前提

既存取引先の地域内案件をすでに受け切っている工事会社

仕事を増やすために必要なのは、施工人数を増やすことだけでなく、新しい発注元を見つけることでした。

中国地方の地方都市で、通信設備関連の工事を手掛ける、年商4,500万円前後の専門工事会社です。集合住宅のネット回線関連などを施工しています。地域外の企業とも長い付き合いがあり、既存の取引先から継続して仕事を受けています。

そのうち、ある取引先の地域内案件は、すでにすべて自社が担当していました。

「この地域の案件は全部うちなので、もう増えることはないです」

正確には、その取引先が地域内で受注する量が増えれば、自社への発注も増える余地はあります。ただ、自社の人数が増えたからといって、相手の案件まで増えるわけではありません。

一方、施工できる仕事にも条件があります。

「どういうジャンルの仕事かにもよります。受けられるかはケース・バイ・ケースですね」

少人数で対応できる案件は受けやすい。まとまった人数を長期間そろえる案件は、今の体制では対応しにくい。こうした現在地を踏まえて、新たな取引先を探そうとしていました。

課題

増員しても増えない案件と、相手の体制回復で減る発注

既存取引先からの発注には、「地域内の案件量が上限になる仕事」と「相手の欠員を補う仕事」が混在していました。

前者は、すでに地域内の案件を受け切っている取引です。施工体制を厚くしても、発注元の地域内案件が増えなければ、受注量は大きく変わりません。

後者は、地元に拠点を持つ企業からの仕事です。相手の作業員が足りないときに、自社が補う形で入ります。

「向こうの作業する方が退職されたら、こちらの仕事が増えるんです。でも、向こうの体制が整ったら、がくんと減るというか」

この場合、発注量を左右するのは、自社の施工力だけではありません。相手の拠点に何人いるか。自社でどこまで施工するか。その事情によって、仕事が増えたり減ったりします。

既存取引先との関係が悪いわけではありません。むしろ、長く頼られてきた関係です。それでも、同じ相手からの発注を待つだけでは、仕事を増やしにくい構造がありました。

まず分けて考えたいのは、「自社が受けられないために増えない」のか、「相手に追加で発注する案件がないために増えない」のかです。 この違いで、次に向ける営業先が変わります。

背景

地元に支店がない取引先との関係が、新規開拓の手掛かり

地域外への営業は、遠くの現場へ出向く話ではなく、自社の施工地域に案件を持つ企業を地域外から探す話です。

この会社が注目していたのは、都市部に本社があり、自社の施工地域には拠点がない企業でした。すでに、そのような企業から仕事を受けていたためです。

「支店があると、支店の方がやられますよね」

地元に支店がある相手では、自社施工が優先されることがあります。協力会社として入れても、求められる役割が応援中心になる場合があります。この会社では、それが自社の目指す一人当たりの売上につながりにくいと考えていました。

ただし、「地域に拠点がない企業なら、外注してくれる」とまでは言えません。 そもそも、その地域に案件を持っていない可能性もあります。すでに別の施工会社に依頼している可能性もあります。

もう一つの手掛かりは、既存取引先の事業内容と販売先です。集合住宅向けの回線関連を扱う企業なのか。通信事業者やその関連企業から工事を受ける企業なのか。施工を担う会社なのか、支援機能を担う会社なのか。外から見ると似た企業でも、商流上の役割は異なります。

上流の関係は、相談者もすべてを把握しているわけではありませんでした。それでも、普段どの企業から何の仕事を受けているかは、新しい候補を探す材料になります。

「系統としては合っていると思いますけど、実際のところは見てみないとわからないですね」

候補の方向性と、実際に発注を受けられるかは別です。この感覚を残したまま進めることが大切です。

解決

既存取引先に似た企業を探し、地域内の案件と外注需要を確かめる進め方

既存取引先を手掛かりに候補を絞り、その後の接触で「自社の地域に仕事があるか」を検証します。 全国の工事会社へ、やみくもに連絡する必要はありません。

既存取引先の「どこが合っているか」を整理する

最初に見るのは、業種名だけではありません。既存取引先の事業内容、販売先、商流上の役割です。

この会社では、集合住宅のネット回線関連を扱う企業と、通信事業者関連の仕事を受ける企業を分けて候補を探しました。さらに、取引先の会社としての規模だけでなく、実際に受ける工事の内容も確認しています。

