生産設備の電気制御を強みに、工場の請負工事を増やしたい会社の現在地
工場の電気工事を増やすには、営業先の業種を決める前に、自社がどの工事を任せてもらいたいのかを揃えることが出発点です。
ある電気工事会社は、社員20名強の体制で、首都圏と九州の現場に対応しています。大半は他社の現場に応援として入る仕事ですが、今後は自社で請け負う工場案件を増やしたいと考えています。
請負工事で経験があるのは、生産設備に関わる電気制御です。制御盤や分電盤の一次側・二次側の配線、タイマーの配線、設備の撤去・新設に伴う電気工事、制御盤内の改造などに対応してきました。増やしたいのは、工場という建物の電気工事全般ではなく、こうした生産設備に近い仕事です。
社長が最も経験を積んできたのは、ゴム製品の製造工場です。一方で、食品工場で機械を導入する際の工事経験もあり、生産設備に関わる電気工事には業種をまたいで活かせる部分があると捉えています。
ただし、施工管理を担えるのは現時点では社長だけです。社員には経験の浅い人が多く、受注後の現場対応まで考えると、工場であればどこでも営業できる状態ではありません。営業先の選定には、得意な工事と現在の対応体制の両方を織り込む必要があります。
慣れた製造業種だけでは候補が限られ、工場全般では仕事の違いを見極めにくい状態
開拓先を業種名だけで選ぶと、候補を狭めすぎるか、自社に合う仕事かどうか分からないまま広げるかの二択になりがちです。
この会社にとって、経験のあるゴム製品工場は優先したい営業先です。理由は、その業種なら必ず高い利益が出るからではなく、社長が設備や工事の勝手をよく知っているからです。経験がある分、仕事の内容を把握しやすく、自社が役に立てる範囲も判断しやすくなります。
一方、特定の製造業種に限定すると、営業できる工場の数は限られます。さらに対応地域まで絞れば、候補は一層少なくなります。そこで他業種の工場にも広げたいものの、相談では「工場によって、やることが違うことも結構多い」という話もありました。
この違いを残したまま「生産設備のある工場なら対象」と広げても、営業の優先順位は決まりません。機械があることと、自社の経験がその工事に合うことは別だからです。
整理したいのは、得意な業種に絞るか、他業種にも広げるかという二択ではありません。慣れた業種を優先しつつ、実際の施工内容が近い候補へ、どの順番で広げるかという問題です。
工場での対応経験と、現場を請け負って管理する力の違い
営業先を判断しにくい背景には、工場で作業した経験と、自社で工事を請け負える範囲が、同じ言葉で扱われやすいことがあります。
この会社は、応援として非住宅の幅広い現場に入ってきました。ただ、その経験をすべて「自社で一式を請け負える工事」として扱うことはできません。応援で担当した作業と、請負として自社が管理した工事では、担った範囲が異なるためです。
工場との取引についても、理想は直接受注です。しかし、工場から直接任される場合と、工場案件を持つ元請会社から工事の一部を任される場合では、自社に求められる役割が変わります。相談では、まず元請会社から現場を任せてもらう形が、現在の体制に照らした進め方として挙がっていました。
地域にも、現在と将来の違いがあります。社長は佐賀県の現場に常駐しており、今動きやすいのは九州側です。一方、社員の多くは東京都・千葉県側で応援業務に入り、将来は首都圏で請負工事を増やしたいと考えています。
つまり、経験のある工事、任せてもらえる範囲、社長が対応できる地域が、まだ完全には重なっていません。営業先の適合度は、施工経験だけでなく、誰が管理し、どこで対応できるかまで含めて見る必要があります。
既存実績を分解し、施工内容・受注経路・対応地域で開拓先を絞る進め方
既存実績を工事内容・設備・対応経験に分け、近い仕事から候補を選ぶと、得意分野を活かしながら営業先を広げやすくなります。
まず「どの工場か」ではなく「何を担当したか」を整理する
最初に整理したいのは、工場名や製造業種の一覧ではなく、その工場で自社が担当した内容です。この会社であれば、次の三つに分けると、営業先との比較がしやすくなります。
- 工事内容:盤の一次側・二次側の配線、タイマー配線、設備の撤去・新設に伴う工事、制御盤内の改造
- 対象となった設備:生産設備、制御盤、分電盤、食品工場で導入した機械など
- 対応経験の範囲:応援として担当した作業か、自社で請け負った工事か、社長が施工管理まで担ったか
この整理によって、「ゴム製品工場に強い」という説明を、「生産設備に関わる配線や制御盤改造の経験がある」という説明に置き換えられます。業種の実績は残しながら、他業種の相手にも伝わる施工能力として示せるようになります。
