前提

社員6名弱、現場担当3名、自社職人ゼロで施工を回す内装工事会社の現在地

三重県を中心に工事を手がける、社員6名弱の内装工事会社があります。現場に出るのは社長を含めて3名ほど。自社で雇用する職人はおらず、実際の施工は一人親方や協力会社の力を借りて回しています。

今後を考えれば、仕事は増やしたい。既存顧客からより多く受注する道もあれば、新しい取引先を開拓する道もあります。

一方で、社長は見積もりや顧客対応、現場のフォローなど、実務の7〜8割を今も自分で担っています。

「立場は変わっても、今までどおりの仕事を自分でやっているだけなんです」

社員に任せたい気持ちはあります。しかし、既存顧客への対応や見積もりを完全には任せきれません。現場で気になることがあれば、社長が取引先の監督と話し、社員との間に入ってフォローしています。

仕事を増やす余地はあっても、受注後の施工と管理を担う余力が十分にあるとは限らない状態です。

課題

既存顧客の深耕と新規開拓を同時に進めても受注を消化できない構造

既存顧客の深耕と新規開拓を同時に進めるには、それぞれを担う人員が必要です。

新しい仕事を取れても、既存案件を担当している職人や協力会社を振り向けるしかなければ、今度は既存顧客への対応が薄くなります。施工人員を確保できなければ、せっかく受注の機会が生まれても断らざるを得ません。

「両方やりたい」という経営判断自体は自然です。ただし、既存案件と新規案件を別々に回せる体制がなければ、営業の成果がそのまま現場の負荷になります。

特にこの会社では、次の条件が重なっていました。

  • 社長が現場対応や見積もりを多く抱えている
  • 現場担当者が3名ほどに限られている
  • 自社職人がおらず、施工力を一人親方や協力会社に依存している
  • 社内に教育担当者がいない
  • 社長以外に、社員や現場をまとめる管理者が定まっていない

この状態で仕事だけを増やすと、受注後の調整が社長へ集中しやすくなります。仕事が増えたのに、会社としての成長施策へ使える時間は減る。そんな逆転が起こりかねません。

営業を始める前に見るべきなのは案件数ではなく、受注した仕事を誰が施工し、誰が管理し、誰が問題を収めるのかという受注余力です。

背景

「仕事は頼むもの」という体制と社長のフォローで成り立ってきた現場

この会社には、自社で職人を育てるという感覚がもともと強くありませんでした。

「自分のところで職人を育てるという感覚がないんです。仕事は頼むもの、という流れで来ています」

内装工事は関わる職種が多く、一人親方や協力会社へ施工を依頼する体制も珍しくありません。職人が十分にいた時代には、必要なときに外部へ頼む方法で事業を回せました。

ところが、人手不足が進むと状況が変わります。一人親方にはそれぞれの仕事の進め方があり、取引先が専属のように考えていても、条件や稼働状況によって別の現場へ行くことがあります。仕事を受けた時点で、いつもの施工人員を確保できるとは限りません。

また、外部の職人に自社の方針どおりの教育や指導を求めることにも難しさがあります。

「みんな個人事業主なので、その人なりのやり方があります。こちらが細かく言いすぎれば、ほかへ行ってしまうかもしれません」

社内の若手育成にも似た課題があります。社長自身は、親世代の背中を見ながら仕事を覚えてきました。そのため、社員にも「仕事ぶりを見て感じてほしい」という思いがあります。

ただ、社員側は仕事の目的や優先順位まで同じように理解しているとは限りません。やりたい仕事と避けたい仕事が分かれ、対応の抜けが出る。そのたびに社長が前へ出て、取引先との関係が悪くならないようにフォローしていました。

「取り繕いながらやっている自分もよくないと思うんです。でも、強く言って関係が悪くなるのも避けたいんです」

社長のフォローは目の前の問題を収めますが、続けるほど社員が判断する機会と、社長が経営へ移る時間が減っていきます。

営業、人材育成、業務改善のどれも必要です。しかし、全部を同時に社長が動かそうとすれば、日常業務に押し戻されます。優先順位を決めるには、まず社長が何を抱えているかを見えるようにする必要があります。

解決

受注余力と教育体制を確認し、業務の棚卸しから成長施策を並べ替える進め方

最初に行いたいのは、営業施策を選ぶことではなく、現在の受注余力を確認することです。

判断材料は、主に次の4点です。

  1. 今の人員で、既存案件を維持しながら追加受注をどこまで施工できるか
  2. 社長が見積もり、顧客対応、現場フォローにどれだけ時間を使っているか
  3. 未経験者や若手を採用した場合、誰が日常的に教育するか
  4. 社長以外に、現場と人をまとめられる管理者が何人いるか

