人が欲しい」「若手も迎えたいが、教える社員の手が止まるのが気になる」。そんな状態からで大丈夫です。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。採用についても、必要な経験や免許・資格、受け入れ側の負担を踏まえ、自社に合う要件を一緒に考えます。
「うちの場合は何から整理すればよいか」という段階でもご相談いただけます。無理にサービスをおすすめすることはありませんので、次の採用方針を考える場として、気軽にお声がけください。