前提

職人を中心とする10名弱の体制で、工事と不動産の両方を手がける会社の現在地

関東圏でリフォーム工事を手がける、10名弱の会社があります。職人が中心の組織で、グループでは不動産の買取再販も展開しています。

自社で物件を仕入れ、改修して販売する案件がある一方、外部の工務店やビルダー、大手不動産会社からも工事を受注しています。取引先が一社だけに偏っているわけではありません。仕事の入り口は複数あります。

そのうえで、社長は次の成長を考えていました。

「工事の種類にも、取引先にも、もう少し幅を持たせたいと思っています」

ただし、現在の体制には余力がありません。

「今の人数で仕事がさらに増えたら、多分足りないですね」

販路を広げたい一方、受注が増えると現場を回せない。採用と販路開拓のどちらを先に進めるかが、成長の入口で詰まりやすい状態です。

課題

受注の入口を増やしても、社長の分身がいなければ現場を引き受けきれない状態

この会社で不足していたのは、単純な作業人数だけではありませんでした。

社長が求めていたのは、職人経験や監督経験があり、必要に応じて営業にも動ける人です。現場と取引先の間に立ち、状況に合わせて動ける中堅層でした。

「職人でもあるけれど、職人だけではない。もう少しフットワークの軽い人が一人いると助かります」

「もう一人、自分の分身のような人がいれば、売上は伸びると思います」

社長自身が、案件の判断、取引先対応、現場の調整を担っていると、販路を増やすほど社長の仕事も増えます。新しい取引先から見積依頼が来ても、現場確認や工程調整に動けなければ、受注までつながりません。

仮に受注できても、管理する人がいなければ既存案件にしわ寄せが出ます。

必要なのは「営業を先にするか、採用を先にするか」という二者択一ではなく、受注を増やしたときに最初に詰まる役割を見極めることです。

この会社では、職人の人数に加え、社長の代わりに現場と顧客の双方を見られる人材がボトルネックになっていました。そのため、優先順位は採用側に寄ります。

ただし、採用が決まるまで販路開拓を完全に止める必要はありません。止めるべきなのは、現場の受入能力を超える受注です。将来の取引候補を探し、関係をつくる活動まで止めてしまうと、人が入った後に仕事が足りなくなる可能性があります。

背景

若手・中堅の応募が少なく、採用完了を待ってから営業を始めると成長が止まりやすい事情

この会社では、職人と現場管理の求人をすでに掲載していました。しかし、反響は多くありません。

「応募はあまりないですね。年配の方からは来ることがあります」

欲しいのは、現場を理解しながら社長の右腕として動ける若手・中堅層です。しかし、その層からの反応が弱い状態でした。

ここで悩ましいのが、採用時期を正確に読めないことです。募集を始めても、応募、面接、入社、現場への適応までには時間がかかります。採用できた人がすぐに社長の分身になるとも限りません。

一方、販路開拓も始めてすぐ工事が決まるわけではありません。候補企業を探し、自社の施工領域を伝え、見積や小規模案件を経て、継続発注につながるまでには一定の時間があります。

つまり、採用と販路開拓には、どちらにも準備期間があります。

「採用できるまで営業しない」「仕事が決まってから人を探す」のどちらかに振り切ると、採用と受注の時間差が大きくなります。

もう一つ確認したいのが、協力会社で補える範囲です。自社職人を増やす方針であっても、繁忙期や特定工種だけ協力会社に頼れるなら、販路開拓を少し先行させやすくなります。

反対に、品質管理や顧客対応を社長以外に任せられず、協力会社の手配まで社長に集中するなら、外注を増やしても詰まりは解消しません。

人数だけでなく、「受注判断」「現場管理」「施工」「顧客対応」のどこが不足しているかで、採用と販路開拓の順番は変わります。

解決

採用を先行させながら、受注見込みに合わせて販路開拓の強度を段階的に上げる進め方

この会社のように、仕事が増えれば現在の人数では回らず、社長の右腕も不足している場合は、採用を一歩先に置く進め方が合います。

ただし、営業活動をゼロにするのではありません。採用の進捗と現場の余力に合わせ、販路開拓を段階的に進めます。

1.最初に「あと何件受けられるか」を工事単位で確認する

感覚的な「忙しい」「人が足りない」だけでは、営業をどこまで進めてよいか判断しにくくなります。まずは今後3〜6カ月を見て、次の点を確認します。

  • 既存案件で職人が埋まる時期
  • 社長が現場管理できる件数
  • 現在の人員で追加できる工事量
  • 協力会社に任せられる工種と件数
  • 新しい取引先から受けたい工事の規模

