国土交通省は、令和8年9月分の建築着工統計調査報告を公表しました。9月の新設住宅着工は、持家・貸家・分譲住宅がいずれも減少し、全体で前年同月比2.7%減となりました。民間非居住建築物も、工場は増加した一方で、事務所・店舗・倉庫が減少し、全体では減少しています。

公表内容

建築着工統計調査報告(令和8年9月分)

新設住宅着工戸数

61,826戸(前年同月比2.7%減、6か月ぶりの減少)

新設住宅着工床面積

4,729千㎡(前年同月比3.2%減、6か月ぶりの減少)

季節調整済年率換算値

714千戸(前月比5.2%減、3か月連続の減少)

住宅投資予定額

13,062億円(前年同月比1.6%増)

全建築物の着工床面積

721万㎡(前年同月比15.6%減)

民間非居住用の着工床面積

207万㎡(前年同月比32.4%減)

民間非居住の主な動き

工場は増加、事務所・店舗・倉庫は減少

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住宅着工は「戸数減・投資額増」という読み方が必要です

9月の新設住宅着工戸数は61,826戸で、前年同月比2.7%減でした。内訳を見ると、持家は17,648戸で3.4%減、貸家は28,046戸で1.6%減、分譲住宅は15,688戸で4.5%減です。

一方で、新築に関する住宅投資予定額は13,062億円で、前年同月比1.6%増となっています。

ここで大事なのは、「戸数が減っている=市場全体の金額も同じように縮んでいる」とは限らないという点です。今回の統計では、住宅着工戸数は減少していますが、住宅投資予定額は増加しています。

中小の工務店、住宅関連工事会社、基礎・外構・設備・内装などの専門工事会社にとっては、単に「住宅が減った」と見るより、戸数、床面積、工事費予定額を分けて見ることが重要です。

たとえば、元請から見れば受注棟数が減っても、1件あたりの工事費予定額が上がっていれば、見積・粗利管理の重要性はむしろ高まります。専門工事会社から見れば、棟数減は稼働率に影響しますが、仕様や単価の変化によって、同じ職種でも必要人工や利益の出方が変わります。

「何件取れるか」だけでなく、「どの単価帯・どの仕様の仕事を取るか」を見直す材料になる統計です。

分譲住宅はマンション減、一戸建住宅増。市場の中身は一枚岩ではありません

分譲住宅全体は15,688戸で前年同月比4.5%減でした。ただし、内訳を見ると動きは分かれています。

マンションは4,825戸で前年同月比21.2%減。一方、分譲一戸建住宅は10,687戸で6.1%増です。

つまり、分譲住宅全体は減少しているものの、分譲戸建は増加しています。

これは、住宅関連の中小建設業にとってかなり大事な見方です。マンション工事に関わる会社と、戸建分譲・木造住宅・外構・造成・設備に関わる会社では、同じ「住宅市場」でも受ける影響が違います。

特に、分譲戸建に関係する会社は、全体の住宅着工減だけを見て判断すると、地域や取引先によっては実態を見誤る可能性があります。反対に、マンション関連の躯体・内装・設備・防水・仕上げ工事に関わる会社は、案件の山谷が出やすくなる可能性があります。

住宅市場は「持家・貸家・分譲」「マンション・戸建」「地域」の3つに分けて見る必要があります。

地域別では近畿圏の減少が大きく、首都圏は小幅減です

地域別の新設住宅着工を見ると、総戸数は次のような動きです。

地域

総戸数の前年同月比

首都圏

0.3%減

中部圏

3.4%減

近畿圏

8.1%減

その他地域

2.5%減

今回の統計では、近畿圏の減少幅が比較的大きくなっています。近畿圏は、持家6.8%減、貸家8.3%減、分譲住宅12.0%減でした。

一方で、首都圏は総戸数で0.3%減と小幅な減少にとどまっています。首都圏では分譲住宅が3.4%増で、うち一戸建住宅は7.3%増となっています。

ここから言えるのは、全国平均だけで自社の受注環境を判断してはいけないということです。

中小建設業の場合、事業エリアは限られていることが多いです。全国の着工戸数よりも、自社が営業している県、市町村、商圏で何が起きているかのほうが、実際の経営には効きます。

経営会議や営業会議では、次のように見ておくと実務に落とし込みやすくなります。

  • 自社の主力工事が、持家・貸家・分譲のどれに連動しているか
  • 取引先の案件が、マンション寄りか戸建寄りか
  • 営業エリアの着工が全国平均より強いのか弱いのか
  • 来月以降の手持ち工事と、統計上の流れにズレがあるか

