前提

創業20年を超えながら、現在は社長を含む2名で屋内の電気通信工事を担う会社の現在地

ある山陰地方の電気通信工事会社は、創業から20年以上にわたり、地域の事業所や店舗を中心に工事を手がけてきました。現在の主力は、屋内の通信設備工事や防犯カメラの設置などです。

以前は10名ほどの体制でしたが、現在は社長を含む2名体制です。社長自身も日々現場に出ており、既存取引先から依頼された工事を着実にこなしています。

取引先は長く付き合ってきた会社が中心で、大きな入れ替わりはありません。一方で、新規開拓については「現場に出ているので、そこまで動けていません」という状況でした。

既存取引が続いていても、社長が現場を担う少人数体制では、新規営業のための時間を自然に確保することは難しいものです。だからこそ、広く営業するのではなく、候補を絞って動く設計が必要になります。

課題

人脈と紹介だけでは、仕事量や条件を見ながら取引先を選べない状態

この会社の課題は、単に新規営業をしていないことではありません。より大きいのは、受注先を選ぶための候補が少なく、依頼された仕事を中心に動かざるを得ないことです。

既存の人脈や過去からのつながりは、少人数の会社にとって大切な営業資産です。ただし、紹介や声掛けを待つ形だけでは、案件の時期や量を自社で調整しにくくなります。仕事が少ない月には案件を追いかける必要があり、反対に依頼が重なれば、現場対応が優先されます。

また、発注企業によっては、協力会社に一定の人員規模を求めます。現在の施工力では十分に対応できる工事でも、体制図や在籍人数を見た段階で対象外になることがあります。

だからといって、知名度の高い発注企業へ無差別に営業すればよいわけではありません。求められる人員数や管理体制が自社と合わなければ、接点を持てても受注にはつながりません。

必要なのは取引先の数をむやみに増やすことではなく、現在の人数と施工領域で受けられ、継続的に地域の案件を相談してもらえる取引先を増やすことです。

背景

長年の取引が安定している一方、発注企業を条件から探す機会がなかったこと

これまで新規開拓が進まなかった背景には、既存取引先との関係が長く続いてきたことがあります。紹介や過去のつながりから仕事が生まれていたため、発注企業を比較し、自社から狙いを定めて開拓する必要性が表面化しにくかったのです。

一方、現在の仕事には、首都圏などに本社を置く企業から、山陰地方の工事が流れてくるケースもありました。この取引形態であれば、営業先を地元企業だけに限定する必要はありません。

実際に会社が希望していたのも、首都圏や関西圏などの主要都市に本社があり、地方で発生した工事を地域の施工会社へ依頼する企業とのつながりでした。ただし、本社が大都市にあるだけでは、その地域に継続して案件があるかは判断できません。

確認したいのは、たとえば次のような点です。

  • 自社の対応地域に支店や営業所があるか
  • 地方の事業所、店舗、集合住宅などを対象とした工事を扱っているか
  • 屋内の通信設備や防犯カメラなど、自社の施工領域と重なるか
  • 1件限りではなく、保守や入れ替えを含む継続案件が見込めるか
  • 協力会社に何名程度の体制を求めているか

「有名な会社だから」「知り合いがいるから」ではなく、拠点配置、案件の流れ、工事分野、人員要件を見て候補を選ぶことが、少人数企業の営業効率を左右します。

解決

工事分野と地域を先に決め、企業情報と現場条件の二段階で候補を絞る進め方

社長が現場に出ている会社では、営業量を増やすより、調べる順番を決めることが重要です。次の流れで整理すると、限られた時間でも動きやすくなります。

1.狙う工事と地域を一文で決める

最初に、「誰から仕事を受けたいか」ではなく、「どの工事を、どの地域で受けたいか」を明確にします。

この会社であれば、方向性は「山陰地方の事業所や店舗を対象とした、屋内の電気通信設備工事」のように整理できます。防犯カメラ、LAN、通信機器の設置や入れ替えなど、現在の2名体制で対応しやすい内容まで絞ると、営業先を判断しやすくなります。

