国土交通省は、令和8年10月1日から5日時点の「主要建設資材需給・価格動向調査」の結果を公表しました。生コンクリート、鋼材、木材など7資材13品目について、全国では価格動向が全て「横ばい」、需給動向が全て「均衡」、在庫状況が全て「普通」とされています。
公表日 | 令和8年10月26日 |
調査時点 | 令和8年10月1日~5日現在 |
調査対象 | 生コンクリート、鋼材、木材など7資材13品目 |
全国の価格動向 | 全ての調査対象資材で「横ばい」 |
全国の需給動向 | 全ての調査対象資材で「均衡」 |
全国の在庫状況 | 全ての調査対象資材で「普通」 |
在庫状況の調査対象 | 骨材、異形棒鋼、H形鋼、木材など |
今回の結果だけを見ると、資材市場は大きく荒れていないように見えます。ただし、中小建設業にとって大事なのは「全国平均が落ち着いている」という事実を、そのまま自社の見積に当てはめないことです。価格が横ばいでも、地域・資材・仕入先ごとの実勢は異なります。
今回のポイントは「値下がり」ではなく「横ばい」です
今回の調査では、価格動向は全ての調査対象資材で「横ばい」でした。
ここで注意したいのは、横ばいは、資材価格が以前の水準に戻ったという意味ではないことです。あくまで「先月に比べて大きな変化がない」という見方です。
建設会社の経営では、資材価格が急に上がる局面では見積や発注に注意が向きます。一方で、横ばいの局面では確認が甘くなりやすいものです。しかし、原価が高止まりしたまま横ばいになっている場合、過去の感覚で見積を出すと利益を削ります。
そのため今回のような結果は、安心材料であると同時に、自社の標準単価や見積前提を更新するタイミングとして捉えるのが実務的です。
需給は全資材で「均衡」だが、発注管理を緩める局面ではありません
需給動向も、全国では全ての調査対象資材で「均衡」とされています。
これは、極端なひっ迫や供給不足が全国的に出ている状況ではない、という意味では前向きな材料です。工期や段取りへの不確実性が少し読みやすい局面といえます。
ただし、建設現場の資材調達は全国平均では動きません。実際には、地域、工種、物件規模、仕入先の在庫、配送体制によって、調達の難易度は変わります。
特に中小建設業では、資材商社やメーカーとの取引条件、現場ごとの発注タイミング、置き場の制約などが利益に直結します。「均衡」と出ている時期こそ、発注ルールを整えやすい時期です。
たとえば、次のような確認は有効です。
- 主要資材ごとの標準リードタイムを見直す
- 現場担当者ごとに発注タイミングがばらついていないか確認する
- 仕入先からの価格改定情報を社内で共有する流れを作る
- 大型案件や長期案件では、見積時点と発注時点の価格差を追えるようにする
大きな混乱がない時期に仕組みを整えると、次に価格や需給が動いたときの対応力が上がります。
在庫は「普通」。ただし在庫調査の対象資材には限りがあります
在庫状況は、調査対象となっている資材について全て「普通」とされています。
国土交通省の発表では、在庫状況の調査対象は、骨材、異形棒鋼、H形鋼、木材などに限られています。したがって、全ての建設資材について在庫が十分だと読むのは早計です。
自社としては、国の調査結果を大きな市場感として押さえたうえで、実際の調達先に次の点を確認したいところです。
- よく使う規格・サイズの在庫は安定しているか
- 納期が延びている資材はないか
- 今後3か月程度で価格改定の予定があるか
- 代替品や仕様変更の余地があるか
特に、型枠用合板、鋼材、軽油などは、現場の原価や工程に影響しやすい資材です。今回の全国結果が落ち着いていても、自社の主要工種に関係する資材だけは個別に追うことが大切です。
中小建設業が見るべき実務ポイント
今回の調査結果から、中小建設業がすぐに確認したいのは、次の3点です。
1. 見積単価が古くなっていないか
価格が横ばいということは、直近で急上昇していないという意味です。一方で、過去に上がった価格がそのまま定着している可能性もあります。
見積書の標準単価、積算用Excel、過去案件の流用単価が古いままになっていないかを確認したいところです。
2. 利益率を「材料費込み」で見ているか
売上総利益率だけを見ていると、どの資材が利益を削っているのか見えにくくなります。
案件ごとに、少なくとも主要資材については、見積時単価、発注時単価、実行予算との差を追える形にしておくと、次の見積精度が上がります。原価管理は、価格が荒れている時だけでなく、落ち着いている時に整える方が進めやすいです。
3. 地域別データを自社エリアに引き寄せて見る
今回のPDF資料には、都道府県別・地域別の価格動向、需給動向、在庫状況が掲載されています。
全国の結論は「横ばい・均衡・普通」ですが、経営判断に使うなら、自社の営業エリアに近いデータを見る方が実務的です。公共工事、民間工事を問わず、見積の根拠を説明しやすくする材料にもなります。
「安定している時期」にこそ、次の変動に備える
今回の発表は、建設資材市場が急激に悪化しているという内容ではありません。むしろ、全体としては落ち着いた結果です。
ただ、建設業の経営では、資材が安定している時期ほど、社内の管理体制の差が出ます。
- 単価表を更新している会社
- 仕入先からの情報を社内共有している会社
- 見積時点と発注時点の差額を追っている会社
- 現場任せではなく、会社として発注ルールを持っている会社
こうした会社は、次に価格が動いたときにも対応が早くなります。今回のような「横ばい」のニュースは、守りのニュースではなく、原価管理を整えるためのニュースとして使いたいところです。
自社の見積・原価管理を一度整理する機会に
資材価格のニュースを見ても、「結局、うちの場合は何を見ればよいのか」が分かりにくいことがあります。特に、工種が複数ある会社、現場ごとに仕入先が違う会社、見積を過去案件の流用で作っている会社では、資材価格の変化が利益にどう効いているか見えにくくなります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。資材価格への対応も、単価表の見直しだけでなく、見積、実行予算、発注、原価管理の流れとして考えることが大切です。
「自社では何から確認すべきか」「今の見積方法で利益を守れているか」を整理したい段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、必要に応じて情報整理の場としてご活用ください。