前提

大型工事が始まり、施工管理のマンパワーを早めに補いたい少数精鋭の建築会社

関西圏で建築工事を手がける、少数精鋭の会社です。これまでの実績や取引先との関係から受注には困っていません。一方で、直近では会社の年間売上にも大きく影響する、約8億円規模の工事が動き始めていました。

「今週契約して、来週からという感じです。もう段取りは進めています」

施工管理が1名不足しているものの、現場は待ってくれません。まずは経営者の人脈や紹介を通じて探し、難しければ求人媒体やスカウトも使う方針でした。

ただ、既存社員だけでも現場を回せる見込みはあります。今回の採用目的は、誰かが抜けた穴を埋めることではありません。

「今の人間でも回せるとは思っています。ただ、マンパワーが少し足りないんです」

必要なのは“施工管理という職種の人”ではなく、既存社員の負荷を減らし、今後の受注にも対応できる役割を担う人です。

課題

現場を率いる即戦力か、既存社員の下で動く若手かが決まらない採用枠

採用枠は施工管理です。ただし、入社後の立ち位置が決まっていませんでした。

「今いる社員の下に入れるのか、上に入れるのかは、人材を見て決めたらいいかなと思っています」

経験豊富な人が来るなら、現場を任せられる待遇を提示する。経験が1〜2年でも、大きな案件に関わった実績があれば、既存社員の下で働いてもらう。資格についても、マンパワーになれば必須ではないという考えでした。

採用の間口を広げる意味では、柔軟な方針です。ただし、求人を始める段階で「上でも下でもよい」としてしまうと、候補者に伝える仕事内容や期待値がぼやけます。

ベテランが知りたいのは、自分にどこまで現場を任せてもらえるかです。若手が知りたいのは、誰の下で何を経験し、どのように役割を広げられるかです。

ベテランと若手では、同じ施工管理募集でも、任せる役割と伝えるべき条件が異なります。

背景

着工済みの大型工事と今後の中規模案件で、必要な役割が混ざっている状態

役割が決めきれない背景には、目の前の大型工事と、その先の受注見込みが重なっていることがあります。

今回の約8億円規模の工事は、すでに既存社員を中心に段取りが進んでいます。どれほど経験がある人でも、途中から入社して、すぐに現場のトップを担うのは簡単ではありません。

「もう始まっているので、いきなり来てトップはできないと思います」

一方で、この規模の工事が毎年続く想定でもありません。今回の工事をきっちり納めれば、今後は1〜2億円規模の案件が増える可能性があります。会社として扱いやすいのは、4億円未満の工事でした。

つまり、必要な人材像が二つあります。

  • 目の前の現場で、既存社員を支える人
  • 将来の中規模案件で、現場を率いられる人

さらに、経験者を採用できるなら高い待遇を出してもよい一方、若手を採用して既存社員の下で育てる選択肢もあります。候補者によって配置を変えられる柔軟さがあるからこそ、募集時点の基準が定まりにくくなっていました。

「誰を採るか」から考えると迷いますが、「どの工事で、いつから、どの役割を任せるか」から考えると必要な人材像が見えやすくなります。

解決

工事規模・既存社員の配置・教育期間を先に決め、採用枠を役割別に設計する進め方

施工管理の採用基準は、年齢や経験年数だけで決める必要はありません。先に現場側の条件を整理し、それに候補者を当てはめるほうが進めやすくなります。

1.受注予定を「目の前」と「その先」に分ける

まず、直近の大型工事だけを基準にしないことが大切です。

今回のように着工済みの現場では、途中入社した人をすぐトップに据えるより、既存社員の下で動いてもらうほうが現実的です。一方、今後増やしたい中規模案件まで見据えるなら、将来は現場を任せられる経験者にも採用価値があります。

