十数名への社員面談で表れた、外部担当者への警戒
社員面談で本音を聞くには、質問の工夫より先に「何のために、誰が聞き、誰に伝えるのか」をそろえる必要があります。
ある中小建設会社では、社内の状況を把握するため、外部の担当者が十数名を対象に社員面談を進めました。入社した理由や仕事とのギャップ、業務の負担などを聞く面談です。しかし、複数の社員には面談そのものを断られ、応じた社員からも当初は強い警戒を感じる状況でした。
背景には、経営陣への不信感と、以前から社員の面倒を見てきた社内の相談役への信頼がありました。外部担当者も、単に会社の状況を聞く人とは受け取られていませんでした。取引先との関わりもあり、「取引先の評価が悪いから送り込まれたのではないか」と見られていたのです。
一方で、面談の終わりには「聞いていただけてよかった」「第三者から、ちゃんと言ってほしい」という声もありました。社員が変化を望んでいないわけではありません。話す目的と、その後の扱いが見えないことが、面談の入り口を狭くしていました。
改善のための面談が、経営側や取引先の意向を探る場に見えてしまう問題
会社が改善のつもりで設けた面談でも、社員にとっては「誰のために話を集めているのか」が分からなければ、本音を出しにくい場になります。
この会社では、面談中に「この面談ですら、本音を話せるわけがない」という趣旨の言葉が出ていました。外部担当者が、経営側や取引先の意向を探る人だと受け取られていたためです。
ここで、担当者が「第三者なので率直に話してください」と伝えるだけでは、十分とはいえません。社員から見れば、誰が依頼した人なのか、発言がどこまで届くのかは変わらないからです。
面談記録の扱いにも、同じ問題がありました。記録には、仕事上の困りごとだけでなく、経営陣や社内の人間関係に対する率直な評価も含まれていました。その一方で、取引先への記録共有について、面談を受けた社員に事前に伝えていないことが確認されています。
率直な記録を残すことと、その記録を広く共有してよいことは別です。 現状を知る価値があっても、発言者に説明していない相手へそのまま届ける進め方では、面談への警戒を解くことが難しくなります。
社長からの目的説明の不足と、会長・社長から重なる日程連絡
面談への警戒を強めていたのは、外部担当者の存在だけでなく、会社側の説明と連絡がそろっていないことでした。
本来は、なぜ外部の人に社員の話を聞いてもらうのかを、社長自身が伝える必要があります。しかし、この会社では、十分な背景説明がないまま、面談の案内が先に進んでいたと受け止められていました。
さらに、日程調整では会長と社長の両方から社員へ連絡が届いていました。社員から「もう決まっていますよ」と返される場面もあり、こうした重複は普段からあることだという反応も出ています。
日程連絡だけなら、小さな行き違いに見えるかもしれません。ただ、経営陣への不信感がすでにある状況では、面談でも会社の説明がそろっていないことを示す出来事になります。社員からすれば、誰の案内を基準にすればよいのかも分かりにくくなります。
また、社員からは「助けると言われても、実際に頼むと助けてもらえない」という趣旨の声もありました。こうした受け止めがある以上、面談の目的を伝えるだけでなく、聞いた声をどう改善につなげるのかまで示すことが大切です。
社長による説明、窓口の一本化、記録と改善方針を分けた共有
面談を進め直すなら、まず経営側で目的・担当・共有範囲を決め、それを社員へ同じ内容で伝えることから始めます。 面談への参加や率直な発言を求める前に、話す条件を整える順番です。
社長自身が、改善目的と外部担当者の役割を説明する
面談の必要性は、外部担当者に任せきりにせず、社長の言葉で伝えます。この会社で不足していたのは、「会社をよくするために、第三者の目を入れて現状を知りたい」という説明でした。
伝える内容は、次の点に絞ると整理しやすくなります。
- 会社として、何を把握し、何を改善したいのか
- 外部担当者には、何を聞き、整理してもらうのか
- 聞いた内容を誰に、どのような形で伝えるのか
- 面談後に、会社として何を社員へ返すのか
判断の基準は、会社が説明したつもりかどうかではありません。社員が「なぜ自分が話すのか」「話した後にどう扱われるのか」を理解できる内容になっているかです。
取引先との関わりについて誤解があるなら、その点も実際の役割に即して説明します。外部担当者が「中立です」と繰り返すより、依頼した経営者が、会社としての目的と担当者の役割を明らかにするほうが、面談の前提をそろえられます。
日程調整の窓口を一つにする
面談の日程や変更連絡は、一つの窓口に集めます。会長と社長がそれぞれ案内する状態を残したままでは、目的を説明しても、実際の進め方とのずれが続きます。
誰が窓口を担うか以上に大切なのは、社員に届く案内を一本にすることです。経営側で調整した内容を窓口から伝え、決定済みの日程を別の人が再調整しない状態にします。
連絡窓口の一本化は、面談に関する説明と運用をそろえる、具体的な改善の一歩です。
面談記録と、社員に返す組織課題を分ける
面談で得た情報は、共有先ごとに目的を分けて考えます。経営陣が改善を判断するための情報と、社員全体へ伝える内容、取引先へ伝える内容は、同じである必要はありません。
共有を決める際は、「その相手が改善に関わるために必要か」「発言者が分かる形で伝える必要があるか」「事前に説明した範囲に収まるか」を確認します。説明していない共有先へ記録を渡すのであれば、そのまま進めず、共有の必要性と本人への説明を整理することが先です。
社員全体への還元では、個人に向けられた批判を並べるのではなく、会社として直す課題に置き換えます。たとえば、この会社で出ていた声なら、次のように整理できます。
- 会長と社長から連絡が重なることは、連絡経路と役割分担の課題
- 助けを求めても対応されないという声は、相談後の対応の課題
- 会社の先が見えないという声は、今後の方針を伝える課題
社員に返したいのは「誰が誰を批判したか」ではなく、「会社として何を受け止め、どう変えるか」です。 生の発言を全員で読み合わせることと、現状を共有することを、同じにしないのがポイントです。
面談後には、把握した課題だけで終わらせず、決めた改善方針と、まだ決められていないことを伝えます。この会社であれば、まず連絡窓口をそろえることからでも始められます。聞いた声と実際の変更がつながることが、次の対話の土台になります。
まとめ
社員面談で本音が出ないときは、社員の話し方よりも、会社からの目的説明と情報の扱いを先に確かめたいところです。
外部担当者が経営側や取引先の意向を探る人に見えているなら、社長自身が改善目的と役割を説明する。会長と社長から連絡が重なるなら、窓口を一つにする。発言の共有先が曖昧なら、誰に何を伝えるのかを面談前に明らかにする。この順番が、話せる場づくりにつながります。
面談記録は、会社の状態を知る大切な情報です。ただし、詳しく記録したものを、そのまま広く配る必要はありません。率直な声を守ることと、組織課題を共有することを両立させ、会社としての改善方針を返す。 そこまでを面談の一続きとして考えることが大切です。
社員面談の目的と、聞いた声の返し方を整理するために
社員面談を始めたいものの、社長から何を伝えるべきか迷う。すでに面談を行ったけれど、記録をどこまで共有してよいか判断しにくい。そうした段階でも、進め方を整理するところから相談できます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。社員面談についても、目的説明、社内の役割分担、聞いた声を改善へつなげる進め方を一緒に考えます。
「うちの場合は、何からそろえるべきか」という段階で構いません。無理にサービスの利用をおすすめすることはありませんので、現在の状況をお聞かせください。