他社を経験した職人から施工方法や器具の提案が集まる内装工事会社
現場から新しい方法の提案が出ることと、その方法を自社の現場で採用できることは、分けて考えたいところです。
ある内装仕上げを担う専門工事会社では、数名の職長を中心に、常時七名ほどの職人と工事を進めています。職長も手を動かしながら、工程や作業の進め方を管理する体制です。
他社の現場を経験してから、この会社の仕事に入る職人もいます。そのため、新しい施工方法や器具の情報は、現場から自然に集まってきます。
「他でこういうやり方をしたけど、すごくよかったよ」
「こっちも、こうしたほうがいいんじゃないか」
そうした提案を職人同士で話し、作業の進め方が変わっていくこともあるそうです。経営者自身も、現場から上がってくるアイデアを大切にしてきました。
「これでしたら楽になる。早くなる。きれいになる。そういうところは、みんな思っているんです」
提案はありがたい。できれば活かしたい。その姿勢があるからこそ、「この現場でも使ってよいか」という判断が必要になっています。
よい方法だと思って任せた後に気づく現場との不一致
悩みの中心は、アイデアが足りないことではなく、他の現場での成功をどこまで自社に当てはめてよいかという判断です。
この経営者は、提案された方法をそのまま受け入れているわけではありません。
「他では合うかもしれないけど、こちらの現場には合わない。その判断は最初にしないといけない」
一方で、最初の判断だけでは見切れないこともあります。
「こちらの判断ミスで現場に任せて、ある程度続けてから、これは間違っているなと思うこともあります」
新しい方法に期待する気持ちと、現場に合うかを見極める難しさ。その両方がある状態です。
ここで整理したいのは、方法そのもののよしあしと、今回の現場で使うことのよしあしです。他で成果が出た方法でも、そのまま採用できるとは限りません。反対に、今回の現場で合わないからといって、その提案自体に価値がないわけでもありません。
職人が感じる作業のよさと現場全体での適合性の違い
職人が実感した「楽・早い・きれい」は大切な判断材料ですが、それだけで現場全体への適合性まで確認できるわけではありません。
張り物などの作業では、長く経験を重ねた職人ほど、自分なりのやり方ができています。根本から施工方法を変える提案は多くないそうです。それでも、他の現場でよい器具や工夫に触れると、職人から声が上がります。
「職人は、そういうものには意外と敏感なんです」
実際に使った人の言葉には、作業をしたからこその手応えがあります。ただ、その手応えが、どのような現場で得られたものかまで確かめる必要は残ります。
この会社でも、方法の内容を把握したうえで、経験者と顔を合わせて相談しています。「全体の流れからしたら、どうなるか」まで考えて対応を決めるそうです。
つまり、必要なのは提案を抑えることではありません。職人が持ち帰った経験を、今回の現場に照らして検討することです。 さらに、採用を決めた後も、実際の作業を見て判断を確かめるところまでが一続きになります。
期待する効果と現場への適合性を分け、採用後も作業を確認する進め方
「何がよくなるのか」「この現場でも成り立つのか」「実際にどう作業しているか」の順に確認すると、提案を活かしながら判断しやすくなります。
まず「楽・早い・きれい」のどこが変わるかを聞く
最初に確かめたいのは、提案者が何をよいと感じたのかです。「うまくいった」という言葉を、もう少し具体的にしていきます。
- 作業が楽になったのか
- 作業が早くなったのか
- 仕上がりがきれいになったのか
三つを一括りにせず、どこに効果があったのかを聞きます。器具のよさなのか、作業方法の工夫なのかも、提案者の経験に沿って確認します。
ここでの目的は、提案を採点することではありません。何を期待して採用するのかを、経営者と職人の間でそろえることです。
次に、経験者と今回の現場への当てはまりを検討する
効果が見えたら、以前の現場と今回の現場を分けて考えます。提案者だけでなく、今回の現場を把握する職長や経験者と、方法の内容を確認していきます。
検討の軸は、「前の現場でよかったから」ではなく、「今回も同じようによい結果につながると考えられるか」です。
その方法がうまくいったときの現場の状況はどうだったのか。今回の現場で、合わないと考えられる点はないか。作業単体ではよくても、全体の流れで見たときに無理はないか。こうした点を顔を合わせて確かめます。
期待できる効果があっても、今回の現場に合う根拠が乏しければ、採用判断を急がず、不足している情報を確認することが先です。 判断材料が足りないときは、その不足部分を整理して第三者に相談する選択肢もあります。
採用後は、説明どおりの作業になっているかを見る
採用時の判断は、現場で確かめて初めて次につながります。経営者も、実際の作業を確認する大切さを繰り返していました。
「その都度、現場を見て、どういう方法でやっているかを確認しないといけない」
確認したいのは、仕上がった結果だけではありません。実際にどのような方法で進めているのかも見ます。そのうえで、当初期待した作業のしやすさ、早さ、仕上がりにつながっているかを確かめます。
合っていれば続ける。合わない点があれば、経験者と相談して方法を修正するか、採用を見直す。任せることと、確認しないことを分けておくと、採用後の判断も修正しやすくなります。
まとめ
新しい施工方法は、「よい提案か」と「この現場に合うか」を分けて考え、採用後の確認まで含めて判断することが大切です。
他社を経験した職人が持ち帰る器具や工夫は、現場をよくするきっかけになります。その経験を活かすには、まず「楽・早い・きれい」のどこに効果があるかを聞くことです。
次に、今回の現場を知る経験者と、全体の流れまで見て検討します。採用した後も、実際の作業方法を現場で確かめます。
提案を歓迎する姿勢と、現場に合うかを慎重に見る姿勢は、両立できます。まずは目の前の提案について、期待する効果と採用判断の根拠を分けて整理するところから始められます。
職人の提案を活かすための判断材料の整理
「よさそうだけれど、うちの現場で採用してよいか迷う」という段階でも、判断材料の整理から相談できます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。施工方法の提案についても、期待している効果、現場への当てはまり、採用後に確かめたい点を整理するところからお手伝いします。必要に応じて、経験を持つ顧問の知見を借りることもできます。
「何を確認すれば判断できるのか、まだ整理できていない」という状態でも大丈夫です。無理にサービスの利用をおすすめすることはありませんので、自社の場合を考える整理先として、お気軽にご相談ください。