この4点を確認すると、先に進めるべき施策が見えやすくなります。

1.社長の業務を棚卸しする

社長が担っている仕事を、見積もり、顧客連絡、現場確認、社員への指示、問題対応などに分けます。そのうえで、次の3つに整理します。

  • 社長にしかできない仕事
  • 社内の誰かへ移せる仕事
  • やり方を見直せば減らせる仕事

この会社では、社員の仕事に抜けが出ると、社長が取引先へ先回りしてフォローしていました。まずは、どの場面で社長が入っているのかを洗い出すことが出発点になります。

「社長しかできない」のではなく、「任せる基準や手順が決まっていないため社長が続けている仕事」がないかを確認します。

2.教育担当者の有無で採用の順番を決める

教育できる人と時間があるなら、未経験者や若手を採用し、現場人員を増やす選択肢があります。

一方、教育担当者がおらず、社長にも教える余裕がない状態で採用すると、新しく入った人を現場へ送り出せません。既存社員の負担が増え、社長のフォローもさらに重くなります。

その場合は、若手職人の採用より先に、社長の業務を引き受けられる経験者や、現場と社員をまとめる中間管理役を置く方法が考えられます。

採用人物像も「経験10年以上」のように広く設定するのではなく、任せたい業務から具体化します。

たとえば、社長が抱える見積もりと現場調整を任せられれば、社長は教育へ回れます。それなら、募集すべきなのは単なる経験者ではなく、見積もり、顧客対応、現場管理のうち何を担える人なのかを明確にした人材です。

採用の優先順位は、足りない人数ではなく、社長の時間と教育機能のどちらを先につくるべきかで決めます。

3.管理者を一人置き、社長の直接対応を減らす

社員数が少ない会社でも、社長が全員へ直接指示し、すべての問題に対応する形には限界があります。

社長と考え方を共有できる人を一人置き、その人が現場担当者をまとめる形にすると、社長のコミュニケーション先を絞れます。日常の指示やフォローは管理者が担い、社長は評価面談や重要な判断に集中する形です。

現時点で適任者がいなければ、既存社員を育てるのか、経験者を採用するのか、外部の力を借りるのかを比較します。

見るべきなのは肩書ではありません。

  • 社長の考えを理解しているか
  • 現場の進捗を確認できるか
  • 仕事の目的を社員へ説明できるか
  • 問題を抱え込まず社長へ共有できるか

こうした役割を果たせるかどうかです。

4.営業は空いた施工・管理余力に合わせて絞る

社内を整えることは、営業を止めることではありません。受けられる仕事の条件を明確にし、営業先を絞るという考え方です。

既存顧客から人員を増やせば仕事をもらえる状態なら、まず既存顧客の案件量と必要人員を確認します。既存取引だけでは伸びしろが限られるなら、新規開拓を検討します。

ただし、両方を一度に広げるのではなく、施工人員と管理者の余力に合わせて順番をつけます。

社内整備を先行するか、採用や営業を優先するかは、「受注後に誰が回すのか」まで決められる方から着手するのが現実的です。

まとめ

仕事を増やしたいとき、既存顧客の深耕と新規開拓へ目が向くのは自然です。しかし、人手不足の会社では、仕事を取る力と受注後に回す力を分けて考える必要があります。

今回の会社では、現場担当者が3名ほどで、自社職人はゼロ。教育担当者もおらず、社長が実務の7〜8割を担っていました。この状態では、営業を増やす前に社長の業務を棚卸しし、社員へ移せる仕事と減らせる仕事を整理することが先になります。

そのうえで、次の順番を検討します。

  1. 現在の受注余力を把握する
  2. 社長の業務負荷を見えるようにする
  3. 教育担当者と現場管理者の有無を確認する
  4. 既存人材の育成、管理人材の採用、現場人員の採用から優先策を選ぶ
  5. 空いた施工・管理余力に合わせて営業先を絞る

成長施策の順番は、売上をどこまで増やしたいかだけでなく、社長が現場から離れるために何が足りないかを起点に考えると整理しやすくなります。

自社に合う「社内整備と営業の順番」を整理したい方へ

社内整備、既存人材の育成、採用、営業は、それぞれがつながっています。どれか一つだけを見るよりも、受注後の施工体制や社長の業務負荷まで含めて整理することが大切です。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。

「うちの場合は採用と社内整備のどちらが先か」「何から棚卸しすればよいかわからない」という段階でも問題ありません。建設業界の経営者の懐刀として、ものづくりに集中できる体制づくりを一緒に考えます。

無理に施策や契約を勧めることはありません。次の整理先の一つとして、気軽にお声がけください。

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