前提

全国展開を目指す一方で、施工はまだ一件ずつ丁寧に進めている段階

全国から問い合わせが入り始めている、3Dプリンター住宅を手がける会社があります。将来は年間数百棟規模を見据えていますが、販売開始からまだ日が浅く、実際の販売は10棟前後。一般消費者向けは価格面の調整が続いており、足元では法人向け案件が中心です。

施工の内定に近い話が月10件未満あっても、すでに施工先が決まっている案件があります。新たに工務店を探す必要があるのは、そのうち数件です。

「将来は各地で工務店が必要になります。ただ、今は一件ずつ進めている段階です」

生産面でも、自社工場に設備を抱えているわけではありません。提携工場に十台弱の製造設備があり、その能力に合わせて供給しています。設備は高額で、海外からの調達には数カ月かかります。導入先にも、採算が取れるだけの生産量が必要です。

さらに、施工技術を理解している人材は限られています。一つの案件に人が入ると、複数現場を一気に動かすのは難しくなります。

目標は大きくても、現在の施工件数、生産能力、技術者数を見ると、まだ固定的な施工体制を抱える前の段階です。

課題

将来の施工不足を見越した内製化が、足元では重い固定費になりやすい状況

社内では、施工体制をどこまで自社で持つかについて意見が分かれていました。

「今から自社で全部やっていく」という考え方があります。一方で、「外部の力を借りて基盤をつくり、自力がついてから工務店を取り込めばよい」という考え方もあります。

内製化には、品質や工程を自社で統制しやすい利点があります。案件が安定していれば、施工ノウハウを社内に蓄積しやすく、意思決定も速くなります。

ただし、施工件数が数件単位で、発生地域も全国に散らばる段階では、稼働率を安定させにくいのが実情です。施工人員を採用しても、近隣に案件がなければ移動負担が増えます。特定地域に施工会社を抱えても、別の地域で案件が出れば、結局は新しい協力会社を探さなければなりません。

「提携済みの会社から探すので、どうしても現場の近くにいないことがあります」

現場が決まってから探す場合も、候補選定、施工方法の説明、秘密保持の手続き、条件調整が必要です。すぐに依頼できるとは限りません。

内製か提携かは、将来の理想像だけで決めるのではなく、現時点で施工人員を継続稼働させられるかで判断する必要があります。

背景

施工需要だけでなく、生産能力と地域分散も件数の伸びを左右する構造

施工体制だけを先に広げても、案件を安定供給できるとは限りません。この会社では、需要、生産、施工の三つが連動しています。

問い合わせは増えています。とくに関東圏を中心に反応があり、台風への備えからコンクリート住宅への関心が高い地域でも需要が見込まれています。一方、平屋を基本とするため、豪雪地では補強によってコストが上がりやすく、同じ地域内でも都市部と山間部で施工条件が変わります。

施工会社も、建築一式の許可があればどこでもよいわけではありません。届いた部材を組み立てて建物を完成させられること。基礎から内装まで対応できること。型枠やコンクリート住宅の経験があり、独自の施工方法を理解しやすいこと。こうした条件が必要です。

「工務店ならどこでもよいわけではありません。施工方法に近い経験を持つ会社にお願いしたいんです」

提携先を増やすほど安心に見えますが、案件が少ないまま全国で大量に提携しても、関係を維持しにくくなります。説明や面談、契約手続きにも時間がかかります。実際の発注が長くなければ、協力会社側の優先順位も上がりにくいでしょう。

加えて、生産設備の増強にも時間がかかります。施工件数だけを見て体制を決めると、工場側の供給能力が追いつかず、人員や協力会社を待たせる可能性があります。

成長初期の施工体制は、受注見込みだけでなく、生産能力、技術者数、案件地域、協力会社に継続発注できる量を合わせて考えることが大切です。

解決

スポット連携から継続提携、内製化へ進む三段階の体制設計

現在のように施工件数と地域を読み切れない段階では、最初から全国一律の体制をつくるより、案件量に合わせて段階的に切り替えるほうが進めやすくなります。

第一段階は、案件が発生した地域で一社ずつ探すスポット連携です。

この段階では、施工会社の数を追うよりも、案件ごとの適合性を優先します。候補を見る際は、次の条件を揃えておくと判断しやすくなります。

  • 対象工法に近い施工実績があるか
  • 基礎、躯体、内装までどこを任せられるか
  • 独自の部材や施工手順を理解できるか
  • 現場までの移動負担が大きすぎないか
  • 品質基準や秘密保持の条件を共有できるか
  • 目指す価格帯や事業の考え方に共感できるか

相談企業も「当面は一件ずつ、スポットでお願いする形になる」と整理していました。案件が少ないうちは、必要な地域に必要な会社だけを確保する形が、固定費と立ち上がり速度のバランスを取りやすいでしょう。

第二段階は、同じ地域で案件が繰り返し発生し始めたら、スポット先を継続提携先へ変えることです。

毎回ゼロから工務店を探すのではなく、一度施工した会社に次の案件も任せます。施工後には、品質、工程、原価、現場で生じた確認事項を振り返ります。継続を判断できる材料を残しておけば、提携先を無理なく絞れます。

全国を一度に埋める必要はありません。問い合わせと成約が多い地域から始め、施工条件が厳しい豪雪地などは個別判断にします。都道府県単位ではなく、実際に案件が集中する商圏単位で見ることも重要です。

第三段階は、一定地域で施工量が安定してから内製化を検討することです。

切り替え時期は、「将来増えそう」という期待だけでは決めにくいものです。少なくとも、次の状態が続いているかを確認します。

  • 一定地域で継続的に案件が発生している
  • 生産設備から必要な部材を安定供給できる
  • 自社の技術者が複数現場を支援できる
  • 協力会社への発注額と内製時の固定費を比較できる
  • 内製によって改善したい品質、工期、原価が明確になっている

すべてを一度に内製化する必要もありません。品質の要となる工程は自社で担い、地域ごとの基礎や内装は協力会社に任せる形も考えられます。

内製化は提携をやめる判断ではなく、案件量が安定した部分から自社の管理範囲を広げる判断です。

まとめ

施工体制を内製するか、外部と提携するか。成長初期には迷いやすいテーマです。

今回のように、将来は全国で大きな施工量を目指していても、現在は販売が10棟前後で、新たな施工会社を必要とする案件が数件という場合があります。生産設備の増強にも時間がかかり、技術者も限られています。

この段階で全国の施工体制を固定化すると、案件量とのずれが生じやすくなります。一方、何の準備もせず、案件が決まるたびに探し始めると、施工開始までに時間がかかります。

初期は案件ごとのスポット連携、地域の施工量が増えたら継続提携、安定稼働が見えた部分から内製化する。この順番なら、将来に備えながら足元の負担も抑えやすくなります。

大切なのは、内製と提携のどちらが正しいかを決めることではありません。需要、生産、施工の現在地を定期的に見直し、切り替え条件を先に決めておくことです。

自社に合う施工体制の順番を整理したいときは

「うちの件数なら、まだスポット連携でよいのか」「どの地域から提携先を増やすべきか」「内製化へ切り替える基準が見えない」といった段階でも、整理できることがあります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行を支援しています。施工件数や地域分布、生産能力を確認しながら、協力会社の開拓や施工体制づくりを一緒に考えます。

まだ方針が固まっていなくても問題ありません。無理にサービスを勧めることはありませんので、次の整理先として気軽にお声がけください。

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