国土交通省は、令和8年9月の「建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)」の結果を公表しました。大手50社の受注総額は1兆9,791億円で、前年同月比11.1%減。民間工事は1兆5,062億円で、前年同月比14.6%減となり、7ヶ月連続で減少しました。
公表内容 | 令和8年9月の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)結果 |
受注総額 | 1兆9,791億円 |
受注総額の前年同月比 | 11.1%減、3ヶ月連続の減少 |
民間工事 | 1兆5,062億円、前年同月比14.6%減、7ヶ月連続の減少 |
公共工事 | 3,887億円、前年同月比1.5%減 |
海外工事 | 224億円、前年同月比1.9%増 |
今回の数字は大手50社の調査であり、そのまま中小建設業の受注環境を表すものではありません。ただし、大手の受注動向は、今後の元請・下請構造、民間設備投資、公共工事の競争環境を読むうえで重要な先行情報になります。
大きな流れは「民間の弱さ」と「分野ごとの濃淡」です
今回もっとも目立つのは、民間工事の減少です。民間工事は前年同月比14.6%減で、7ヶ月連続の減少となりました。
特に非製造業は前年同月比31.6%減。一方で、製造業は前年同月比60.7%増となっています。
つまり、民間工事全体は弱含みですが、すべての民間需要が一様に悪いわけではありません。中小建設業が見るべきなのは「民間が減った」という一言ではなく、どの業種・どの工事種類に需要が残っているかです。
発注者別では、サービス業、鉱業・採石業・砂利採取業・建設業、電気・ガス・熱供給・水道業等が減少しました。一方、製造業、金融業・保険業、卸売業・小売業等は増加しています。
工事種類別では、建築、土木ともに減少しましたが、工場・発電所、住宅、倉庫・流通施設は増加しています。
営業戦略としては、漠然と民間案件を追うよりも、工場・物流・住宅など、動いている領域に自社の接点があるかを確認することが重要です。
公共工事は全体では微減。ただし地方の機関は増加しています
公共工事は3,887億円で、前年同月比1.5%減でした。全体では減少ですが、内訳を見ると国の機関は14.8%減、地方の機関は38.9%増となっています。
この差は、中小建設業にとって見逃せません。
大手50社調査なので、地域の中小企業が直接受注する工事の動きとは異なります。それでも、国発注よりも地方発注の動きが強いという傾向は、地域建設会社にとって公共工事の見方を変える材料になります。
特に、公共工事を一定割合で受注している会社は、次の点を確認しておきたいところです。
- 自社エリアの自治体発注案件に変化が出ているか
- 道路、治山治水、建築その他など、どの分野に案件が出ているか
- 元請として狙う案件と、協力会社として入る案件のバランスは適切か
- 技術者配置や施工体制に無理が出ない受注計画になっているか
今回の調査では、公共工事の工事種類別で、建築が増加し、土木が減少しています。土木その他、医療福祉施設、道路等は減少し、建築その他、娯楽施設、治山治水等は増加しました。
公共工事は「総額」だけで判断せず、地域・発注者・工種ごとに見ることが欠かせません。
中小建設業は「大手の減少」を悲観材料だけで見ない方がよいです
受注総額が前年同月比11.1%減、民間工事が7ヶ月連続減少という数字だけを見ると、建設市場全体が冷え込んでいるように見えます。
ただし、中小建設業にとって大事なのは、景気の良し悪しを大きく捉えることだけではありません。需要がどこからどこへ移っているのかを見て、自社の受注先・協力先・見積方針を微修正することです。
今回の結果からは、少なくとも次のような読み方ができます。
- 民間全体は弱いが、製造業関連は増加している
- 工場・発電所、倉庫・流通施設、住宅は増加している
- 公共工事は全体では微減だが、地方の機関は増加している
- 建築と土木で動きが分かれている分野がある
中小建設業は、大手と同じ市場で同じ戦い方をする必要はありません。むしろ、大手の受注動向を「地域や専門工事に波及する前のサイン」として読み、自社が強い領域に引き寄せて考えることが現実的です。
今回の数字を自社で確認するなら、見るべきは3つです
今回のような統計を見るとき、中小建設業では細かい数値を追いすぎるよりも、自社経営に関係する論点に絞った方が実務に使いやすくなります。
確認したいのは、次の3つです。
1つ目は、自社の主要顧客が属する業種の投資意欲です。製造業、物流、住宅、サービス業など、どの業種に依存しているかで、今回の数字の意味は変わります。
2つ目は、民間と公共の受注バランスです。民間工事の減少局面では、公共工事を補完的に見る会社も増えます。ただし、公共工事は入札参加資格、技術者配置、書類対応、利益率管理が重要です。単に「公共を増やせばよい」とは限りません。
3つ目は、下請・協力会社としてのポジションです。大手や地域ゼネコンの受注が変われば、専門工事会社への発注量やタイミングにも影響が出ます。受け身で待つのではなく、主要取引先の案件傾向を早めに把握しておくことが重要です。
統計は予測のためだけでなく、営業会議・受注会議・人員計画の前提をそろえるために使うものです。
受注環境の変化を、自社の打ち手に落とし込むために
今回の発表は、大手50社の月次統計です。個別企業にとっては、すぐに売上が増減する話ではないかもしれません。
しかし、民間工事の減少が続き、業種や工事種類によって濃淡が出ている局面では、「どの案件を取りに行くか」「どの取引先との関係を深めるか」「どの工種・人材に投資するか」を少しずつ見直す必要があります。
ネクスゲートでは、建設企業の持続的成長を支援する立場から、販路拡大、資金調達、人材確保、組織活性化、原価管理、デジタル活用まで横断して、経営課題の整理と実行を支援しています。
「今回のような統計を、自社の営業方針にどうつなげればよいか」「民間と公共の受注バランスを見直したい」「原価や人員計画まで含めて整理したい」という段階でも構いません。無理な営業はいたしませんので、まずは自社の場合の考え方を整理する場としてご活用ください。