首都圏の仕事は増えているものの、施工を任せられる協力会社があと2社ほど必要な状態
岐阜県に拠点を置く、内装仕上げ工事を手がける会社の事例です。首都圏へ進出して約1年が経ち、現地の売上は年間3,500万円ほどまで伸びていました。
一方、千葉県と東京都内で複数の現場が重なり、社長が東海地方と首都圏を行き来しながら現場を回していました。首都圏で仕事を取る力はあるものの、施工を任せられる協力会社が足りません。
「今の仕事量なら、しっかり動いてくれる会社が2社あれば回せると思います。ただ、現在付き合っている2社のうち、1社には今後頼みにくい状況です」
必要なのは、単に床工事を受けられる会社ではありません。主な条件は次のとおりでした。
- 塩ビタイル、長尺材、カーペットなどを施工できる
- 材料と接着剤は元請側が支給し、施工のみを請けられる
- 一人親方や少人数の会社で、本人または自社の職人が施工する
- 首都圏の現場へ継続的に入れる
- 健康保険や労災保険など、必要な保険に加入している
壁紙、床、塗装を1社ですべて賄う必要はありません。「床だけ」「壁紙だけ」でも、その工種を確実に任せられればよいという考えです。
協力会社探しでは、対応工種を広く設定するより、自社が頼みたい施工範囲と取引条件を具体的にすることが出発点になります。
「床工事対応」という公開情報だけでは、塩ビ系床材や材料支給への対応可否まで判断できない状況
協力会社の候補自体は少なくありません。首都圏1都3県で、内装仕上げを主業とする小規模事業者を調べると、候補となり得る会社は1,600社を超えました。
ただし、候補数が多いことと、条件に合う会社がすぐ見つかることは別の話です。
たとえば、Webサイトや企業データベースに「床工事」「フロア工事」と書かれていても、実際には木質フローリングしか施工していないことがあります。店舗で多く使う塩ビタイル、長尺材、カーペットを頼もうとすると、対応範囲から外れてしまいます。
「フローリングと書いてあっても、木質のフローリングしかやっていない会社が多いんです。うちでは店舗工事が多いので、塩ビタイルやカーペットのほうが中心になります」
取引形態にも食い違いがありました。この会社は、メーカーに近い仕入先から材料を調達し、接着剤を含めて現場へ支給します。そのため協力会社に依頼したいのは施工部分です。
ところが、候補先によっては「施工だけでは利益を確保しにくいため、材料も一緒に仕入れさせてほしい」という条件でした。床材を施工できたとしても、材工でなければ受けない会社では取引条件が合いません。
さらに、従業員数が少ない会社でも、在籍しているのは営業担当者だけで、施工はすべて別の職人へ外注している場合があります。間に管理会社の利益が加われば施工費が上がりやすく、現場に入る職人が毎回変わると、技術や施工効率にもばらつきが生じます。
「床工事ができるか」だけで候補を選ぶと、床材の種類、施工のみの受注、自社施工体制という重要条件の不一致が面談後に分かります。
職種名と従業員数では、実際に現場へ来る職人や取引構造が見えないこと
条件の不一致が起きるのは、公開情報が間違っているからとは限りません。「床工事」「従業員3名」という情報だけでは、発注側が知りたい内容まで読み取れないためです。
実際に付き合い始めた会社からは、初回の現場には自社の職人が来たものの、2件目以降は外注の職人が入るようになりました。施工のみの発注で利幅が限られるため、自社の担当者を継続して動かしにくかった可能性もあります。
外注職人が現場へ入ること自体が問題なのではありません。発注側が管理を担えるのであれば、外注体制でも成り立つ場合があります。ただし、誰が施工するのかが事前の説明と異なり、現場ごとに品質が変わる状態は避けたいところです。
「外注の職人さんが来ること自体は構いません。管理はこちらでできます。ただ、どうしても当たり外れが出てしまうので、そこはなくしたいんです」
保険加入や現在の従業員数も、データベースだけでは確定できません。掲載情報が少し前のものであったり、一人親方と小規模法人の区分が曖昧だったりするためです。首都圏一円を施工エリアとしていても、現在の受注状況によっては新しい現場へ入る余力がないこともあります。
つまり、候補一覧は完成品ではなく、確認を始めるための母集団です。候補を数多く集めても、公開情報のまま社長が一社ずつ面談していれば、移動と現場管理の負担はさらに増えてしまいます。
会社概要は候補抽出に使い、施工範囲、取引条件、実際の施工者、保険加入、稼働余力は直接確認する、という役割分担が必要です。
対応床材と材料支給を入口に、電話確認・面談・試験発注の3段階で絞り込む方法
協力会社の選定は、候補抽出、事前確認、面談、初回施工の順に進めると整理しやすくなります。最初から社長が全社と会うのではなく、会う前に条件不一致を除外する設計がポイントです。
1.自社の必須条件と確認条件を分ける
まず、「合わなければ取引できない条件」と「面談で詳しく確かめる条件」を分けます。