数字そのものより、自社の受注台帳と照らし合わせることが大切です。

民間非居住は大きく減少。ただし工場は増加しています

民間非居住用の着工床面積は207万㎡で、前年同月比32.4%減でした。使途別では、事務所、店舗、倉庫が減少し、工場は増加しています。

主な使途別の動きは次のとおりです。

使途

着工床面積

前年同月比

事務所

26万㎡

35.2%減

店舗

24万㎡

15.5%減

工場

37万㎡

10.0%増

倉庫

43万㎡

61.1%減

非住宅系の会社にとっては、ここも一括りに見ないほうがよいところです。民間非居住全体は減少していても、工場は増えています。

一方で、倉庫は前年同月比61.1%減と大きく減少しています。倉庫は大型案件の有無で月ごとの振れが出やすい面がありますが、物流施設や倉庫関連に依存している会社は、今後の引き合い状況を丁寧に確認したいところです。

また、用途別では製造業用が48万㎡で9.3%増、情報通信業用が6万㎡で912.5%増、不動産業用が9万㎡で176.2%増、宿泊業・飲食サービス業用が19万㎡で41.2%増となっています。一方、医療・福祉用は17万㎡で27.0%減、その他のサービス業用は21万㎡で58.9%減です。

非住宅は「全体が悪い」ではなく、用途ごとに案件の出方が変わっていると捉えるべきです。

中小建設業が見るべきは「景気判断」よりも「自社の仕事の偏り」です

今回の統計は、受注環境がやや弱含んでいることを示しています。住宅着工は6か月ぶりの減少、季節調整済年率換算値も3か月連続の減少です。全建築物の着工床面積も前年同月比15.6%減でした。

ただし、ここで大切なのは、統計を見て悲観することではありません。自社の仕事がどの市場に依存しているかを確認することです。

たとえば、次のような会社では見るべきポイントが異なります。

  • 戸建住宅中心の会社:分譲戸建、持家、地域別戸数の動き
  • マンション関連の会社:分譲マンションの着工戸数、都市圏別の変動
  • 店舗内装・商業施設関連の会社:店舗の着工床面積、卸売業・小売業用の動き
  • 工場・設備・鉄骨関連の会社:工場、製造業用建築物の着工床面積
  • 倉庫・物流施設関連の会社:倉庫の着工床面積と大型案件の有無

月次統計は、単月では振れます。国土交通省の資料でも、季節変動や大規模工事の影響に注意が必要とされています。だからこそ、単月の増減で一喜一憂するのではなく、3か月、半年、年度累計で見る姿勢が必要です。

いま確認したい経営上のチェックポイント

今回の数字を受けて、中小建設業がすぐに確認したいのは、次の4点です。

1つ目は、手持ち工事の先行きです。直近の稼働は埋まっていても、3か月先、6か月先の見込みが薄くなっていないかを確認したいところです。

2つ目は、取引先の偏りです。住宅会社1社、マンション系ゼネコン1社、倉庫系案件1系統などに依存している場合、市場の変化がそのまま売上に出やすくなります。

3つ目は、見積単価と粗利の確認です。住宅投資予定額は前年同月比で増えていますが、材料費・外注費・労務費の上昇を十分に織り込めていなければ、売上があっても利益が残りにくくなります。

4つ目は、職人・協力会社の配置です。マンション、戸建、工場、倉庫、店舗では必要な職種や工程が違います。市場の濃淡が変わる局面では、協力会社との予定共有や、繁忙・閑散の山をならす工夫が効いてきます。

統計は「景気のニュース」ではなく、「自社の受注構成を見直すきっかけ」として使うのが実務的です。

自社の受注環境に置き換えて整理する

今回の建築着工統計は、住宅も非住宅も全体としては減少を示しています。ただ、その中身を見ると、分譲戸建や工場のように増えている領域もあります。

大切なのは、全国平均をそのまま自社に当てはめないことです。自社の商圏、取引先、工種、利益構造に引き寄せて見ると、次に打つべき手が見えやすくなります。

「うちの場合、この数字をどう読めばいいのか」「受注先を広げるべきか、既存先を深掘りすべきか」「見積や原価管理をどこから直すべきか」といった整理が必要であれば、ネクスゲートでも一緒に壁打ちできます。

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