十数名の職人と手間請けを軸に、工事量が安定している内装工事会社
一次請けへの移行や売上拡大を目指す前に、今の請負形態で何を得られているかを確かめたいところです。 仕事と職人数の釣り合いが取れている会社では、その安定を保つこと自体が、十分に意味のある経営方針になります。
ある内装工事会社では、十数名の職人が軽量下地・ボードなどの施工を担い、建設事業の売上は年間で1億円台後半にあります。首都圏のゼネコン系の現場に二次請けとして入り、材料の手配や現場全体の管理は上位の一次請け会社が担っています。自社は、決められた施工範囲を仕上げる手間請けが中心です。
経営者は、現在地をこう話しています。
「今は、取引先からの仕事と職人の人数が、ちょうど合って安定しています」
職人をすぐに増やす予定はなく、毎月の工事量にも大きな上下はありません。一方で、今の体制で対応できる仕事があれば、もう少し受けたい気持ちもあります。
つまり、仕事がなくて困っているわけでも、拡大に後ろ向きなわけでもありません。材料や管理の負担を増やさず、今の職人体制に合う仕事を安定して確保したい、という相談です。
一次請けで増える受注額と、材料・管理の負担をどう比べるか
判断したいのは、請負の階層を上げることではなく、増える利益に対して、引き受ける仕事と責任が見合うかどうかです。
この会社の経営者は、「一次請けに近づけばよい」とは考えていませんでした。
「元請けから直接もらうと、材料の仕入れなど、やることがたくさんありますよね。そこまではしたくないので、二次請けがいいです」
ここで分けておきたいのが、一次請け・二次請けという取引上の位置と、材料を含めて請けるか、施工の手間を中心に請けるかという業務範囲です。二次請けであれば必ず材料を持たずに済むわけではなく、一次請けであれば一律に同じ管理業務が生じるわけでもありません。実際に誰が何を担うかは、工事ごとの取り決めを確認する必要があります。
この会社が評価しているのは、二次請けという呼び名そのものではありません。材料調達と現場全体の管理を上位会社が担い、自社が施工に集中できる分担です。
経営者自身も、「利益は少なくても、材料のリスクを持たずに済む」という捉え方をしています。ただし、これは利益額を比較して検証した結果ではなく、現在の負担との釣り合いについての実感です。
受注額が増えることと、会社に残る利益や対応余力が増えることは、分けて考える必要があります。 材料を含む受注に変えるなら、その分の売上だけでなく、仕入れや数量計算、管理にかかる負担まで比較して初めて、移行する意味が見えてきます。
材料の数量計算を担う上位会社の苦労と、対応できる規模への意識
手間請けを続けたい背景には、材料を扱う上位会社の苦労を身近に見てきた経験があります。
「現場の管理も材料も、上の会社が全部やってくれるので、うちは施工をするだけです」
そう話す一方で、上位会社では材料の数量計算を間違えるなど、さまざまな問題が起きているとも聞いていました。材料を持つことで得られる収益だけでなく、それを成立させるための仕事があることを、取引の中で見ているわけです。
自社が施工に集中できるのは、その前後の仕事を上位会社が引き受けているからです。その分担を変えれば、今まで社内になかった仕事も自社側に移ります。現在の職人数で施工量を増やせるかという話と、材料や管理まで担えるかという話は、同じではありません。
また、経営者が大事にしているのは、売上の最大化よりも、問題が起きたときに対応できる規模です。
「安定して続けられて、万が一何かあっても対応できる。そのくらいに収めたいです」
当面は現在に近い売上規模を安定して維持し、それ以上の拡大は望んでいません。仕事を増やしたい気持ちと、会社を大きくしすぎたくない気持ちは、矛盾するものではありません。
この会社に必要なのは、受注を際限なく増やすことではなく、今の分担と職人体制に合う工事を選ぶことです。
役割分担と職人の対応量から、自社に合う受注条件を決める進め方
まずは現在の手間請けを基準に、利益、材料、管理、対応余力の四つを整理すると、一次請けを目指すかどうかも判断しやすくなります。 最初から請負形態の変更を決める必要はありません。
現在の受注で、何が利益と安定を支えているかを確認する