「一人とかで行ける仕事がいいですね」

「何週間、何か月と触る現場より、午前中で終わるような仕事が一番いいです」

同じ通信設備関連でも、必要人数や工期は違います。自社に合う候補は、取引先と業種が似ている企業ではなく、受けたい仕事の内容まで近い企業です。

既存取引先が人員面で柔軟に対応してくれる点も、付き合いやすさの理由でした。ただ、長年の関係で成り立つ対応を、新しい相手にも最初から期待するのは避けたいところです。新規の相手には、どのような施工体制を求めるのかを確かめます。

拠点の有無と事業内容で絞り、売上動向は優先順位に使う

候補づくりは、次の順で整理すると進めやすくなります。

  • 自社が対応する工事と、事業内容が近い企業を探す
  • 販売先を見て、既存取引先と近い商流にいるかを確認する
  • 自社の施工地域に、本社・支店・営業所があるかを確認する
  • 売上規模や売上の伸びを見て、接触する候補に優先順位をつける

売上が伸びている企業には、施工の外注需要があるかもしれません。ただし、それは候補を選ぶための仮説です。売上全体が伸びていても、自社の地域の案件が増えているとは限りません。

拠点情報や売上動向は、「発注がある証拠」ではなく、「先に話を聞く理由」として使います。

接触して、地域内の案件と自社が担える役割を確かめる

候補を絞ったら、電話などで接点をつくります。確認したいのは、会社案内だけではわからない部分です。

  • 自社の施工地域で、実際に案件を扱っているか
  • その地域で、施工を外部へ依頼する需要があるか
  • 依頼する工事は、何人で、どの程度の期間を要するか
  • 自社に求められるのは、工事の施工か、人員の応援か

地域内に案件があっても、長期の現場ばかりなら、今の自社には合わないかもしれません。反対に、短時間・少人数で対応する仕事なら、検討しやすくなります。

まずは見積もりや小さな現場につながる可能性を確認します。すぐに発注がなくても、接触後の確認を続けます。その反応を基に、候補の条件も見直していきます。

営業候補の一覧は完成品ではなく、相手の反応で精度を上げていくものです。 地域内案件がなかった企業も、その結果を残せば、次の候補選びに役立ちます。

相談者には、「動きたい。でも、減った社員の仕事が自分に回ってきていて、自由に動けない」という事情もありました。社長が現場を担っているなら、候補調査や初回の接触まで一人で抱え込まない進め方も考えられます。社長は、受けたい仕事の条件と、実際に受けられるかの判断に関わる。その分担から整理してもよさそうです。

まとめ

既存取引先の地域内案件を受け切っているなら、増員と受注拡大は分けて考える必要があります。 相手の欠員を補う発注も、相手の体制が戻れば減ることがあります。

次の手掛かりは、すでに付き合いのある取引先です。何を事業にしているか。どこへ販売しているか。商流の中で何を担っているか。その特徴を基に、地域外へ候補を広げます。

ただし、地域に拠点がないことや、売上が伸びていることだけで、発注需要は判断できません。

「候補を絞る」「地域内案件の有無を聞く」「自社の施工条件と合うか確かめる」。この順で進めることが、地域外の取引先開拓の土台になります。

自社の地域に案件を持つ企業を探すための整理先

「どの企業に営業するか」が決まっていなくても、既存取引先と受けたい工事の整理から始められます。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。販路開拓では、既存取引先の特徴や施工体制を踏まえ、営業候補の選定から接触、案件獲得に向けた継続対応まで一緒に考えます。

「うちの地域でも、この探し方が合うのか」「今の人数で受けられる仕事から探したい」。そんな段階でもご相談いただけます。無理にサービスの利用をお勧めすることはありません。まずは、自社の場合に何から整理するとよいかをお聞かせください。

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