退職者の現場を社長が補いながら、新しい取引先を増やしたい専門工事会社
新規営業を進めたい気持ちはあっても、退職者の現場業務を引き受けた社長が、開拓に動く時間を確保できない状況です。
相談があったのは、中国地方の日本海側で通信設備関連の施工を手がける、小規模な専門工事会社です。年商は4,000万円台。既存の取引を続けながら、新しい取引先を増やしたいと考えていました。
ただ、従業員の退職が重なっています。その分の仕事が、社長に回ってきていました。
「人が減って、その社員の分がこちらに回ってきているので、自由に動けないんです」
現場をカバーしてくれる人がいれば、社長も動けます。ただ、その体制が整うまで、新規開拓をすべて止めておきたいわけではありません。
既存先からの仕事も、自社の人数が増えれば、そのまま増えるとは限りません。取引先側の案件量に左右されます。相手の人手が足りないときに依頼が増え、体制が整うと減る仕事もありました。
この会社にとって新規営業は、単に大きな現場を取りに行くことではありません。今の人数でも対応できる仕事を、既存先以外からも受けられるようにする取り組みです。
候補探しから追客まで社長が抱えると、現場対応の間に営業が止まる構造
整理したいのは、社長が営業をするかどうかではなく、営業のどの工程に社長の判断が必要かです。
新規開拓には、いくつもの作業があります。候補を探す。会社を調べる。連絡先をまとめる。電話などで接触する。打ち合わせをする。見積もりにつなげる。その後も連絡を続ける。
これを一つの「営業」として社長が抱えると、現場に出ている間は、前にも後ろにも進みにくくなります。
相談では、開拓候補のリストが提示されました。社長の反応は、「系統としては合っていると思います」というものでした。一方で、実際に仕事が合うかどうかは、資料だけでは判断できません。
候補が見つかることと、受注できることの間には、まだ確認すべきことがあります。その地域に案件があるか。どんな施工を頼みたいのか。何人必要なのか。今の自社で対応できるのか。
ここを確かめる実務まで社長に集中すると、リストがあっても接触が進みません。接触できても、その後の連絡が止まりやすくなります。
候補リストやアポイントだけではなく、受注までの各工程に担当を置くことが、営業を続けるための課題です。
一人で対応できる短時間の工事と、人数に柔軟な取引先を求める事情
営業先の選び方は、会社の知名度や売上規模よりも、自社が対応できる施工内容と必要人数に左右されていました。
社長が希望していたのは、長期間にわたって人数を固定する現場より、少人数で対応できる仕事です。
「何週間、何か月と触る現場よりも、午前中で終わるような仕事が一番いいですね」
「一人で行ける案件」という言葉もありました。実際に、既存の仕事には1時間ほどで終わる施工もあります。
人員が流動的ななかで、先に一定の人数をそろえることが前提になる仕事は、受けにくい状況です。会社の規模が戻ってきた段階なら挑戦できても、今の開拓先としては慎重に見たい。その判断には、現場の事情がありました。
長く付き合っている取引先には、人数が足りないときに相手側から人を出してもらえる関係もあります。
「人数がそろわなくても、向こうから一人来てもらうなど、柔軟に対応してくれるんです」
ただ、この柔軟さには、長年の付き合いも関係しています。同じ施工分野の会社だからといって、新規先でも同じ対応をしてもらえるとは限りません。
地域の事情も確認が必要です。都市部に本社がある会社を候補にしても、自社の施工エリアに仕事があるかは別の話です。
社長の頭の中にある「受けやすい仕事の条件」を共有しなければ、営業を任せても、対応しにくい案件ばかり集まる可能性があります。
営業を六つの工程に分け、施工判断は社長に、接触と継続連絡は担当者に置く進め方
社長には施工と受注の判断を残し、調査・接触・継続連絡を社内外へ分ける形から考えると、現場に出ながらでも営業を進めやすくなります。
