前提

仕事への愛着はあっても、一族以外の昇進先が見えない建設会社

会社や仕事が好きであることと、その会社で自分の将来を描けることは、別の問題です。 住宅工事を手がけるある建設会社では、社員への聞き取りから、この二つの間にある隔たりが見えてきました。

同社は、主な取引先ごとに二つの工事部門があり、現場の施工管理や事務を社員が支えています。経営層の主要な役職は一族が占めていました。

社員の多くは、入社したことを肯定的に受け止め、今の仕事内容にも大きな不満はない様子でした。一方で、経営に関わることからは距離を置き、自分の仕事に専念したいという受け止めもありました。

そこで浮かんだのが、一族以外には上の役職へ進む道がないのではないか、という見方です。役職に就く機会が見えなければ、それに伴う給与や処遇の改善にも期待を持ちにくくなります。

これは、社員がすぐに辞めたいと訴えている状況とは異なります。今の仕事を続ける理由はあっても、会社をさらに良くするために役割を広げる理由が見えにくい状態として捉えると、整理すべきことが明確になります。

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課題

役職を一族が占めること以上に、登用条件が見えないことの問題

社員の将来像を示すには、誰が役職に就いているかだけでなく、何ができればその役職を任されるのかを明らかにする必要があります。

同社では、明確な評価制度が十分に整っていないことも指摘されていました。役職を一族が占めているうえに、登用の基準が見えなければ、社員からは能力ではなく血縁で決まっているように映りやすくなります。

経営側に、取引を継続するための配置や、将来を見据えた登用という意図があったとしても、その理由が伝わっているとは限りません。社員に見えるのは、誰が上がったかという結果です。

このとき、「一族だから選んだわけではない」と説明するだけでは、社員自身の将来にはつながりません。知りたいのは、自分にも部門責任者や経営幹部を目指す余地があるのか、そのためにどの能力や行動が必要なのかという点だからです。

一族の登用理由を説明することと、一族以外にも道を開くことは、切り離せません。現在の人事の説明だけで終わらず、他の社員にも当てはまる昇進条件を示すことが課題です。

背景

取引先の高評価と社内の信頼が一致しない登用候補者

登用を難しくしていたのは、一族かどうかという問題に加え、同じ人物への評価が社内外で分かれていたことです。

同社では、一族のある社員を一段上の責任者に据え、取引先の担当者も支援するという配置案が示されていました。取引先からの評価は高く、経営側からは、相手の求めに応じて地道に対応してきたことが背景として挙げられていました。

一方、社内では、その社員の説明や言動に対する不信感が聞かれました。ただし、聞き取られた不満は社員側の受け止めであり、個々の内容が事実として確認されたものとは分けて扱う必要があります。

経営側にも、社内の信用が十分でないまま責任者を任せてよいのか、という迷いがありました。取引先が評価しているからといって、社内でも指示が受け入れられるとは限らないためです。

逆に、社内で慕われている人が、取引先の求める現場管理や対応の水準を満たしているとも限りません。同社では、過去の担当者についても、社員と取引先で評価が異なっていました。

ここを好き嫌いや一族内の関係だけで捉えると、配置の理由が伝わりにくくなります。取引先に応える力と、社員から信頼されて仕事を進める力を分けて確認し、責任者に必要な条件として整理することが大切です。

解決

部門責任者の役割から逆算する、一族にも社員にも共通の登用条件

人の名前から配置を考えるのではなく、まず部門責任者に何を任せるかを決め、その役割に必要な能力と改善条件を示します。 同社でも、将来の組織図と人員配置を経営側で具体化することが、次に整理する事項となりました。

現在の配置と、社員が目指せる配置を分けて考える

当面の取引継続を支える配置と、将来の登用の仕組みは、同時に考える必要があります。

現時点では、取引先との関係や対応実績から、一族の社員を責任者に据える判断が必要になるかもしれません。ただし、その判断を、役職が将来も一族のために確保されることと同じにしないことが重要です。

二つの工事部門を誰が率いるのか、その上で会社全体を誰がまとめるのかを整理し、一族以外の社員にも部門責任者や経営幹部への道を示します。まだ適任者がいない場合も、将来誰に何を任せたいのか、育成して任せるのかという方向性を持つことで、社員に伝える内容が具体的になります。

「今はこの人に任せる」という判断と、「この役職は誰が目指せるのか」という条件を、別々に説明できる状態が出発点です。

能力を、現場と取引先に必要な役割へ置き換える

登用基準を「能力が高い人」「会社に貢献した人」だけで表すと、何を目指せばよいかが曖昧なまま残ります。同社で挙がった論点に沿えば、まず整理したいのは次の項目です。

  • 取引先が求める現場管理や品質の水準に応えられるか
  • 工程管理や取引先との対応を任せられるか
  • 社内で必要な説明を行い、信頼を得ながら仕事を進められるか

これらを一族にも、それ以外の社員にも共通して当てはめます。得意な部分だけで登用を判断せず、責任者として不足する部分は何か、誰が支援するのかまで考えることが、配置の実効性につながります。

登用理由と、本人に求める改善を一緒に伝える

社内の信頼に課題がある候補者を登用する場合は、取引先から評価されているという説明だけでは足りません。登用する理由を示すと同時に、本人にも改善を求めることが、公平さを伝えるうえで欠かせません。

まず、不信感につながった説明や言動について、誤解があるのか、本人が改めるべき点があるのかを整理します。そのうえで、責任者としてどのような説明や対応を求めるのか、経営側がどう支えるのかを明らかにします。

過去の評価を一度の説明で変えることは難しくても、今後求める行動は示せます。登用したことをもって課題が解消したとせず、信頼回復も本人に求める役割の一部として扱う考え方です。

他の社員にも、同じ役職を目指す条件を示す

一族の社員について説明した後には、必ず他の社員の将来へ話をつなげます。どの役割を担い、どの能力を身につければ、部門を任される候補になれるのかを、社長自身の方針として伝えます。

昇進に伴う処遇改善への期待も薄れていたため、役割が変わると処遇をどう考えるのかも、評価の見直しと合わせて整理する必要があります。条件が決まっていない段階で約束するのではなく、役職・責任・処遇のつながりを説明できるようにすることが先です。

社員に示したいのは、特定の人への特例ではなく、自分も条件を満たせば上を目指せるという共通の道筋です。

まとめ

「一族しか昇進できない」という見方を変えるには、一族の登用を否定するよりも、役割と能力で選ぶ条件を社員に開くことが重要です。

そのためには、部門責任者に任せる仕事を整理し、取引先への対応力と社内の信頼を分けて確認します。登用候補者に不足があれば、本人に求める改善と支援の方針を示し、他の社員にも同じ役職を目指す条件を伝えます。

会社への愛着があることは、大切な土台です。その土台の上に、どんな役割を担えるのか、努力がどう評価や処遇につながるのかを具体化することで、社員と会社の将来を結びつけやすくなります。

一族以外にも開かれた登用の道筋を整理するために

役職の配置を変えたいと思っても、今の担当者への説明と、社員全体の評価の見直しをどこから進めるかは、社内だけでは整理しにくいことがあります。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を現場と組織の両面から整理し、実行まで支援しています。一族と社員に共通する登用条件や、部門責任者の役割、将来の組織図についても、現在の取引や現場の事情を踏まえて一緒に考えます。

「うちの場合は何から整理すべきか」という段階でもご相談いただけます。 無理にサービスの利用を勧めることはありませんので、自社の評価や配置を見直すための整理先としてお声がけください。

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