この会社の場合、事前確認で外せない条件は以下です。
- 塩ビタイル、長尺材、カーペットのうち、必要な床材を施工できるか
- 材料と接着剤の支給を前提に、施工のみで受注できるか
- 東京、神奈川、千葉、埼玉の対象現場へ入れるか
- 健康保険や労災保険など、必要な保険への加入状況
- 新規案件を受けられる稼働余力があるか
一方、自社職人と外注職人の構成、現場へ入る職人の固定可否、施工品質などは、電話だけで決めず、面談や初回施工まで含めて確認します。
必須条件を先に決めておくと、知名度や施工実績ではなく、自社との取引適合性で候補を判断できます。
2.「床工事はできますか」ではなく、材料名と発注形態まで聞く
事前確認では、質問を具体的にします。「床工事に対応していますか」と聞くだけでは、相手が木質フローリングを想定しているのか、塩ビ系床材まで含めているのか分かりません。
確認時には、少なくとも次の内容まで伝えます。
- 主な現場は店舗などの内装工事である
- 塩ビタイル、長尺材、カーペットの施工が多い
- 材料と接着剤は発注側が現場へ支給する
- 依頼範囲は基本的に施工のみである
- 対象エリアは首都圏1都3県である
そのうえで、「どの床材を普段施工しているか」「施工のみの発注でも条件が合うか」を確認します。対応実績については、年間件数の多さだけでなく、自社が依頼する床材と現場種別に近いかを見ることが大切です。
3.自社施工か外注かではなく、実際に誰が来るかを確認する
「自社施工ですか」という質問だけでは、初回だけ自社職人が入り、その後は外注へ切り替わる可能性が残ります。面談では、もう一段踏み込んで確認します。
- 普段、現場へ入るのは代表本人、自社社員、外注職人の誰か
- 継続発注した場合も同じ職人が担当できるか
- 外注の場合、職人の選定と品質管理を誰が行うか
- 発注側が現場管理を担う場合、どこまで対応できるか
- 施工のみの単価でも継続して受けられるか
大切なのは、外注の有無だけで機械的に除外しないことです。施工体制が事前説明と一致し、担当する職人と管理責任が明確であれば、外注を含む体制でも選択肢になります。
4.面談だけで決めず、初回施工で継続可否を見る
技術面は、会社案内や面談だけでは判断しきれません。条件が合う候補には、まず1現場を依頼し、継続取引の可否を確認します。
見るべきなのは仕上がりだけではありません。
- 指定した床材を問題なく施工できるか
- 発注内容と現場での対応に食い違いがないか
- 予定した職人が現場へ入っているか
- 求める施工効率で進められるか
- 次回以降も同じ条件と体制で依頼できるか
初回が良くても、2件目から体制が変わることがあります。そのため、最初の1件だけでなく、次の発注条件や担当体制まで確認しておくと安心です。
5.候補数より、条件を満たす2〜3社をゴールにする
1,600社を超える母集団があっても、すべてと会う必要はありません。この会社が必要としていたのは、首都圏の現場を安定して任せられる2〜3社でした。
目標社数が決まれば、開拓活動の区切りも明確になります。候補抽出数や連絡件数を増やすこと自体を目的にせず、「必要な床材を施工でき、材料支給で継続発注できる会社が何社必要か」から逆算します。
協力会社開拓の成果はリストの件数ではなく、同じ条件で継続して現場を任せられる会社の数で測ることが大切です。
まとめ
協力会社探しで条件が合わない状態が続くときは、候補が少ないとは限りません。公開情報から判断できない条件を、面談まで確認していないことが原因になっている場合があります。
特に床工事では、「床工事対応」という表記だけで判断せず、次の内容を分けて確認する必要があります。
- 対応できる床材
- 材工か施工のみか
- 材料や接着剤の支給可否
- 実際に現場へ入る職人
- 自社施工と外注の構成
- 対応エリアと現在の稼働余力
- 保険加入状況
- 継続発注時の施工体制
候補抽出では広く集め、事前確認では条件で絞り、面談と初回施工では技術と継続性を見る。この順序にすると、社長が会うべき相手を絞り込めます。
必要な協力会社が2社なら、何百社もの情報を詳しく読むことより、その2社に求める条件を具体的な質問へ落とし込むことが先です。条件が明確になれば、協力会社探しは運任せではなく、再現性のある選定業務へ変えていけます。
自社に合う協力会社の条件から整理したい方へ
「床工事を頼める会社は見つかるが、材料支給や施工体制が合わない」「面談してから条件の違いが分かる」といった場合は、募集先を増やす前に選定条件と確認手順を整理する余地があります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を横断して整理し、協力会社の候補抽出、確認項目の設計、アプローチ、面談設定まで実行を支援しています。
「うちの場合は何を必須条件にすべきか」「どこまで事前に確認すればよいか」という段階でも構いません。状況を伺ったうえで、無理にサービスを勧めることはありませんので、次の整理先として気軽にお声がけください。