数名規模の建設業向け支援会社で起きた営業経験者の早期離職
営業経験者の早期離職を考えるときは、経験の有無だけでなく、営業先・開拓手法・入社後の役割・指導体制を分けて見る必要があります。
ある建設業向け支援会社では、営業経験のある人を採用しても、短期間で退職することが続いていました。社員は数名規模で、営業組織を整えている段階です。法人営業の経験者を中心に探しながら、若手にも採用の間口を広げていました。
同社の営業は、電話による新規開拓が中心です。主な相手は中小企業の経営者であり、自分で接点をつくり、個人として成果を出すことが求められていました。
採用した人の中には、営業代行会社の経験者や、管理職を務めていた人もいました。それでも定着しないケースがある一方、入社後に営業チームづくりの核になった人もいます。経歴に営業経験があることと、入社後の仕事が合うことは、同じではありませんでした。
これは施工を担う建設会社の離職事例ではなく、建設業を支援する会社での経験です。ただし、営業担当者を迎える際に、過去の経験をどのように自社の仕事と照合するかという判断軸は、中小建設会社にも応用できます。
営業経験や管理職の肩書だけでは見えない仕事内容とのずれ
早期離職につながっていたのは、営業経験の不足だけではなく、これまでの仕事と入社後に求められる仕事の違いでした。
同社が離職のきっかけとして多く挙げていたのは、電話による新規開拓でのつまずきです。面接で仕事内容は説明していたものの、営業代行会社などで担当者向けのアポイント獲得を経験していた人と、経営者に直接接点をつくる仕事との間には、期待のずれがあったと振り返っています。
同じ「法人営業」「テレアポ経験者」という言葉でも、誰に向けて、どのような接点をつくってきたかまでは分かりません。経験年数が採用条件を満たしていても、その経験が自社の業務にそのままつながるとは限らないのです。
管理職経験者については、別のずれがありました。前職では組織を管理する立場だった人を採用したものの、入社後は自ら営業活動を担うプレーヤーへの切り替えが必要でした。その役割変更がうまく進まず、短期間での退職につながったといいます。
ここで確認したいのは、管理職経験の価値が低いということではありません。将来任せたい役割と、入社直後に担当してもらう仕事を分けて合意できているかが重要です。 リーダー候補として迎える場合でも、当初は個人で新規開拓を担ってほしいのであれば、その順序まで伝える必要があります。
若手を受け入れた当時は営業を教える人も不足していた状況
仕事内容との適合性に加えて、採用時点の受け入れ体制も、定着を考えるうえで外せない要素でした。
同社の創業初期には、代表が一人で複数の新入社員を同時に受け入れた時期がありました。電話営業を任せる一方で、若手に十分な指導を行える状態ではなく、入社した人の一部が早期に退職しています。会社側も、若手にとって厳しい環境だったことを認め、受け入れ側の問題として捉えていました。
この振り返りから分かるのは、離職をすべて本人の意欲や適性で説明することはできない、という点です。若手の可能性を見込んで採用しても、仕事を教える人が不足していれば、期待した成長につながるまでの支えが足りません。
その後、同社は中堅層やリーダー候補の採用を優先し、その人たちを核として若手を育てる順序を考えていました。現在は社員が増え、最近入社した人の早期離職はほとんどないとのことですが、体制の変化だけで改善理由を断定することはできません。
それでも、採用計画の考え方としては明確です。「何人採るか」だけでなく、「誰が入社後を支えられるか」によって、先に採るべき人は変わります。
営業先と担当業務のすり合わせから始める採用と受け入れの見直し
見直しの出発点は、採用条件を厳しくすることではなく、自社の営業を具体的に伝え、本人の経験・希望と照合することです。 そのうえで、指導できる体制に合わせて採用の順序を決めると、仕事内容と受け入れの両面を整理できます。
営業経験を「相手・方法・役割」に分けて確認する
経験年数や前職の業種を見るだけでは、同社で起きたようなずれを捉えきれません。面接では、次の三つを自社の仕事内容と並べて確認することが有効です。
