国土交通省は、建築物のライフサイクル全体で発生するCO2等を算定・評価する「建築物ライフサイクルカーボン評価制度」について、2028年度の制度開始に向けた第9回検討会を開催すると発表しました。

今回の発表自体は検討会の開催案内です。ただし、背景として、令和8年7月に改正建築物省エネ法が成立し、建築物ライフサイクルカーボン評価制度が創設されたことが示されています。今後、大規模事務所に係る届出制度や、ライフサイクルカーボンの統一的な算定ルールなどが具体化されていきます。

発表内容

第9回 建築物LCA制度検討会の開催

制度の背景

令和8年7月に改正建築物省エネ法が成立し、建築物ライフサイクルカーボン評価制度を創設

制度開始の目安

2028年度

当面の対象として示されているもの

大規模事務所に係る届出制度等

主な検討テーマ

ライフサイクルカーボンの統一的な算定ルール、表示を促す措置、LCAに用いる原単位の整備など

検討会日時

令和8年11月9日 9:30〜11:30

備考

会議資料・議事要旨は後日、国土交通省HPで公開予定

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今回のポイントは「会議開催」ではなく、2028年度開始に向けて制度が動いていることです

今回の報道発表は、形式上は検討会の開催案内です。

しかし、中小建設業の経営目線では、見るべき点はそこではありません。大事なのは、建築物LCAが、任意の環境配慮から、制度として扱われる段階に入っていることです。

建築物LCAとは、建物の計画、建材の製造、施工、使用、改修、解体までを含めたライフサイクル全体の環境負荷を算定・評価する考え方です。

これまでは「省エネ性能」というと、主に建物を使う段階のエネルギー消費が中心でした。これからは、建てる前、建てる時、壊す時まで含めたCO2排出量が問われる方向に進みます。

直接の対象が大規模事務所でも、サプライチェーンには広がります

発表では、2028年度開始に向けて「大規模事務所に係る届出制度等」が示されています。

このため、すべての中小建設会社が、制度開始と同時に直接の届出義務を負うとは限りません。ここは冷静に見る必要があります。

一方で、実務上の影響は別です。

大規模事務所の建設では、元請、設計者、建材メーカー、設備会社、専門工事会社、商社などがつながります。発注者や元請がLCA算定に必要な情報を集めるようになると、現場に近い会社にも問い合わせが来ます。

たとえば、今後は次のような情報整理が求められる可能性があります。

  • どの建材・設備を使ったか
  • 数量や仕様をどのように記録しているか
  • メーカーや品番、性能情報を追えるか
  • 施工段階の情報を後から確認できるか
  • 見積・発注・出来高・竣工書類の情報がつながっているか

制度の細部はこれからです。ただ、流れとしては、「環境対応」は現場の善意ではなく、書類・データ・調達管理の問題になっていくと見ておくべきです。

中小建設業が今から見るべきなのは、算定方法そのものより「情報の持ち方」です

LCAの専門計算を、すぐに各社が内製する必要があるとは限りません。

むしろ中小建設業にとって先に効いてくるのは、日々の管理です。

見積書。発注書。納品書。施工体制台帳。竣工図書。設備機器表。材料承認。写真台帳。

これらがバラバラに保管されていると、あとから「この工事で何をどれだけ使ったか」を確認するだけで大きな負担になります。逆に、普段から情報が整理されている会社は、元請や発注者からの追加要請にも対応しやすくなります。

つまり、今回の制度づくりは、単なる脱炭素の話に見えて、実際には中小建設業の業務管理・原価管理・デジタル活用の成熟度を問う話でもあります。

これから強くなる会社は「環境対応」を営業材料にも変えられます

LCA対応は、手間が増える話として受け止められがちです。

もちろん、最初は書類や確認事項が増える可能性があります。現場も管理部門も、慣れるまでは負担を感じるはずです。

ただ、見方を変えると、これは差別化にもなります。

発注者が環境性能を重視する案件では、必要な情報を正確に出せる会社が選ばれやすくなります。元請にとっても、協力会社から情報が集まらないことは大きなリスクです。

中小・専門工事会社であっても、材料・設備・施工情報をきちんと残し、必要な時に出せる体制があれば、現場力に加えて「管理品質」も評価されます。

これは、価格競争だけに巻き込まれないための一つの武器になります。

今の段階でやっておきたいこと

制度の詳細は、今後の検討会資料や議事要旨で明らかになっていきます。現時点で過度に構える必要はありません。

ただし、2028年度開始が示されている以上、次の点は少しずつ確認しておきたいところです。

  1. 自社が大規模事務所案件に関わっているか、または今後関わる可能性があるか
  2. 材料・設備の仕様、数量、メーカー情報を後から追える状態か
  3. 見積、発注、施工、竣工書類の情報が社内で分断されていないか
  4. 元請や設計者から環境情報の提出を求められた時の窓口が決まっているか
  5. 紙・Excel・システムのどこに何の情報があるかを説明できるか

大きな投資をいきなり行う必要はありません。まずは、「工事情報を後から取り出せる会社」になっているかを確認することが第一歩です。

制度対応を、現場と経営の整理につなげる

建築物LCA制度は、まだ詳細が固まり切っている段階ではありません。だからこそ、今は慌てるよりも、自社の仕事の流れを点検する良いタイミングです。

「うちの場合、どの案件から影響がありそうか」 「材料や設備の情報管理をどこまで整えればよいか」 「原価管理やデジタル化と一緒に考えられないか」

こうした整理は、制度対応だけでなく、利益管理や元請対応力の強化にもつながります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。建設企業がものづくりに集中できる状態をつくるために、制度対応をきっかけにした業務整理も一緒に考えられます。

「何から整理すべきかわからない」という段階でも問題ありません。無理な営業はいたしませんので、自社への影響を一度落ち着いて確認したい方は、こちらからご相談ください。

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