数億円規模の売上を維持しながら、社長が受注の大きな部分を支える専門工事会社
売上が落ちていないことと、社長に頼らず受注できることは、分けて考えたい問題です。
ある専門工事会社では、数億円規模の売上をここ数年維持していました。直近も前年を上回る見込みです。赤字ではありません。数字だけを見れば、事業は順調に見えます。
一方、社長には気がかりがありました。受注の大きな部分を、自分の営業で支えていることです。幹部が担う部分で、新しい取引先が十分に増えているわけではありませんでした。
「売上が上がった、その中身を誰がつくったのか。そこから話をしたい」
社長が考えていたのは、単なる売上の上積みではありません。自分が今と同じように動けなくなっても、会社として受注を続けられる状態です。そのために新規開拓を進めたい。ところが、幹部との合意がなかなかまとまらない状況でした。
売上維持への評価が先に立ち、社長依存の受注構造が共有されない状態
話し合いたいのは幹部の努力の有無ではなく、今の売上が何によって維持されているかです。
幹部側には、売上が下がっていない以上、自分たちの取り組みも成果につながっているという受け止めがありました。それ自体を否定したいわけではありません。ただ、社長の見ている問題とは少しずれています。
社長が見ているのは、受注を生む力の偏りです。自分の営業で増えた分が会社全体を支えているなら、その動きが弱まったときには売上も影響を受けます。既存の取引先から、今後も同じ量の仕事が来るとは限りません。
「現状維持するにしたって、新しいお客さんがいないと」
この言葉には、会社をむやみに大きくしたいという話とは違う意味があります。今の事業を続けるためにも、次の取引先との接点が必要だということです。
ただ、「このままではよくない」と伝えるだけでは、幹部には動く理由が見えにくいままです。目の前の売上は維持できているからです。
売上総額だけを共通の物差しにしていると、社長は依存の解消を求め、幹部は現状の成果を説明するというすれ違いが起こりやすくなります。
「自分の意思で動きたい」という幹部の意向と、具体案が出ない足踏み
幹部には自分たちで進めたい意向がある一方、何を実行するかが決まっていませんでした。
社長の説明では、幹部も現状のままでよいとは考えていません。「こうしていきたい」という思いはあるようです。ただ、上から「やれ」と言われることには抵抗がありました。
「自分の意思で動きたい。でも、何をやりたいのかが出てきていない」
ここが、話し合いの止まっているところでした。社長が決めて押し切れば、幹部が自分で動く形にはなりません。一方で、具体案が出るまで待ち続けても、新規開拓は進みません。
さらに、「案件が増えたら、今でもいっぱいなのにどうするのか」という懸念もありました。新規開拓が、今の仕事にさらに仕事を足す話として受け取られていた面があります。
社長が求めていたのは、利益の薄い案件まで増やすことではありません。必要な利益を確保し、先々の人員や資材にも備えられる受注です。既存案件との入れ替えも含めて考えていました。
「新しい仕事を増やす」だけではなく、「どんな利益が残る仕事を、誰が取りに行くか」までそろえる必要があったのです。
受注の内訳と必要な利益をそろえ、幹部が担う範囲から決める進め方
まず受注の現状認識をそろえ、そのうえで幹部が担うことと、第三者に補ってもらうことを分ける進め方が考えられます。
外部の支援を使うかどうかから話し始めると、賛成か反対かで止まりがちです。先に、会社として何を変えたいのかを具体化したいところです。
売上総額ではなく、誰がどの取引先から受注しているかを見る
最初に整理したいのは、今ある売上の内訳です。
- 社長と幹部が、それぞれどの取引先の受注を生んでいるか
- 売上の増加分が、誰の働きかけによるものか
- 既存取引先からの受注と、新しく開拓した取引先からの受注がどうなっているか
ここで大切なのは、「社長のほうが多く取っている」と示して終わらないことです。既存の取引を維持する役割もあります。幹部が担っている仕事を確かめながら、社長に偏っている部分を見つけます。
受注の分解は、貢献を競うためではなく、会社として補うべき営業の範囲を決めるために行います。
社長が担う取引先からの受注が弱まった場合、どこで補えるのか。そこまで話せると、新規開拓が会社共通の課題になります。
売上目標の前に、残したい利益を共有する
次にそろえたいのは、何のために利益が必要なのかです。
この会社でも、目標の利益率を置いていました。ただ、実際には案件ごとに利益率が異なります。薄利の案件が混ざれば、売上が増えても、期待した利益には届きません。
人員を増やすこと。社員の収入を確保すること。資材を購入し、先々に備えること。そうした使い道と必要な利益をつなげて話すと、売上目標の意味も共有しやすくなります。
新規開拓の目的を「件数を増やすこと」ではなく、「必要な利益を残せる取引先を増やすこと」に置き直します。
この前提なら、忙しいから新規開拓はできない、という話にも別の考え方ができます。今の案件にすべて上乗せするのではなく、利益の薄い案件との入れ替えを検討できるからです。
幹部の意思を、狙う相手と担う仕事に落とし込む
「自分の意思で動きたい」という意向は、具体策を決める出発点にできます。
必要なのは、幹部に方針づくりを丸ごと預けることではありません。会社として必要な利益と、取りたい案件の条件を共有することです。その範囲で、どのような取引先を狙い、どこまで自分たちで進めるかを話します。
支援の説明でも、先に受注したい案件の条件を確認し、それに合う会社の特徴を分析する進め方が示されていました。まず対象を決めて動き、反応が想定と違えば修正する形です。
「何をしたいか」だけで止めず、「誰に働きかけるか」「社内でどこまで担うか」まで具体化することが、次の一歩になります。
第三者の支援は、社内だけでは進まない部分に使う
外部の支援を考える判断軸も、ここから見えてきます。幹部が自分たちで方針を具体化し、実行まで進められるなら、社内で担う範囲を広くできます。一方、狙う取引先を絞れない、接点づくりまで手が回らないという場合は、その部分を補う使い方があります。
費用も、売上が増えそうかだけでは判断しにくいものです。受注して残る利益と、支援に使う費用を合わせて見る必要があります。
第三者を入れる目的は、幹部の代わりにすべてを決めることではなく、合意した新規開拓を実行に移すことです。 社内に残す判断と、外部に任せる作業を分ければ、幹部の意思と支援の活用は両立できます。
まとめ
社長頼みの営業を変える起点は、危機感を強く伝えることより、売上の中身を一緒に見ることです。
売上を維持できていることは、会社の成果です。そのうえで、誰がどの取引先から受注を生んでいるかを確かめます。社長に偏っている部分が見えれば、幹部に担ってほしい役割も具体的になります。
次に、必要な利益と、取りたい案件の条件を共有します。そこから、幹部が自分たちで進める範囲を決める。社内だけでは進まない部分に、第三者の支援を使う。この順番なら、外部支援の是非だけに話が偏りません。
「自分たちで動きたい」という言葉を、狙う取引先と実行する仕事につなげること。そこから、社長一人で受注を支える状態を少しずつ変えていけます。
社長と幹部で、新規開拓の役割を整理したいときに
「うちの場合は、どこまで幹部に任せ、どこから支援を使うべきか」という段階から整理できます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を横断して整理し、実行まで支援しています。新規開拓でも、単に営業の動きを増やすのではなく、受注の偏りや必要な利益、現場で対応できる範囲を踏まえて進め方を考えます。
社内で話しても具体策がまとまらない。社長が決めるだけではなく、幹部と一緒に進めたい。そうした状況も、相談の出発点になります。無理にサービスをお勧めすることはありませんので、何から整理すべきか迷っている段階でもご相談ください。