- 営業先:これまで接点をつくっていた相手は担当者か、経営者か。入社後に向き合う相手と何が違うか。
- 新規開拓の方法:電話などで自ら接点をつくっていたのか。自社で求める開拓方法を本人がどう受け止めているか。
- 入社後の役割:自ら営業活動を担うのか、チームを管理するのか。本人が希望する働き方と一致しているか。
判断の軸は、過去の仕事が自社と完全に同じかどうかではありません。違いがある場合に、その違いを本人も理解し、入社後の仕事として選ぼうとしているかです。
特に管理職経験者には、将来のリーダー登用への期待だけを伝えるのではなく、入社直後に自分で担ってほしい業務も併せて示します。「将来は組織を任せたい」と「まずは個人で開拓してほしい」は、別々にすり合わせる内容です。
会社の説明を、本人が働き方を選べる情報にする
同社では、代表による説明だけでなく、選考の途中で既存メンバーと会う機会を設けています。会社の方向性や価値観を伝え、最後に互いの役割への期待をすり合わせる進め方です。
この方法を生かすなら、会社の魅力を伝えるだけでなく、入社後の仕事内容も代表とメンバーの双方から伝えることが大切です。説明を聞いた候補者が、営業先や開拓方法、担当業務をどう理解したかまで確かめると、受け止め方の違いを見つけやすくなります。
本人が描く将来像も、仕事内容と結び付けて確認したい点です。同社は定着している人の特徴として、自分がどのような未来を描きたいかを持っていることを挙げていました。ただし、将来への意欲があるだけで、目の前の仕事が合うとは限りません。本人の希望と、当面担う仕事がつながっているかを見る必要があります。
会社への共感と、日々の担当業務への納得は、両方を確認することが大切です。 採用支援会社を使う場合も、この具体的な仕事内容や、過去にずれが生じた点まで共有することで、経験年数だけに頼らない紹介につなげられます。
若手を増やす前に、指導を担える人の確保を考える
若手採用を進めるか、中堅層を先に迎えるかは、年齢構成だけでなく、現在の指導体制で判断します。
同社が中堅層やリーダー候補を優先したのは、その後に若手を育てる段階へ進むためでした。自社でも、仕事を教える役割が代表に集中しているなら、若手を一度に増やすより、営業実務と育成の核になれる人を先に確保する考え方があります。
一方、中堅層を採れば自動的に育成が進むわけではありません。今回の管理職経験者の事例が示すように、その人自身が入社後の営業実務を担えるか、将来のチームづくりにも関わりたいかを確認する必要があります。
採用人数を先に決めるのではなく、入社後に誰が教えられるかを確かめ、その体制に合う経験層と受け入れ人数を考えることが、実行の順序です。
まとめ
営業経験者の早期離職を見直す鍵は、経験年数や肩書の確認から一歩進み、仕事内容の一致と、入社後に支えられる体制を確かめることです。
担当者向けと経営者向けでは、同じ新規開拓でも経験の中身が異なります。管理職からプレーヤーへの変更には、役割のすり合わせが必要です。また、若手の採用には、可能性を見極めることと同時に、指導できる人の確保が求められます。
まずは、自社の営業先、開拓方法、入社直後の担当業務を整理し、求人や面接で伝えている内容と照らし合わせてみてください。そのうえで、誰が入社後を支えるのかを確認すると、採用条件と採用順序の見直しがつながります。
営業採用と受け入れ体制を一緒に整理したいときに
「どんな営業経験者を採るか」と「採った人が働ける体制をどうつくるか」は、分けずに考えたい課題です。 自社では何を任せたいのか、中堅層と若手のどちらを優先するのかが、まだ定まっていない段階でも整理は始められます。
ネクスゲートは、中小建設会社・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。営業採用についても、求める役割と受け入れ体制を照らし合わせ、何から整えるかを一緒に考えます。
「うちの場合はどう考えればよいか」という段階からご相談いただけます。無理にサービスの利用をおすすめすることはありませんので、次の整理先としてご活用ください。