比較の出発点は、今の工事です。受注額だけでなく、その施工に何人が何日入り、どの程度の人件費がかかり、いくら残るかを確認します。
この会社では、日単位の人件費や施工範囲をもとに仕事を受ける話が出ていました。そのため、まずは現在の受注単価と、実際に必要だった人数・日数を照らし合わせることが、利益の取り方を確認する入口になります。
そのうえで、材料を含む受注を検討するなら、材料費と調達・数量計算の負担を加えて比較します。現場管理の担当を自社で置く必要があるなら、その体制も含めて考えます。
「材料込みなら売上が増える」ではなく、「材料と管理を引き受けても、今より利益と余力が残るか」が判断軸です。 比較の結果、今の手間請けのほうが自社に合っていると分かれば、無理に変える必要はありません。
上位会社と、自社が担う範囲を言葉にする
手間請けを続ける場合も、「いつも上の会社がやってくれる」という理解を、具体的な役割に置き換えておくと、受注判断がしやすくなります。確認したいのは、次のような点です。
- 材料の数量計算、仕入れ、手配は誰が担うか
- 現場全体の管理と、自社の施工範囲の管理をどう分けるか
- 自社はどの範囲を、どの人数・期間で完成させるか
- 材料の数量違いや施工上の問題が起きたとき、誰に確認し、どう対応するか
この会社では、上位会社が材料と現場管理を担うことが、現在の安定につながっています。新しい取引先から仕事を受ける場合にも、同じ分担で受けられるかを先に確認すれば、施工内容が似ていても負担が大きく異なる仕事を見分けやすくなります。
なお、手間請けだから施工上の責任までなくなるわけではありません。材料を持たないことによる負担の軽減と、自社の施工範囲に対する責任は、分けて確認しておきたい点です。
職人数に合う工事量を先に決めてから、受注先を考える
職人を増やさない方針であれば、新しい取引先の数より先に、今の人数でどの程度の工事を受けられるかを整理します。
既存工事に必要な人数と期間を確認し、そのうえで、追加の施工に回せる人数・期間がどこにあるかを見ます。「少し増えても対応できる」という感覚を、具体的な受入可能量に置き換える進め方です。
ここで上限を、全員を常に使い切る量にするか、問題発生時にも動ける余力を残す量にするかで、受注方針は変わります。この会社のように「何かあっても対応できる規模」を望むなら、その余力まで含めて受注量を決めるのが自然です。
取引先に伝える内容も、「仕事を増やしたい」だけではなく、施工できる範囲、入れる人数と期間、材料や管理について希望する分担までそろえます。
取引先開拓の目標は、会社を大きくすることではなく、必要な時期に、必要な量の手間請け工事を確保することです。 一次請けを目指すかどうかは、その条件を変える必要が出てから改めて考えることもできます。
まとめ
二次請け・手間請けを続けることも、利益と負担の釣り合いを見たうえでの経営上の選択です。 一次請け化や売上拡大が、どの会社にも共通する正解とは限りません。
今回の内装工事会社では、上位会社が材料調達と現場管理を担い、自社の十数名の職人が施工に集中する分担が、安定を支えていました。大切なのは、その分担でどの程度の利益が残り、どれだけの工事量なら無理なく対応できるかを把握することです。
次の一手としては、現在の受注について、利益の残り方、材料と管理の担当範囲、職人の対応量、問題発生時の余力を整理するところから始められます。そこが明確になれば、現状を維持する場合も、新しい取引先を探す場合も、自社に合う条件を伝えやすくなります。
手間請けを続けるための受注条件を整理したい方へ
「一次請けを目指すべきか」より前の、「今の人数で、どんな仕事をどれだけ受けたいか」という段階から相談できます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場体制や原価、組織などのつながりから整理し、実行まで支援しています。受注先の開拓についても、拡大を前提にするのではなく、希望する施工範囲や材料・管理の役割分担、現在の職人数に合う工事量から、一緒に考えます。
「うちの場合は何を基準に判断すればよいか」「今の安定を保ちながら、少しだけ仕事を増やしたい」という段階でも構いません。無理に営業を進めることはありませんので、次の整理先としてご相談ください。