国土交通省は、環境省・農林水産省とともに、地域生物多様性増進法に基づく令和8年度第2回の「自然共生サイト」認定を行いました。今回、122か所が認定され、これにより国内の自然共生サイトは合計700か所、面積では12.7万haまで拡大しました。
発表内容 | 地域生物多様性増進法に基づく「自然共生サイト」の認定 |
認定時期 | 令和8年度第2回認定 |
今回の認定数 | 122か所 |
内訳 | 増進活動実施計画116か所、連携増進活動実施計画6か所 |
国内累計 | 700か所 |
累計面積 | 12.7万ha |
制度の背景 | 2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全する「30by30目標」 |
関係法令 | 地域生物多様性増進法(令和7年4月施行) |
今回の発表は、建設業に直接の義務を課すものではありません。ただし、建設会社も無関係ではありません。認定一覧には、鉄建建設、清水建設、長谷工コーポレーション、竹中土木など、建設関連企業の取組も含まれています。
中小建設業にとって重要なのは、「生物多様性」が一部の大企業だけの環境活動ではなく、地域の土地管理、工事周辺環境、企業評価、自治体との連携に関わるテーマになり始めているという点です。
自然共生サイトとは何か
自然共生サイトは、民間企業、自治体、NPOなどの取組によって、生物多様性の保全が図られている区域を認定する仕組みです。
もともとは環境省の制度として令和5年度から始まりました。その後、令和7年4月に地域生物多様性増進法が施行され、法に基づく制度として運用されています。
今回の資料では、認定対象となる活動として、主に次の考え方が示されています。
- 維持:すでに生物多様性が豊かな場所を保全する活動
- 回復:管理放棄地などで、生物多様性を回復させる活動
- 創出:新たに生物多様性のある環境をつくる活動
令和8年度第2回認定では、増進活動実施計画116か所のうち、維持タイプが106か所、回復タイプが7か所、創出タイプが3か所でした。連携増進活動実施計画6か所は、いずれも維持タイプです。
つまり現時点では、既存の緑地、里山、湿地、水田、人工林、都市緑地などをどう守り、管理していくかが中心テーマになっています。
建設業にとってのポイントは「環境対応」よりも「地域資産の扱い方」
このニュースを、単なる環境政策として読むと、自社には遠い話に見えるかもしれません。
しかし建設業、とくに地域に根ざした中小建設会社にとっては、もう少し実務寄りに捉える必要があります。
建設会社は、地域の土地、河川、山林、道路、造成地、公共施設、民間施設に日常的に関わります。工事を通じて地域の自然環境に触れる機会も多くあります。
今回の認定一覧を見ても、里山林、人工林、二次草原・草地、都市の緑地、水田、河川・湖沼、湿地、藻場、干潟など、幅広い生態系が対象になっています。
ここから読み取れるのは、これからの地域インフラや土地利用では、「つくる」「直す」だけでなく、「自然環境をどう維持・回復・創出するか」が評価軸に入ってくるという流れです。
すぐに入札要件や取引条件が変わると断定するものではありません。ただ、公共工事、民間開発、企業の施設整備、地域連携事業の中で、生物多様性への配慮が語られる場面は増えていくと考えられます。
中小建設会社が見るべき3つの視点
今回の発表から、中小建設業が見ておきたい視点は大きく3つあります。
1. 保有地・資材置場・社有林・緑地をどう管理しているか
自社で土地を持っている会社は少なくありません。資材置場、倉庫周辺、社屋敷地、遊休地、山林などです。
すべてが自然共生サイトの対象になるわけではありませんが、「自社の土地を、単なる余剰スペースではなく、地域との関係資産として見直す」という発想は持っておきたいところです。
たとえば、緑地の維持管理、地域の清掃活動、植生管理、水辺の保全、学校や自治体との連携などは、建設会社が本来持っている現場力と相性があります。
2. 自治体・地域団体との連携余地を見る
今回認定された計画には、市町村が取りまとめ役となり、多様な主体と連携して行う「連携増進活動実施計画」も含まれています。
これは、建設会社にとって重要です。なぜなら、地域の環境保全は、行政だけでも、NPOだけでも、企業だけでも続きにくいからです。