営業先を探す前に、施工内容、対応地域、現在対応できる工事規模を決めることが出発点です。

2.発注企業になり得る会社を一覧化する

次に、企業データベースや公開情報を使い、条件に合いそうな会社をリスト化します。候補は地元企業だけでなく、首都圏や関西圏に本社を置き、対象地域に支店・営業所や取引網を持つ会社まで広げます。

一覧には、最低限、次の情報をそろえます。

  • 本社所在地と支店・営業所の配置
  • 主な事業内容と工事分野
  • 対応エリア
  • 売上高と従業員規模
  • 主な販売先や取引先
  • 地方の協力会社を必要とする可能性
  • 既存の知人や取引先から接点をつくれるか

売上高や従業員数だけで受注可能性が決まるわけではありません。ただし、会社の規模と拠点配置を合わせて見ると、扱っている案件量や地域展開を推測する材料になります。

3.机上で分かる条件と、接点を持たなければ分からない条件を分ける

候補企業の情報を集めても、利益や現場の進めやすさまでは公開情報だけで判断できません。ここは二段階で確認します。

まず机上では、施工領域、地域、拠点、会社規模、取引構造から候補を絞ります。その後、紹介や直接の接点を通じて、次の条件を確認します。

  • どの地域で、どのような工事が発生しているか
  • 年間または月間で継続的な依頼があるか
  • 協力会社に求める最低人員は何名か
  • 現在の2名体制でも受けられる案件があるか
  • 単価、移動距離、作業時間などを踏まえて利益を確保できるか
  • 現場管理や報告、入退場などの運用条件が自社に合うか

知名度が高い企業でも、自社に合うとは限りません。反対に、中堅規模でも、地域の施工会社を探しており、継続的に適正な案件を依頼してくれる会社はあります。

企業情報は候補を絞るために使い、利益や現場条件は接点を持った後に確認する。この二段階に分けると、情報不足のまま営業先を決めずに済みます。

4.優先順位を付け、接点づくりを一社ずつ進める

候補企業は、すべて同時に追う必要はありません。次の三つの軸で優先順位を付けます。

  1. 案件適合度:自社が得意とする工事と発注内容が合うか
  2. 地域適合度:自社の対応地域に案件や拠点があるか
  3. 体制適合度:現在の人員でも取引を始められるか

そのうえで、利益や現場条件、案件の継続性を確認したい企業を上位に置きます。既存取引先や知人から紹介してもらえる会社があれば、そこから接点をつくる方法が効率的です。紹介が難しい場合は、対象地域の支店や協力会社窓口へ、自社の施工領域、対応地域、現在の体制を簡潔に伝えます。

最初の接点で大きな案件を求める必要はありません。現在の体制で対応できる工事から始め、発注方法や現場条件を確認できれば、その会社と継続的に付き合えるかを判断できます。

少人数企業の新規営業は、数多く電話する活動ではありません。条件の合う企業をリスト化し、優先順位の高い会社から、紹介または地域拠点への接触を進める活動です。

まとめ

社長が現場に出ている会社では、新規営業のためにまとまった時間を確保するのは簡単ではありません。だからこそ、営業先を広く探すのではなく、次の順番で絞ることが大切です。

  • 狙う工事分野と対応地域を決める
  • 発注企業の本社だけでなく、支店や営業所の配置を見る
  • 案件の継続性と自社に求められる人員規模を確認する
  • 利益、移動、作業時間、現場管理などの条件を見極める
  • 候補を優先順位付けし、紹介や地域拠点から接点をつくる

取引先開拓の第一歩は営業件数を増やすことではなく、自社に合う発注企業がどこにいるのかを見える状態にすることです。候補が見えれば、現場の合間に使える限られた時間も、優先度の高い相手に集中できます。

自社に合う取引先候補から整理したい方へ

「どの発注企業を狙えばよいか分からない」「地元以外の企業から地域案件を受ける方法を整理したい」という段階では、工事分野、対応地域、現在の人員、希望する案件条件を一度並べてみると方向性が見えやすくなります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の販路拡大をはじめ、現場、組織、原価、デジタル活用まで経営課題を横断して整理し、実行まで支援しています。取引先候補の考え方や優先順位など、まだ方針が固まっていない段階でもご相談いただけます。

無理にサービスを勧めることはありませんので、自社の場合は何から整理すべきかを確認する場としてお使いください。

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