売上は3億円台まで伸びた一方、塗装・防水部門に施工余力が残る首都圏の建設会社
首都圏で複数の工事部門を持つ、売上3億円台半ばの建設会社があります。ここ数年は売上が伸びているものの、塗装・防水部門は既存客からの発注時期に左右され、低い売上水準で安定していました。
会社全体では月2,000万円を超える売上がある一方、塗装・防水部門が月300万円ほどにとどまる月もあります。職人と施工体制には余力があり、経営者の見立てでは、案件が確保できれば現在の倍近くまで対応できる状態です。
「年間で見れば利益は出ています。ただ、月300万円で終わる時期が何度かあるのは、やはりもったいない」
売上が落ち込んでいる会社というより、既存客からの発注だけでは施工能力を十分に生かしきれず、次の顧客獲得ルートをつくる必要がある会社です。
検討している選択肢は、大きく二つでした。
- 建設会社や元請け企業を対象にした法人開拓
- 戸建ての塗装・防水工事を獲得する個人向けWeb集客
どちらにも可能性があります。ただし、必要な営業体制も受注後の動きも異なるため、単純に「問い合わせが多そうな方」で決めることはできません。
法人開拓と個人向けWeb集客を集客数だけで比べると判断を誤りやすい状態
法人案件と個人案件の違いは、相手が企業か個人かだけではありません。案件単価、継続性、受注までの手間、営業対応量、競合環境、必要な商圏がそれぞれ異なります。
法人開拓では、建設会社や施設を保有する企業など、発注可能性のある相手へ接点をつくります。面談や現地確認、見積もり、継続的な関係づくりは必要ですが、取引が始まれば複数案件につながる可能性があります。
この会社の場合、条件の合う取引先が二、三社増えるだけでも、塗装・防水部門の売上は大きく変わります。反対に、単価が低すぎる元請けや見積もり依頼ばかりが増える相手では、施工量が増えても利益が残りません。
個人向けWeb集客では、すでに塗装や防水を検討している人から問い合わせを受けられる可能性があります。一見すると、こちらから営業する法人開拓より効率的です。しかし、問い合わせ対応、現地調査、見積もり、比較検討中の顧客への説明など、受注前の対応量は増えます。
また、個人客は地域内の複数社を比較するため、Webサイトを制作するだけで終わりではありません。検索で見つけてもらうための運用や広告、施工事例の更新などを続ける必要があります。
法人案件は少ない顧客数でも売上をつくりやすく、個人案件は受注件数を積み上げるための営業対応力が必要です。 同じ「案件を増やす施策」でも、社内にかかる負荷は大きく異なります。
固定客への依存を減らしたい一方、案件単価・対応量・商圏が大きく異なる二つの市場
この会社が迷っていた理由は、どちらの施策にも明確な利点があったからです。
法人開拓には、狙いたい顧客をある程度選べる強みがあります。大規模すぎず、単価と発注量のバランスが合う建設会社や、複数拠点を持つ企業など、自社の得意工事と施工能力に合う相手を絞れます。
一方、個人向けWeb集客には、既存の固定客に縛られず、発注意欲のある顧客と接点を持てる魅力があります。特定の取引先から仕事が出るのを待つ構造から離れられる可能性があります。
ただし、商圏の考え方には注意が必要です。法人案件は、交通費や現場経費が合えば、首都圏の広い範囲を対象にできます。これに対し、戸建ての塗装・防水を探す個人客は、近隣の会社を選ぶ傾向があります。
隣県への拠点展開も検討していたため、個人向けWeb集客を行うなら、その地域に営業拠点を構えることも視野に入ります。検索上の見せ方だけでなく、現地調査や顧客対応へ無理なく動ける体制が必要だからです。
さらに、社内の営業特性も判断に影響します。塗装・防水の経験は豊富でも、個人客への営業や継続的なWeb運用は別の能力です。問い合わせが増えても、経営者だけが対応する形では、早い段階で限界が来ます。
集客手段を選ぶ前に、誰が問い合わせを受け、誰が現地調査へ行き、誰が見積もりを出し、受注後に何件施工できるのかを確認する必要があります。 この受け皿がないまま集客量だけを増やすと、経営者と現場の両方に負荷が集中します。
施工体制・営業対応量・目標売上から逆算し、一つずつ検証する進め方