整理したいのは、次の二つです。

  • 入社直後に担当してほしい役割
  • 今後の案件で任せたい役割

現在の不足を埋める役割と、将来の受注を支える役割を分けることが、採用基準づくりの出発点です。

2.既存社員の配置を先に決める

次に、今いる社員のうち、誰が現場を率い、誰が新しい人を受け入れるのかを確認します。

既存社員がトップとして現場を回せるなら、採用の優先順位は補佐人材になります。経験年数や資格を広く設定し、既存社員の下で動ける人を探しやすくなります。

反対に、既存社員を別の現場へ配置したいなら、現場を任せられる経験者が必要です。この場合は、単に「施工管理経験あり」では足りません。候補者が過去の工事でトップを担ったのか、誰かの下で担当したのかまで確認したいところです。

3.教育に使える期間で若手採用の可否を判断する

若手を採るかどうかは、意欲だけでなく、教育に使える期間から考えます。

現場が始まっていても、既存社員が管理を続けられ、新しい人を下につける余力があるなら、若手を受け入れる選択肢があります。入社後すぐにトップを求めないため、資格の有無だけで候補者を狭めずに済みます。

一方、既存社員が教育に時間を割けず、早い段階で一つの現場を任せたいなら、担当実績を重視した経験者採用が合います。

若手を採れるかどうかは、候補者の能力だけでなく、既存社員が教えられる期間と余力で決まります。

4.ベテラン枠と若手枠を同じ求人票に混ぜない

「経験豊富な人でも若手でもよい」という考え方自体に問題はありません。ただし、求人上は役割を分けたほうが伝わりやすくなります。

たとえば、次のように二つの採用枠として整理します。

採用枠

入社直後の役割

重視する実績

将来の役割

即戦力枠

既存社員から現場を引き継ぐ、または次の案件を率いる

工事規模、担当した立場、現場を率いた経験

中規模案件の中心人物

育成枠

既存社員の下で現場を支える

経験した工事規模、担当範囲、施工管理の基礎経験

段階的に担当範囲を広げる

応募窓口が同じでも、求人票の仕事内容や選考基準は分けられます。待遇についても、年数だけではなく、任せられる役割に応じて設計しやすくなります。

5.面接では経験年数より「何を任されていたか」を確認する

同じ「施工管理経験2年」でも、中身は大きく異なります。大規模工事に関わっていても、担当範囲が限られている場合があります。反対に、工事規模は小さくても、現場の中心として動いた経験があるかもしれません。

確認したいのは、肩書ではなく担当実績です。

  • どの程度の規模の工事に関わったか
  • その工事でトップだったのか、社員の下で動いていたのか
  • 入社直後から任せられる役割は何か
  • 既存社員の下で経験を積む必要があるか

採用基準は「経験○年以上」で終わらせず、過去の担当実績と入社後の役割をつなげて設計することが重要です。

まとめ

施工管理を採用したいものの、ベテランと若手のどちらが必要か決められないことは珍しくありません。既存社員でも現場を回せる一方、マンパワーは足りない。良い経験者がいれば現場を任せたいが、若手なら社員の下で育ててもよい。こうした状況では、候補者を見てから役割を決めたくなります。

ただ、募集時点では最低限、次の順番で整理しておくと判断しやすくなります。

  1. 直近と今後の工事規模を分ける
  2. 既存社員の配置を決める
  3. 教育に使える期間を確認する
  4. 即戦力枠と育成枠の役割を分ける
  5. 経験・資格・担当実績を役割に合わせて評価する

ベテランか若手かを先に決めるのではなく、自社の現場で不足している役割を先に決める。そうすれば、採用すべき人材と提示すべき条件が自然に絞られます。

自社に必要な施工管理の役割から整理したい方へ

「現場を任せられる人が必要なのか、既存社員を支える人が必要なのか」「経験や資格をどこまで求めるべきか」。この整理が曖昧なままでは、求人媒体を選ぶ際にも判断が難しくなります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の採用課題を、受注予定、現場配置、教育体制、組織の状況まで横断して整理し、採用基準づくりや実行を支援しています。

「うちの場合はどちらを採るべきか」「何から整理すればよいかわからない」という段階でも大丈夫です。無理にサービスを勧めることはありません。ものづくりに集中できる体制をつくるための、次の整理先としてお声がけください。

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