採用人数を先に決めるのではなく、取りたい仕事と不足する役割から必要人員を逆算します。

たとえば、施工人数は足りていても現場管理が足りないなら、職人を増やすだけでは受注余力が広がりません。反対に、社長が管理できても施工班が組めないなら、職人または協力会社の確保が先です。

2.「分身のような人」を一つの求人に詰め込みすぎない

監督経験、職人経験、営業経験、フットワークの軽さをすべて満たす人は多くありません。理想像をそのまま求人条件にすると、候補者がさらに限られます。

そこで、任せたい仕事を分けて考えます。

  • 入社時点で必須となる経験
  • 入社後に覚えてもらえる業務
  • 当面は社長が持ち続ける判断
  • 事務担当や協力会社に分けられる仕事

たとえば監督経験を必須にし、営業は既存取引先への同行から覚えてもらう方法があります。職人経験を重視し、工程管理は小規模案件から任せる考え方もあります。

万能な一人を待つより、社長から最初に切り離したい役割を明確にした方が、採用対象を現実的に設定できます。

3.販路開拓は「候補づくり」と「受注」を分ける

採用活動中でも、将来付き合いたい工務店、ビルダー、不動産会社を整理することはできます。自社が得意とする工事や対応地域、受けやすい案件規模も伝えられます。

一方、すぐに大型案件を受けるかどうかは別の判断です。

採用前は候補企業との接点づくりや小規模案件の相談までにとどめ、人員の見通しが立った段階で見積件数を増やす。入社時期が確定したら、継続案件の獲得に向けた動きを強める。この順序なら、営業を止めずに受注超過も避けやすくなります。

販路開拓は先に仕込み、受注量は人員の確保状況に合わせて調整する。この分け方が、採用と営業の時間差を埋めます。

4.採用と販路開拓の優先度を月ごとに見直す

優先順位は一度決めて終わりではありません。応募状況、既存案件、新規の引き合いによって変わります。

判断の目安は次の通りです。

  • 応募がなく、現在の稼働も高いなら採用活動を優先する
  • 採用候補者の入社が見えてきたら販路開拓を強める
  • 引き合いが増えたら、協力会社を含めた施工体制を再確認する
  • 既存案件だけで稼働が埋まるなら、新規受注の時期を調整する

採用と販路開拓を別々の施策にせず、「いつ、誰が入り、どの仕事をどれだけ受けるか」という一つの計画で管理することが大切です。

まとめ

仕事を増やしたいのに人が足りない会社では、営業か採用のどちらか一方を完全に先行させると、時間差が生まれやすくなります。

今回のように、現在の人数では追加受注を回しにくく、社長の分身となる中堅人材も不足している場合は、採用を一歩先に置くのが自然です。同時に、販路候補の整理や関係づくりは進めておきます。

判断するときは、次の4点を確認します。

  • 現在の人員で受けられる追加工事量
  • 既存案件がどの程度先まで見えているか
  • 欲しい人材の採用と育成にかかる期間
  • 協力会社で補える工種と管理範囲

採用を先に、販路開拓を後に、と固定する必要はありません。受注見込みに合わせ、採用、協力会社の確保、販路開拓の強度を少しずつ動かす進め方が現実的です。

自社に合う採用と販路開拓の順番を整理したい方へ

「今の体制でどこまで受けられるのか」「採用するなら職人と現場管理のどちらが先か」「協力会社で補う範囲をどう決めるか」。このあたりは、会社の施工領域や既存案件によって答えが変わります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、販路開拓、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。

何から整理すべきか決まっていない段階でも、現在の稼働状況と今後取りたい仕事から、採用と販路開拓の順番を一緒に組み立てられます。無理にサービスを勧めることはありませんので、自社の場合を考えるための整理先としてご活用ください。

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