大切なのは、経験を広く見せることより、実際に担当した範囲を明確にすることです。営業先も、自社に任せられる工事を判断しやすくなります。
慣れた業種から、工事内容が近い領域へ広げる
候補を広げる順番は、経験のある製造業種を第一候補とし、次に実際の対応経験がある他業種、その後に施工内容の近さを確認できる工場とすると整理しやすくなります。
この会社なら、まずゴム製品工場を優先します。次に、機械導入時の電気工事を経験した食品工場などを検討します。それ以外の工場については、「機械があるから対応できる」とは置かず、必要な工事が既存実績とどこまで重なるかを確認して判断します。
同業種でも、工場ごとに設備や作業内容は違います。そのため、慣れた業種であることは優先する理由にはなっても、施工内容の確認を省く理由にはなりません。
営業先を広げる基準は、業種の近さだけではなく、経験のある工事との重なりです。 候補が少ない場合も、すぐに工場全般へ広げるのではなく、既存実績との共通部分が説明できるところから追加していきます。
工場への直接営業と、元請会社への営業を分ける
工場から直接仕事を受ける開拓と、工場案件を持つ元請会社から仕事を受ける開拓は、候補を分けて考えます。どちらも工場案件につながりますが、営業時に確認すべき役割が異なるためです。
直接取引を目指す場合は、工場が依頼したい工事の範囲を、自社で管理して対応できるかが判断の中心になります。元請経由の場合は、元請会社が持つ工場案件のうち、どの工事を自社に任せてもらえるかを確認します。
施工管理が社長に集中している現在の体制では、まず元請経由で、自社の経験に合う範囲の工事を任せてもらう方向が検討しやすいでしょう。ただし、元請経由なら必ず負担が小さいとは限りません。任される範囲と管理上の役割を確認したうえで選ぶことが前提です。
直接取引を将来の目標に置きながら、当面の開拓先は、現在の体制で引き受けられる役割から選びます。 受注経路と、自社で請け負う工事の範囲を分けて考えることがポイントです。
今動ける地域と、将来増やしたい地域を分ける
地域の優先順位は、社員の所在だけではなく、施工管理を担う人が動けるかで判断します。この会社では首都圏に社員が多くても、社長は九州の現場に常駐しています。人がいる地域と、すぐに請負工事へ対応できる地域は同じではありません。
当面は社長が動きやすい佐賀県周辺の候補を優先し、首都圏は将来の開拓先として並行して整理する考え方ができます。首都圏の候補に接点を持つ際も、現場対応が可能になる時期や、任せてもらう範囲を分けて考えます。
候補の一覧には、業種や所在地に加え、次の情報を揃えると優先順位をつけやすくなります。
- 自社の既存実績と重なる工事内容
- 工場との直接取引か、元請経由か
- 自社に任される施工・管理の範囲
- 社長が対応できる地域か、将来の対象地域か
不明な項目は、適合していると見なさず、次に確認する事項として残します。工事内容が近くても地域対応が難しければ当面の優先度を下げ、動きやすい地域でも経験との重なりが薄ければ確認を先に進めます。
こうすると、候補の数を増やすこと自体ではなく、受注後まで見通せる相手に営業を集中できます。
まとめ
工場の電気工事の開拓先は、得意な業種を入口にしながら、実際の施工内容との適合度で絞ることが基本です。
生産設備の電気制御や制御盤改造の経験があれば、その内容を工事・設備・担当範囲に分解することで、他業種にも活かせる部分が見えてきます。ただし、生産設備があるだけで同じ仕事になるわけではなく、同業種の工場でも内容の確認は必要です。
さらに、工場との直接取引と元請経由の受注を分け、施工管理を担える人と対応地域に合わせて優先順位を決めます。将来の理想と当面の営業先を分けておけば、直接取引を目指しながら、現在の体制に合う工場案件を探せます。
まずは既存の工場実績を整理し、「何を任せてもらいたいか」「どこまで自社で対応できるか」を明確にするところから始めると、次に営業する相手を選びやすくなります。
自社の施工実績から、次に開拓する工場案件の整理
営業先がまだ決まっていない段階でも、施工実績と現在の体制を整理することから相談できます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。工場案件の開拓では、得意な工事の整理、候補となる工場や元請会社の選定、対応地域の優先づけから、実際のアプローチまで一緒に進めます。
「うちの経験は他業種でも活かせるのか」「直接取引と元請経由のどちらから始めるか」といった段階でも構いません。無理にサービスをお勧めすることはありませんので、自社の場合の整理先としてご相談ください。