国土交通省は、既設の砂防堰堤を活用した水力発電の普及・拡大に向けて、「砂防堰堤を活用した水力発電の取組事例集」を公表しました。全国で稼働している施設のうち掲載可能な63事例について、発電開始時期、設置箇所、取水形式、地域連携の工夫などを整理したものです。

公表内容

砂防堰堤を活用した水力発電の取組事例集

公表者

国土交通省 水管理・国土保全局 砂防部

公表時期

令和8年11月

掲載事例

全国で稼働している施設のうち掲載可能な63事例

整理対象

令和8年7月時点で全国で稼働している73施設

主な掲載内容

発電開始時期、設置箇所、取水形式、地域連携の工夫、問い合わせ先等

関連資料

既設砂防堰堤を活用した小水力発電ガイドライン(案)、小水力発電の手引き

今回の発表は、制度改正や補助金の公募ではありません。ただし、地域の既設インフラを活用して再生可能エネルギーを生み出す動きが、国の資料として整理され始めたという点で、中小建設業にとって見ておく価値があります。

まず、どんな会社か知りたい方へ

会社紹介資料

何をしている会社で、どんなご支援をしてきたのかを1つにまとめています。

会社紹介資料 1ページ

砂防堰堤は「守るインフラ」から「活かすインフラ」へ広がり始めています

砂防堰堤は、土石流を食い止めたり、山脚を固定して斜面崩壊を防いだりするための施設です。国土交通省の発表では、全国に60,000基を超える既設砂防堰堤が設置されているとされています。

今回の事例集が扱っているのは、その砂防堰堤の落差や、砂防施設を活用した取水などにより、水力発電施設としてのポテンシャルを持つ既設インフラです。

ここで大事なのは、砂防堰堤そのものの役割が変わるという話ではありません。砂防堰堤は、あくまで土砂災害を防止するための重要な施設です。そのうえで、条件が合う場所では、既存の防災インフラに再生可能エネルギーという機能を重ねる可能性がある、という見方です。

地域の建設会社にとっては、これはかなり現実味のあるテーマです。山間部、渓流、砂防、河川、林道、地域の水利用。こうした現場に日常的に関わっている会社ほど、「あの地域でこういう話が出たら、誰が現場を見られるのか」「施工や維持管理の相談先はどこになるのか」という観点で、自社の役割を考えやすくなります。

事例集で見るべきポイントは「発電規模」だけではありません

水力発電というと、どうしても発電量や採算性に目が行きます。もちろん、それは発電事業者にとって重要です。

しかし、中小建設業の経営者が今回の事例集を見るときは、発電そのものだけでなく、次の点を確認したいところです。

見るべきポイントは、発電開始時期、設置箇所、取水形式、地域連携の工夫、問い合わせ先です。

国土交通省の資料では、全国で稼働している73施設について、発電開始時期や所在都道府県、取水形式などをグラフ等で整理した資料も掲載されています。また、事例集には、発電施設や地域連携の工夫などのPRポイント、優良事例の横展開に役立てるための問い合わせ先も記載されています。

これは、単なる一覧表ではありません。地域で同じような構想が出たときに、先行事例へたどり着くための入口になります。

たとえば、地元自治体や地域の発電事業者から「既設砂防堰堤を活用できないか」という話が出たとき、建設会社側が何も知らなければ、話は発電事業者や行政の中だけで進んでしまいます。一方で、先行事例を把握していれば、「同じような地域条件の事例はあるか」「どのような取水形式が使われているか」「地域連携では何が工夫されているか」を確認できます。

情報を持っている会社は、地域の構想段階から会話に入りやすくなります。

すぐに受注へ直結する話ではなく、地域案件を読むための材料です

今回の発表を、短期的な受注情報として見ると少し違います。国土交通省は、特定の工事発注や補助金公募を発表したわけではありません。

ただし、建設業の経営では、こうした「すぐ案件ではない情報」ほど差がつきます。

公共工事の世界では、工事として発注される前に、地域課題、政策テーマ、構想、調査、関係者協議があります。再生可能エネルギー、防災インフラ、地域連携という言葉が重なる領域では、なおさらです。

今回の事例集は、将来の地域インフラ案件を読むための参考資料として使えます。

特に、山間部や中山間地域で事業を行う土木会社、河川・砂防・治山に近い分野の工事経験がある会社、自治体との接点が多い会社にとっては、自社の営業・企画・技術部門で一度確認しておく価値があります。

「うちの地域にも砂防堰堤はあるが、発電に使えるのか」まで自社だけで判断する必要はありません。むしろ、そこを軽々に判断しないことが大切です。ただ、国がどのような事例を整理しているかを知っておくことは、地域で話が出たときの初動を変えます。

中小建設業が社内で確認しておきたいこと

今回の資料をきっかけに、社内では次のような観点を軽く整理しておくとよいです。

まず、自社の施工エリアに、砂防・河川・山間部インフラに関する実績がどれだけあるかです。過去に関わった砂防工事、河川周辺工事、山間部での施工、道路・搬入路に近い工事などを棚卸ししておくと、自社の強みが見えやすくなります。

次に、自治体や地域事業者との接点です。小水力発電は、発電事業者だけで完結するものではなく、地域との関係づくりが重要になります。今回の事例集でも、地域連携の工夫が掲載内容に含まれています。

そして、自社がどの立場で関われる可能性があるかです。構想づくりに近い情報提供なのか、現地条件の確認なのか、施工なのか、維持管理に近い役割なのか。現時点で決め切る必要はありませんが、経営者と幹部の間で「こういう動きがある」という認識を持っておくことが大切です。

今回のニュースから読み取れる本質は、既存インフラを新しく活かす時代に入っているということです。新設だけでなく、今ある施設をどう使い、地域の課題解決につなげるか。その視点は、これからの中小建設業の経営にも深く関わってきます。

自社の地域でどう関われるかを整理するきっかけに

砂防堰堤を活用した水力発電は、すべての建設会社にすぐ関係するテーマではありません。ただ、地域インフラ、防災、再生可能エネルギー、自治体連携が重なる領域として、今後も注目しておきたい分野です。

「自社の施工エリアでは関係がありそうか」「自治体や地域事業者との会話にどうつなげるか」「自社の実績をどう整理しておくべきか」といった段階でも、考える価値があります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、建設企業の持続的成長を支援しています。今回のような政策・インフラ動向を、自社の事業機会や体制づくりにどう落とし込むかを整理したい場合は、壁打ち相手として活用してください。無理な営業はいたしませんので、「うちの場合はどう考えるべきか」という段階でも大丈夫です。

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