施工管理社員の給与をもとに、新たに迎える職人の処遇を考える段階
既存社員の給与は決まっていても、新しく採る職種の給与を説明する基準は、まだ整理されていませんでした。
住宅の施工を手がける、ある専門工事会社での相談です。社員には施工管理を担う人がおり、新たに大工や、建て方・外壁の取り付けなどに携わる職人を迎えようとしていました。
募集する仕事の給与を確認するなかで、話は既存社員の給与の決め方に移りました。人によって金額は違います。ただ、その違いを説明する明確な基準や、判断のもとになる一覧はありません。
「明確に、これだからこの金額というのはない。勤続年数とかで決めています」
日々の働きぶりを見ながら、一人ひとりの給与を決めてきた会社です。それだけに、別の職種を採用しようとすると、これまでの判断をそのまま当てはめにくい状況がありました。
給与の金額だけでは、入社時の処遇とその先の昇給を説明できない状態
必要なのは給与額を決めることだけでなく、「なぜその金額か」「何ができれば上がるか」を説明できる状態です。
募集に給与の下限と上限を載せても、その間のどこに応募者を位置づけるかは別の判断です。経験年数を見るのか。資格を見るのか。任せる仕事を見るのか。その軸がなければ、応募者が来るたびに個別判断になります。
相談のなかでも、前職の給与や本人の希望をどこまで受け入れるか、という話が出ていました。
「これ以上もらえないなら、やめます、みたいな」
希望額を聞くこと自体は大切です。ただ、自社の基準がないまま交渉すると、入社時のやり取りによって処遇が変わりやすくなります。既存社員との違いも説明しにくくなります。
さらに、入社後の昇給まで経営者の都度判断になっていると、本人には目指す先が見えません。初任給の説明と、入社後の評価・昇給の説明は、ひと続きで整える必要があります。
勤続年数による判断に、施工管理と職人を比べにくい事情が重なった状況
基準づくりを難しくしていたのは、判断材料がまとまっていないことと、職種ごとに仕事の中身が違うことでした。
この会社では、給与を勤続年数などで判断していました。一方で、経験、資格、役割と給与の関係は、一覧として整理されていませんでした。金額はあっても、その金額になった理由が比較できる形になっていなかったのです。
そこに、新しい職種の採用が重なりました。
「今は施工管理しかいないから、能力が比べられないじゃないですか」
施工管理の実務と、大工や建て方の技能は、そのまま横並びにはできません。同じ経験年数でも、任せられる仕事は違います。既存社員の給与を参考にするだけでは、新しく迎える職人の処遇を決めきれない理由がここにあります。
また、入社後に施工管理の資格を取得した社員もいました。資格取得や役割の変化を評価に結びつける材料はあります。ただ、それを昇給のルールとして整理するところまでは進んでいませんでした。
これまでの判断を否定するのではなく、個別に判断してきた理由を取り出し、次の採用にも使える形にすることが出発点です。
社員の処遇を一覧にし、職種ごとの役割と昇給の条件をつなぐ進め方
最初から細かな評価制度を作り込むより、今の給与を説明できる一覧と、今後の昇給を説明できる基本ルールから整える進め方が合っています。
この会社で話に上がったのも、散らばっている情報を集め、基本となる給与や昇給幅、資格・役割による上がり方を整理する方向でした。まだ制度が完成したわけではありません。まずは、その土台を作る段階です。
まずは、給与とその判断材料を同じ一覧に集める
既存社員について、給与額だけでなく、その判断に関わる情報を並べます。整理する項目は、対話に出ていた要素に絞ると始めやすくなります。
- 現在の給与と、その内訳
- 職種、勤続年数、これまでの経験
- 保有資格
- 現在任せている仕事や役割
- 給与を決めた際に考慮した理由
この一覧は、社員を単純に順位づけするためのものではありません。「勤続年数を重く見ているのか」「資格や役割の違いを反映しているのか」を確認するためのものです。判断理由が曖昧なところは、曖昧なまま確認事項として残します。
現在の給与という事実と、これから使いたい評価基準は、分けて整理するのがポイントです。 今の金額にぴったり合うようにルールを作ると、過去の個別判断をそのまま制度にしてしまうためです。
職種の違いは、能力の直接比較ではなく任せる仕事で整理する
施工管理と職人を、同じ技能の物差しで比べる必要はありません。経験・資格・役割という判断の枠はそろえつつ、中身は職種ごとに確認します。
施工管理なら、どの仕事を任せることを想定しているか。職人なら、大工仕事、建て方、外壁の取り付けなど、どこを担当してもらうか。まず、その仕事の範囲を明確にします。
そのうえで、既存社員の給与を参考にしながら、募集する職種に必要な経験と、入社時に期待する役割を照らし合わせます。比較する相手が社内にいない場合も、無理に同じ経験年数の社員へ当てはめず、任せる仕事内容から基準を考えられます。
共通にするのは判断の枠組みであり、施工管理と職人の技能そのものではありません。
基本となる給与と、上がる条件をセットで決める
入社時の基準を整理したら、次は昇給の条件です。対話では、資格を取った場合や役割が変わった場合、担当できる仕事が増えた場合の評価が話に上がっていました。
整理したいのは、次のつながりです。
- どの経験・役割を、基本となる給与の対象にするか
- どの資格取得や役割の変化を、評価に反映するか
- その変化を、どの程度の昇給につなげるか
資格なら何でも同じように評価するのではなく、自社で任せたい仕事との関係を確認します。担当できる仕事の広がりを評価する場合も、「いろいろできる」ではなく、どの仕事が増えたのかを説明できる形にします。
目指すのは、応募者にも社員にも、「今の処遇はこの経験と役割をもとに決めています。その先は、この資格や役割を評価します」と伝えられる状態です。
採用時の個別判断も、基本ルールに照らして確認する
前職給与や希望額は、本人の意向として確認します。そのうえで、自社の基準に照らして提示額を考えます。希望に合わせる場合も、どの経験や役割を評価したのかを明確にします。
個別判断をなくすことより、個別判断の理由を基本ルールに沿って説明できることが大切です。
整理した案は、社会保険労務士などにも相談しながら、給与の内訳や既存の規程との整合を確認していきます。採用条件を決める作業と並行して、無理なく使える土台に整えていく進め方です。
まとめ
給与を感覚で決める状態から抜け出す第一歩は、既存社員の処遇と、その判断理由を一覧にすることです。
勤続年数、経験、資格、役割を並べると、今まで何を評価してきたかが見えてきます。施工管理と職人のように職種が違う場合は、技能を直接比べるのではなく、それぞれに任せる仕事を整理します。
その土台に、資格取得や役割の変化による昇給の条件をつなぎます。大切なのは、立派な制度を掲げることではありません。「なぜ今の給与なのか」「何を身につければ評価が上がるのか」を、会社の言葉で説明できることです。
自社の給与の決め方を整理するところから
「一覧を作っても、何を基準にすればよいかわからない」「施工管理と職人の処遇をどう整理すればよいか迷う」。そんな段階からでも、整理を始められます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。評価・昇給についても、現在の給与の決め方と、これから任せたい仕事を整理するところからご一緒します。
制度を導入すると決める前の、「うちの場合は何から考えればよいか」というご相談でも大丈夫です。 無理にサービスをお勧めすることはありませんので、次の整理先としてお気軽にご相談ください。