法人と個人のどちらを選ぶかは、期待できる問い合わせ数ではなく、必要な粗利益を、無理のない案件数と対応工数でつくれるかで判断すると整理しやすくなります。
まず、次の項目を二つの選択肢ごとに並べます。
- 1件当たりに期待する売上と粗利益
- 年間で必要な受注件数
- 面談、現地調査、見積もりにかかる工数
- 継続発注や紹介につながる可能性
- 現在の職人と協力会社で対応できる施工量
- 営業対応を担う人と、その人が使える時間
- 対象商圏と移動経費
- 集客を止めたいときに調整できるか
この会社の現在地で考えると、法人開拓から始める方が整合的です。法人顧客を増やしたい意向があり、少数の取引先でも売上への影響が大きく、広い商圏に対応できます。また、施工枠が埋まった段階で新規開拓の量を調整しやすい点もあります。
狙う相手は「法人ならどこでもよい」わけではありません。過去に単価が合わず取引を縮小した経験があるため、次のような条件で候補を絞る必要があります。
- 塗装・防水工事を継続的に発注する可能性がある
- 自社の施工規模と案件規模が合う
- 単価だけでなく、品質や対応力も評価対象になる
- 見積もり件数だけが過度に増えない
- 移動経費を含めても利益を確保できる
そのうえで、接点数だけではなく、面談数、見積もり数、受注数、受注粗利益、営業に使った時間を追います。「何件回ったか」ではなく、「どの条件の顧客が利益の残る受注につながったか」を残すことが、次の開拓精度を高めます。
個人向けWeb集客を先に選ぶなら、サイト制作前に受け入れ体制を決めます。対象地域、対象工事、想定案件単価、問い合わせ対応者、現地調査の担当、月間対応上限までを先に設定します。近隣に拠点を出す計画があるなら、その時期とWeb集客の開始時期もそろえた方が動きやすくなります。
両方に魅力があっても、最初から同時に始める必要はありません。この会社でも、二つが同時にうまくいけば経営者と現場の対応能力を超える懸念がありました。
進め方は、次の順番が現実的です。
- 目標売上ではなく、必要な粗利益と案件数を決める
- 法人または個人のどちらか一方に対象を絞る
- 面談から受注、施工までの社内負荷を記録する
- 施工枠と営業対応に余力があるかを確認する
- 最初の施策を調整したうえで、もう一方を検討する
施策の優劣よりも、自社が受注後まで対応できる順番で始めることが重要です。 法人開拓は活動量を調整しやすく、個人向けWeb集客は公開後も問い合わせ対応と運用が続きます。この止めやすさの違いも、施工余力が限られる会社では重要な判断材料になります。
まとめ
塗装・防水会社が法人案件と個人案件のどちらを増やすべきかは、集客手段だけを比べても答えは出ません。
少数の取引先で継続的な売上をつくりたいなら法人開拓、地域内で受注件数を積み上げる営業体制をつくれるなら個人向けWeb集客が候補になります。
今回のように、施工余力があり、法人顧客を増やしたい意向が強く、個人客への営業体制がまだ整っていない場合は、法人開拓から始める方が進めやすいでしょう。その際も、会社規模だけでなく、案件単価、発注頻度、見積もり負荷、商圏を含めて狙う相手を決める必要があります。
両方を進める構想自体は問題ありません。ただ、まず一方で受注から施工までの流れを整え、対応能力を確認してから次へ進む方が、現場にも経営にも無理がありません。
固定客への依存を減らす第一歩は、集客方法を増やすことではなく、自社に合う顧客の条件と受け入れ可能な案件数を明確にすることです。
自社に合う案件の増やし方を整理したいときに
法人開拓と個人向けWeb集客のどちらが合うかは、施工体制、営業を担う人、既存顧客の構成、目標粗利益、今後の拠点計画によって変わります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の販路拡大を、現場、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。「うちの場合はどちらから始めるべきか」「狙う法人の条件をどう決めればよいか」という段階でも問題ありません。
状況を整理したうえで必要な選択肢をご案内しており、無理に施策や契約を勧めることはありません。次の顧客獲得ルートを考える材料として、気軽にお声がけください。