国土交通省は、令和8年7月分の「内航船舶輸送統計月報」の概要を公表しました。総輸送量は前年同月比で増加しました。建設業に関係が深い品目では、砂利・砂・石材、石灰石、鉄鋼の輸送量が前年同月を上回っています。一方で、セメントはトンベースでは微増、トンキロベースでは減少しています。
公表資料 | 内航船舶輸送統計月報の概要(令和8年7月分) |
公表日 | 令和8年10月28日 |
総輸送量 | 26,514千トン(前年同月比7.2%増) |
総輸送量(トンキロ) | 13,615百万トンキロ(前年同月比10.3%増) |
砂利・砂・石材 | トンベース14.2%増、トンキロベース16.4%増 |
石灰石 | トンベース8.6%増、トンキロベース14.6%増 |
セメント | トンベース0.4%増、トンキロベース2.8%減 |
鉄鋼 | トンベース8.8%増、トンキロベース11.6%増 |
燃料消費量 | 193,565千リットル(前年同月比7.3%増) |
航海距離 | 11,420千キロメートル(前年同月比10.7%増) |
建設会社にとっての読みどころ
今回の統計は、補助金や制度改正のように「明日から手続きが変わる」ニュースではありません。
ただし、建設会社にとっては見逃しにくい数字があります。
砂利・砂・石材がトンベースで14.2%増、鉄鋼が8.8%増、石灰石が8.6%増となっています。いずれも、土木・建築・基礎・外構・躯体・設備まわりの現場に関係しやすい資材です。
もちろん、この統計だけで「資材価格が上がる」「需要が強い」と断定はできません。
それでも、船で動く資材の量が増えているという事実は、現場側から見ればひとつの合図です。
見積、発注、納期確認を“いつもの感覚”だけで進めないほうがよい局面かもしれません。
「最近、材料屋さんの返事が少し遅い」
「鉄骨や鋼材の納期を念のため確認したい」
「砕石や砂の単価が、見積時と実行時でズレないか気になる」
そんな感覚が現場にある会社は、今回の数字を社内で共有しておく価値があります。
セメントは“量”だけでなく距離も見る
セメントは、トンベースでは前年同月比0.4%増でした。
一方で、トンキロベースでは2.8%減です。
ここは少し丁寧に見たいところです。
トンベースは「どれだけ運んだか」。トンキロベースは「どれだけの量を、どれだけの距離運んだか」を反映します。
つまり、セメントについては、単純に輸送量だけを見るよりも、輸送距離や供給エリアの変化も含めて確認したほうがよいということです。
地域の生コン、セメント、骨材の供給事情は、全国平均の数字だけでは読めません。
中小建設会社にとって大事なのは、自社の商圏です。
自社が使う資材、自社が動く地域、自社が付き合っている仕入先で何が起きているか。
ここを確認する材料として、今回の統計を使うのが現実的です。
燃料消費量と航海距離の増加も、原価感覚に入れておきたい
燃料消費量は、前年同月比7.3%増でした。
航海距離も、前年同月比10.7%増です。
この数字も、建設会社が直接コントロールできるものではありません。
ただ、資材は勝手に現場へ届くわけではありません。
船で運ばれ、港で扱われ、トラックに積み替えられ、各地域の現場へ届きます。
そのどこかで燃料費、輸送距離、人手、待機時間が積み重なります。
だからこそ、見積の段階で、材料単価だけでなく、運搬費・納入条件・現場搬入条件まで確認する姿勢が大切です。
特に、離島部、沿岸部、港湾に近いエリア、大型資材を使う工事では、物流の変化が実行予算に響きやすくなります。
小さなズレでも、現場が重なると利益を削ります。
「材料は押さえた。でも運ぶ条件を見落としていた」
これは避けたいところです。
今回の統計を社内でどう使うか
今回の統計は、経営会議で長く議論する資料というより、調達・積算・現場管理の会話を始めるきっかけとして使いやすい資料です。
たとえば、次のような確認です。
- 砂利・砂・石材の仕入単価や納期に変化がないか
- 鉄鋼関連資材の見積有効期限が短くなっていないか
- セメント、生コン、骨材の地域事情を仕入先に確認しているか
- 運搬費や小運搬費を実行予算に十分見ているか
- 公共工事・民間工事ともに、見積から着工までの期間差を織り込めているか
大げさな対策でなくて構いません。
まずは、積算担当、購買担当、現場代理人、経営者の間で、同じ数字を見ておくことです。
統計は未来を断定するものではありません。けれど、先に気づくための道具にはなります。
中小建設業は「価格」だけでなく「調達の確実性」を見る時代へ
建設業の利益管理は、材料価格だけを追っていても守り切れません。
大事なのは、価格、納期、数量、運搬、現場条件を一体で見ることです。
今回のように、建設資材に関係する輸送量が増えている局面では、見積時点の前提が、施工時点でも成り立つかを確認しておきたいところです。
「この単価で本当に入るのか」
「この納期で本当に間に合うのか」
「運搬費は別途なのか、込みなのか」
「現場条件が変わったら誰が負担するのか」
こうした確認は、地味です。
でも、最後に利益を残す会社ほど、ここを丁寧に見ています。
自社の見積・原価管理に落とし込むために
今回の統計を見て、「うちの会社では何を確認すればよいのか」「見積や実行予算にどう反映すべきか」と感じた会社もあると思います。
その場合は、資材ごとの単価表だけを見るのではなく、受注から発注、現場搬入、実行予算、粗利確認までを一度つなげて整理すると見えやすくなります。
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