国土交通省は、令和8年5月分の「内航船舶輸送統計月報の概要」を公表しました。総輸送量は前年同月比で増加し、建設業に関係の深い砂利・砂・石材、セメント、鉄鋼などの輸送動向も示されています。
公表内容 | 内航船舶輸送統計月報の概要(令和8年5月分) |
公表日 | 令和8年8月27日 |
総輸送量 | 24,121千トン(前年同月比4.2%増) |
総輸送量(トンキロ) | 12,639百万トンキロ(前年同月比7.7%増) |
燃料消費量 | 180,240千リットル(前年同月比4.3%増) |
航海距離 | 10,616千キロメートル(前年同月比6.6%増) |
輸送効率 | 内航船舶合計40.31% |
今回の統計は、建設業向けの制度改正や補助金情報ではありません。ですが、建設資材の一部は内航船舶によって動いており、輸送量や燃料消費の変化は、資材調達・納期・運搬費を見るうえでの補助線になります。
建設資材に関係する品目は、動きが分かれている
主要10品目のうち、建設業に関係が深いものとして、砂利・砂・石材、石灰石、セメント、鉄鋼などがあります。
トンベースの前年同月比では、次のような動きでした。
品目 | トンベース前年同月比 |
|---|---|
砂利・砂・石材 | 0.1%減 |
石灰石 | 1.0%減 |
セメント | 4.8%減 |
鉄鋼 | 3.6%増 |
一方、トンキロベースでは、砂利・砂・石材が18.5%増、鉄鋼が4.0%増となっています。セメントは2.7%減でした。
ここで大事なのは、「輸送量が増えた・減った」だけで建設需要や資材価格を直接判断しないことです。 トン数とトンキロでは意味が違います。トン数は運ばれた量、トンキロは「どれだけの量を、どれだけの距離運んだか」を表します。
たとえば、砂利・砂・石材はトンベースではほぼ横ばいに近い一方、トンキロベースでは増えています。これは、少なくとも統計上は、量だけでなく輸送距離側の変化も含めて見る必要があるということです。
中小建設業が見るべきは「価格」そのものではなく「物流の前提」
この統計は資材価格の統計ではありません。したがって、今回の数字だけで「セメント価格が下がる」「鉄鋼価格が上がる」といった判断はできません。
ただし、経営実務としては、資材価格を決める背景に、輸送・燃料・距離・需給の変化があることは押さえておきたいところです。
今回の発表では、燃料消費量が前年同月比4.3%増、航海距離が6.6%増となっています。これもすぐに自社の運搬費へ直結すると断定はできませんが、物流事業者や資材商社のコスト環境を見る材料にはなります。
中小建設会社にとって重要なのは、次の確認です。
- 主要資材の見積単価に、運搬費や燃料関連費がどう含まれているか
- 現場ごとに、資材単価と運搬費を分けて把握できているか
- 長期案件で、資材・運搬費の変動を契約や見積条件に織り込めているか
- 特定の仕入先・ルートに依存しすぎていないか
特に、公共工事・民間工事を問わず、受注時点と施工時点に時間差がある案件では、「受注した時の原価」と「実際に仕入れる時の原価」がずれるリスクがあります。
見積では「材料費」だけでなく「運ぶコスト」を分けて考える
建設業の見積では、材料費の上昇に目が向きやすい一方で、運搬費や搬入条件の変化が粗利を削ることがあります。
今回のような物流統計を見るときは、細かな数字をすべて追うよりも、自社の見積構造に物流コストの逃げ場があるかを確認するほうが実務的です。
たとえば、次のような点です。
- 材料単価に運搬費込みなのか、別建てなのか
- 遠方現場で追加運搬費を見込んでいるか
- 小口・分納・時間指定などの条件を見積に反映しているか
- 協力会社や仕入先からの値上げ要請を、案件別に記録しているか
- 原価実績で、材料費と運搬関連費を後から検証できるか
「材料が高い」で終わらせず、どの品目で、どの現場で、どの条件が利益を圧迫しているのかを見えるようにすることが重要です。
今回の統計から考えたい経営上の打ち手
今回の発表は月次統計です。単月の数字だけで大きな経営判断をするものではありません。
それでも、建設会社の経営に引き寄せるなら、次の3つは確認しておきたいポイントです。
1つ目は、主要資材の仕入単価と運搬条件を定期的に見直すことです。セメント、鉄鋼、砕石、砂、石材など、自社の工事で使用頻度の高い品目から確認すると実務に落とし込みやすくなります。
2つ目は、見積書・実行予算・原価実績のつながりを強くすることです。見積時に見込んだ材料費と、実際の仕入・運搬費の差を後から確認できなければ、次の見積精度は上がりません。
3つ目は、仕入先との対話材料を持つことです。統計をそのまま交渉材料にするというより、資材商社や協力会社からの説明を理解するための基礎情報として使うイメージです。
建設業の利益管理は、現場ごとの努力だけでは限界があります。資材・物流・燃料・納期の変化を、経営側が見積条件と原価管理に反映できるかが、これからますます大事になります。
自社の見積・原価管理にどう反映するかを整理する
今回の統計は、すぐに何かの届出や申請が必要になるニュースではありません。ですが、資材物流の変化を見ながら、見積・実行予算・原価実績の管理を少しずつ整えていくきっかけになります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社がものづくりに集中できるよう、販路拡大、資金調達、人材確保、組織活性化、原価管理、デジタル活用まで横断して、経営課題の整理と実行を支援しています。
「うちの場合は、材料費と運搬費をどこまで分けて見るべきか」「見積と実際原価のズレをどう管理すればよいか」といった段階でも構いません。無理な営業はいたしませんので、考えを整理する相手が必要なときは、お問い合わせはこちらからご相談ください。