地域の建設会社は、重機、施工管理、安全管理、維持管理、災害対応などの実務力を持っています。地域の自然環境を守る活動において、建設会社の役割は「寄付する側」だけではなく、「実行を支える側」にもなり得ます。
今後、自治体が生物多様性やネイチャーポジティブに関する取組を進める際、地元建設会社が協力者として関われる場面は出てくる可能性があります。
3. 採用・広報・発注者評価に効いてくる可能性を見る
若手採用や企業広報の面でも、このテーマは無視しにくくなっています。
建設業は、地域の暮らしを支える仕事です。その価値を伝える際に、道路や建物だけでなく、地域の自然環境や景観、災害に強いまちづくりとの関係を語れる会社は、外から見た印象が変わります。
今回の制度そのものが、直ちに採用力や受注力を高めるとまでは言えません。ですが、「地域に必要とされる会社」としての説明材料を増やす意味では、生物多様性や自然共生の視点は今後の経営テーマになり得ます。
今回の認定で目立つのは、企業参加の広がり
別添資料では、自然共生サイト全体の申請主体について、企業が約半数とされています。また、令和8年度第2回認定でも、企業からの申請が約4割を占めています。
これは大きな変化です。
従来、自然環境の保全は行政や専門団体の領域と見られがちでした。しかし、現在は企業の敷地、工場、研究所、緑地、社有林、発電所周辺、農地、キャンパスなどが認定対象として広がっています。
建設関連でも、清水建設「再生の杜」、長谷工テクニカルセンター、竹中土木四日市グリーンソーラーガーデン、鉄建建設が関わる「てっけんの森」などの名称が一覧に見られます。
ここで大切なのは、大企業の事例をそのまま真似ることではなく、「環境価値を事業や地域活動の中にどう組み込むか」という発想を中小企業なりに持つことです。
中小建設会社の場合、派手な取組である必要はありません。むしろ、地域の維持管理、除草、排水、法面、森林、河川、ため池、農地周辺など、日常業務に近い領域から考える方が現実的です。
すぐに確認しておきたいこと
今回の発表を受けて、すぐに大きな投資をする必要はありません。まずは、自社に関係しそうな接点を整理することが有効です。
確認したいのは、次のような点です。
- 自社が保有・管理している土地や緑地はあるか
- 自治体や地域団体と、環境保全・緑地管理・里山管理などで接点があるか
- 施工現場周辺で、自然環境や生態系への配慮が求められる案件が増えていないか
- 会社案内、採用資料、入札時資料などで、地域貢献や環境配慮を説明できているか
- 造園、土木、維持管理、森林・河川関連業務など、自社の得意領域と接続できるか
この整理をしておくと、制度そのものに申請するかどうか以前に、今後の地域戦略を考えやすくなります。
このニュースをどう経営に活かすか
今回の自然共生サイト認定は、建設業に対する規制強化のニュースではありません。
むしろ、地域の自然環境を守る活動が、企業活動として正式に評価される流れが進んでいると見るべきです。
建設業は、地域の地形や土地利用に最も近い産業の一つです。だからこそ、生物多様性や自然共生というテーマは、遠い環境スローガンではなく、将来の仕事のつくり方、地域との関係づくり、会社の見え方に関わってきます。
中小建設会社にとっては、まず次の一歩で十分です。
自社の現場力が、地域の自然環境や土地管理にどう役立っているのかを言語化すること。
この視点を持てる会社は、公共工事でも、民間工事でも、採用でも、地域連携でも、自社の価値をより伝えやすくなります。
自社にとっての接点を整理するところから始める
自然共生サイトや生物多様性の話は、制度名だけを見ると少し遠く感じます。しかし、実際には保有地、維持管理、自治体連携、採用広報、地域貢献など、中小建設会社の日常とつながる部分があります。
「うちの場合は関係があるのか」「何から整理すればよいのか」という段階でも、考える価値はあります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用、地域戦略まで横断して整理し、実行まで支援しています。今回のような制度や社会変化についても、自社への影響を一緒に棚卸しするところから伴走できます。
無理な営業はいたしません。自社の状況を落ち着いて整理したい場合は、次の相談先としてご活用ください。