国土交通省は令和8年10月21日、住友建機株式会社からアスファルトフィニッシャ「HA60W-10」などについて改善対策の届出があったと発表しました。
内容は、走行用コントローラの制御設計に関するものです。エンジンを始動して最初の走行操作を行った際に、走行用油圧モータがニュートラル相当の状態となることがあり、下り坂で走行を開始するとエンジンブレーキが効かず、運転者が意図した速度より速く走行するおそれがあります。
届出者 | 住友建機株式会社 |
改善対策届出番号 | 722 |
届出日 | 令和8年10月21日 |
改善対策開始日 | 令和8年10月21日 |
対象車種 | 住友 HA60W-8、HA60W-10/HANTA F60W4、F60W5 |
対象台数 | 計1,417台 |
不具合部位 | 動力伝達装置 |
不具合件数 | 5件 |
事故の有無 | 無し |
改善内容 | 全車両、走行用コントローラを対策プログラムに書き換え |
まず確認したいのは「自社の機械が対象か」です
今回の対象は、舗装工事で使われるアスファルトフィニッシャです。
対象車の範囲は次のとおりです。
車名 | 型式 | 通称名 | 製作期間 | 対象台数 |
|---|---|---|---|---|
住友 | WDR-A60WD | HA60W-8 | 平成25年3月6日〜平成29年8月23日 | 520台 |
住友 | YDR-A60WE | HA60W-10 | 平成29年6月12日〜令和8年9月1日 | 869台 |
HANTA | WDR-F60W4 | F60W4 | 平成26年8月5日〜平成29年7月29日 | 10台 |
HANTA | YDR-F60W5 | F60W5 | 平成29年10月13日〜令和7年10月23日 | 18台 |
ここで大事なのは、対象は自社保有機だけとは限らないという点です。
リース機、レンタル機、協力会社が現場に持ち込む機械もあります。舗装会社であれば、現場の朝礼前に「うちの機械は大丈夫か」と確認するだけでは足りない場合があります。
国交省の資料では、改善対策対象車の車台番号の範囲には、対象とならない車両も含まれているとされています。つまり、型式や製作期間だけで決めつけず、車台番号・シリアル番号で確認することが必要です。
現場で注意したいのは「始動直後」と「下り坂」です
今回の不具合は、常に走行不能になるという話ではありません。
ポイントは、エンジン始動後、最初の走行操作を行ったときです。そこで走行用油圧モータがニュートラル相当の状態になることがあります。
その状態で下り坂から走行を始めると、エンジンブレーキが効かず、運転者が思っている速度より速く動くおそれがあります。
舗装現場では、わずかな勾配でも機械の動き方が変わります。現場内には作業員、誘導員、ダンプ、ローラー、材料が同時に動いています。だからこそ、「事故の有無は無し」とされていても、現場運用では早めに共有したい内容です。
改善内容はコントローラのプログラム書き換えです
改善措置の内容は、全車両の走行用コントローラを対策プログラムに書き換えるというものです。
また、使用者については全使用者を把握しており、個別訪問により通知するとされています。住友建機のホームページにも掲載される予定です。
ただし、中古で取得した機械、リースやレンタルで使っている機械、協力会社が持ち込む機械では、情報の届き方に差が出ることがあります。
経営側・管理側としては、次の確認が現実的です。
- 設備台帳で、HA60W-8、HA60W-10、F60W4、F60W5の有無を確認する
- 車台番号・シリアル番号を販売店または届出者に確認する
- リース会社・レンタル会社に対象機かどうかを確認する
- 協力会社の持込機械も、現場入場時に確認項目へ入れる
- 対策プログラム書き換えが終わるまで、始動直後の下り坂発進に注意喚起する
特に舗装工事は、工程が詰まりやすい仕事です。「今日の施工を止めたくない」という気持ちは、現場なら自然に出ます。
それでも、こういう改善対策は後回しにしない方がいいです。小さな確認で、大きなヒヤリを減らせる可能性があります。
これは「機械管理の仕組み」を見直すきっかけにもなります
今回の発表は、特定機種の改善対策です。
ただ、中小建設業にとっては、もう一つ見ておきたい論点があります。自社の機械情報を、すぐ取り出せる状態にできているかです。
たとえば、次のような場面です。
「この機械、いつ買ったっけ」
「シリアル番号はどこに控えてある?」
「レンタル機の改善対策は、誰が確認する?」
「協力会社の持込機械まで、現場で把握できている?」
こうした確認が属人的になっている会社は少なくありません。ベテランの番頭さんや機械担当者の記憶に頼っている。紙のファイルに残っている。写真はスマホの中にある。現場ではよくある風景です。
でも、改善対策やリコール情報が出たときは、スピードが大事です。機械名、型式、車台番号、所有区分、使用現場、対策状況を一覧で見られるだけで、初動はかなり楽になります。
大がかりなシステムでなくても構いません。まずはExcelやスプレッドシートでも十分です。
大切なのは、情報が一人の頭の中だけにないことです。
舗装会社は「安全」と「工程」を同時に守る視点で動きたいです
今回の改善対策は、事故の報告は無しとされています。
だからこそ、落ち着いて確認できます。慌てる必要はありません。一方で、対象機を使う会社にとっては、現場の安全と工程を守るために早めの確認が必要です。
特に見るべき点は、次の3つです。
- 対象機を使っているか
- 対策プログラムの書き換えが済んでいるか
- 済むまでの間、現場で注意事項が共有されているか
この3つだけでも、現場の安心感は変わります。
建設業の安全管理は、特別なことの積み重ねではありません。多くは、こうした一つひとつの確認です。
「知っていたか」
「共有したか」
「記録に残したか」
その差が、現場を守ります。
自社の機械管理を一度整理しておく
今回のような改善対策をきっかけに、保有機械・リース機械・協力会社の持込機械まで含めて、管理の流れを見直しておくと後が楽になります。
「うちは台帳まではあるけれど、更新が止まっている」
「現場ごとの機械情報が管理部門に集まっていない」
「安全書類、原価管理、機械管理が別々になっていて見えにくい」
こうした状態は、多くの会社で起きます。責任感の問題ではありません。日々の現場が忙しすぎるのです。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。建設企業の持続的成長を支援し、ものづくりに集中できる建設業界へ近づけるための伴走です。
「うちの場合は、何から整理すべきか」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、必要な範囲で一緒に整理できます。