前提

社長に営業・採用・業務改善が集中する中小専門工事会社の現在地

中小の専門工事会社では、複数の経営課題が同時に表面化します。

取引先を増やしたい。採用も進めたい。入社後の定着や育成も気になる。社長や事務担当者に集中している業務も整理したい。どれも後回しにしづらいテーマです。

一方で、実際に動かせる人数と時間には限りがあります。社長自身が営業、現場、採用、事務の判断まで担っている会社も少なくありません。

「課題を洗い出せば、きりがないんですよね」

この感覚は自然です。大切なのは、課題の数を減らすことではありません。3年後・5年後に目指す会社像と現在地の差を見ながら、今の経営を最も詰まらせている箇所を見つけることです。

課題

営業・採用・業務改善を個別に考えるほど着手順が決めにくくなる構造

営業、採用、定着、業務改善は、それぞれ独立した課題ではありません。

たとえば、新しい取引先を開拓して受注を増やしても、工事を担う社員や協力会社が足りなければ、案件を受けきれません。反対に、先に人を採用しても、安定して仕事を確保できなければ固定費が重くなります。

「建設業は、仕事がたくさん来ても捌けないと意味がない」

この一言に、優先順位を決めにくい理由が表れています。

売上を増やすには取引先が必要です。しかし、その仕事を施工するには社員か協力会社が必要です。さらに受注や人員が増えれば、見積もり、日程調整、採用対応、請求などの業務も増えます。結果として、社長の負荷が一段と高くなることもあります。

そのため、採用が気になるから採用媒体を選ぶ、業務が忙しいから新しいシステムを入れる、といった入り方だけでは順番を決めきれません。

個別施策の良し悪しを考える前に、「売上機会」「施工能力」「人員」「社長の負荷」がどうつながっているかを見る必要があります。

背景

目の前の困りごとと3年後・5年後の会社像がつながっていない状態

優先順位が曖昧になる背景には、目の前の課題から検討を始めてしまうことがあります。

採用の相談であれば、求人票や採用媒体の話に入りやすくなります。取引先開拓であれば、営業先のリストやアポイント獲得の話になりがちです。業務改善であれば、すぐにSaaSやAIの導入を考えたくなります。

しかし、本来はその前に確認したいことがあります。

「会社をつくった理由は何だったのか」

「3年後、5年後にどのような会社になっていたいのか」

登り方は一つではありません。大手企業との取引を一本ずつ開拓する道もあれば、中小企業との取引を広く増やす道もあります。社員を増やす方法もあれば、協力会社を増やして施工能力を確保する方法もあります。

目指す姿によって、選ぶべき道は変わります。

実際、取引先開拓を進めていた会社でも、営業を続けるうちに「この案件を受けるには採用が必要だ」「対応できる工事領域を広げるには協力会社の開拓が先だ」と見えてくることがあります。

業務改善も同様です。システム開発が必要な場合もありますが、既存のクラウドサービスで済む場合もあります。業務を棚卸しすると、社内で処理せず、リモートワーカーなどへ切り出したほうが早い仕事もあります。

最初に見えている課題が、そのまま最優先課題とは限りません。目標達成を妨げている根詰まりを探す視点が必要です。

解決

目指す会社像と四つの制約から実行テーマを一つに絞る進め方

着手順は、3年後・5年後に目指す姿から逆算すると整理しやすくなります。

まず、売上だけでなく、どのような取引先と付き合い、どのような体制で施工し、社長が何に時間を使う会社にしたいのかを言葉にします。そのうえで、現在地との差を確認します。

整理するときは、次の四つが判断軸になります。

  • 売上機会:目指す売上に対して、案件数や取引先が足りているか
  • 施工能力:受注した仕事を社員や協力会社で捌けるか
  • 人員:採用、育成、定着のどこに詰まりがあるか
  • 経営者の負荷:社長に集中している業務が、次の成長を止めていないか

たとえば、施工余力があるのに案件が少ないなら、取引先開拓が先になりやすいでしょう。ただし、営業先は一律ではありません。大手を一本ずつ狙うのか、中小企業へ広く接点をつくるのかは、自社の施工領域や目指す取引構造で変わります。

案件はあるのに断ることが増えているなら、社員採用か協力会社開拓が候補になります。長期的に技術を社内へ蓄積したいなら採用と育成が重要です。一方、受注変動に対応したい場合は、協力会社の開拓が先になることもあります。

社長の時間が事務作業に取られているなら、業務改善を検討します。ただし、最初からシステム導入を決める必要はありません。

進め方は、次の順番が現実的です。

  1. 社長が使っている時間と社内業務を棚卸しする
  2. どこがボトルネックになっているかを確認する
  3. 業務を社内に残すか、外部へ任せるかを決める
  4. 必要に応じて既存サービス、AI、システム開発を選ぶ

公共工事の入札情報を毎月約300件確認していた会社では、社長の判断基準を整理し、自動判定できる形にすることで、確認対象を約30件まで絞った例もありました。重要なのはシステムそのものではありません。社長の判断を棚卸しし、どの業務を減らせば経営に使える時間が戻るかを先に決めたことです。

実行テーマを決めた後も、計画を固定しすぎないことが大切です。営業を進めた結果、施工能力の不足が先に見えることもあります。採用を始めたものの、受注構造の見直しが必要だと気づくこともあります。

定例の場で「そろそろテーマを変えましょうか」と確認し、現場や営業で得た情報をもとに計画を更新します。優先順位は一度決めて終わりではなく、実行によって得た一次情報を使って見直すものです。

まとめ

営業、採用、定着、業務改善が同時に気になっているとき、すべてを並行して進める必要はありません。

まずは3年後・5年後に目指す会社像を置きます。次に、現在地との差を「売上機会」「施工能力」「人員」「経営者の負荷」の四つから確認します。その中で、成長を最も詰まらせている箇所を実行テーマに選びます。

取引先開拓を先にするのか。社員や協力会社を増やすのか。業務を見える化し、外部へ任せるのか。答えは会社ごとに異なります。

何をやるかより先に、目指す姿と制約条件をつなげて着手順を決めることが、課題が山積みな状態を動かす第一歩です。

自社の着手順を一緒に整理したいときは

「うちの場合は営業と採用のどちらが先なのか」「業務改善から手をつけるべきか」と迷う段階では、個別施策を選ぶ前の整理が役立ちます。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。3年後・5年後の会社像がまだ明確でない場合や、何から整理すべきかわからない段階でも構いません。

建設業界の経営者の懐刀として、ものづくりに集中できる経営体制を一緒に考えます。無理にサービスを勧めることはありませんので、自社の現在地を整理する場としてご活用ください。

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