最初から営業全体を任せる必要はありません。まずは、次の六つに分けて、誰が進めるかを整理します。
- 候補選定: 社長が、増やしたい施工内容と避けたい仕事の条件を示します。担当者は、その条件に合う会社を調べます。
- リスト作成: 担当者が、施工分野、拠点、連絡先などをまとめます。過去に取引があった会社も、社長に確認します。
- 初回接触: 担当者が電話などで連絡し、自社の施工エリアに案件があるか、協力会社を探しているかを確認します。
- 打ち合わせ: 担当者が事前確認を進め、社長は施工内容や必要人数の判断が必要な場面に参加します。
- 見積もり: 社長が対応可否と施工条件を確認します。見積もりに必要な情報の収集や、その後の連絡は担当者と分担します。
- 追客: 担当者が接触先の反応と次の連絡を管理します。具体的な依頼が出た段階で、社長へ判断を戻します。
任せ先を選ぶ基準は、「営業が得意そうか」だけではありません。調査に時間を使えるか。継続して連絡できるか。施工内容を理解し、判断が必要なところで社長に確認できるか。この点を見たいところです。
社内にその時間を確保できる人がいなければ、外部支援も選択肢になります。ただし、外部支援に任せる場合も、対応できる施工内容・人数・工期の条件は、最初に共有する必要があります。
この会社なら、「少人数で対応できる」「短時間で終わる仕事を優先したい」「長期間、人数を固定する現場は今は難しい」といった条件です。人数不足への柔軟な対応も、既存先と同じ前提にせず、新規先ごとに確かめます。
接触方法も、社長とすり合わせます。電話で進めるのか。問い合わせフォームを使うのか。会社名をどう伝えるのか。依頼後に認識の違いが出ないよう、動き始める前にそろえておきます。
外部支援の範囲は、アポイント獲得だけで終わらせないことが大切です。打ち合わせへの同席、見積もりに向けた確認、その後の連絡まで、どこを担うのかを明らかにします。
最初の目標は、今の体制で対応できる小さな案件です。相手の規模が大きくても、自社が受けられる仕事がなければ、受注にはつながりません。架電数だけでなく、対応可能な案件の話が出ているか、見積もりに進んでいるかを見ながら、候補を見直します。
そして、営業の経過を会社に残します。接触先、相手の反応、地域の案件の有無、必要人数、見積もりの状況、次に連絡する時期を記録します。
受注できた理由だけでなく、進まなかった理由も残すことで、次の営業先と伝え方を選ぶ材料になります。 外部支援を利用するなら、その記録を自社でも確認し、引き継げる形にすることまで確かめたいところです。
まとめ
社長が現場に出ている会社でも、営業のすべてを社長が担う必要はありません。 候補選定から追客までを分ければ、社長が判断する仕事と、任せられる実務が見えてきます。
その前提になるのは、今の会社で受けられる仕事を具体的にすることです。一人で対応できるか。短時間で終わるか。人数の調整が可能か。地域に案件があるか。こうした条件を共有してから接触を進めます。
外部支援も、連絡件数やアポイント数だけではなく、小さな案件の受注までどうつなぐかで考えます。相手の反応と追客状況を記録すれば、次の動きも決めやすくなります。
まずは、「社長が決めること」と「社長が現場にいても進められること」を分ける整理から始めてみてはいかがでしょうか。
現場に出ながら進められる営業の分担を整理したい方へ
「うちの場合、どこまで任せられるのか」「今の人数で受けられる仕事を、どう営業先に伝えればよいか」。まだ整理しきれていない段階でも、ご相談いただけます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。新規営業では、施工体制に合う候補の選び方から、接触、見積もりに向けた確認、追客までの役割分担を一緒に考えます。
まずは、自社で進める部分と、社外の力を使う部分を整理するところからで大丈夫です。 無理にサービスの利用を勧めることはありませんので、気軽にご相談ください。