外注中心の施工体制で、新築の一式請負を増やしたい建設会社
増やしたいのは、単に工事件数ではなく、新築を一式で任せてもらえる法人取引です。
栃木県のある建設会社では、原状回復工事を事業の柱にしながら、注文住宅の施工も手がけていました。現在は自社の職人を増やすよりも、代表らが管理を担い、外注の協力業者を中心に工事を進める方向へ体制を見直しています。
そのなかで、代表が希望していたのは、不動産会社や設計事務所から新築工事をまとめて受けることでした。
「今、一番欲しいのは原状回復ではなくて、新築のBtoBなんです」
すでに複数の法人から新築工事を受けており、ある取引先からは年間4〜5棟ほどを請け負っています。対応の中心は木造です。一般住宅に加え、木造の低層アパートや店舗・テナントも対象として考えています。
一方で、鉄骨造やRC造は現時点では対象にしていません。管理を担う少人数の体制で、年間18棟程度までは対応できるという見立てもありました。
ここで揃えておきたいのは、「不動産会社の仕事なら何でもよい」のではなく、自社の施工体制に合う新築の一式請負を増やしたいという前提です。
既存業者や内製体制のある不動産会社には、一式請負の入り口が見つかりにくい状況
新築を販売している会社でも、新たな一式請負先を必要としているとは限りません。
地場の不動産会社に接点をつくろうとしても、「長く付き合っている工事会社がいる」「すでに施工体制を持っている」という壁があります。新築事業を行っているという情報だけで営業先を選ぶと、話はできても、希望する工事につながらないことがあります。
相談先の代表が気にしていたのも、このずれでした。相手が探しているのは、建築一式を担う会社ではなく、決まった単価で内装やクリーニングを請ける業者かもしれません。
「クロスの単価はいくら、クリーニングはいくら、という話になると、そもそも対象が違うんです」
一式請負の募集であっても、発注側の単価が固定され、自社から見積もりを提案する余地がなければ、外注中心の体制では合わない場合があります。
つまり、営業先の見極めでは、新築案件の有無だけでなく、「どこまで任せたいのか」「見積もりを協議できるのか」まで確認する必要があります。
既存の施工会社がいること自体を、すぐに対象外とする必要はありません。ただし、その体制で何が足りていないのかが見えなければ、新しく入る理由もつくりにくくなります。
集客できても、積算と分離発注を担う人の確保が新築事業の負担になる構造
有望なのは、営業や集客の力がありながら、工事を動かす体制に負担を抱えている会社です。
代表が挙げていたのは、不動産業を本業としつつ、自社ブランドで注文住宅を販売したい会社でした。土地や住宅の営業はできても、それを建てる実行部隊を必要としている会社です。
分離発注で新築工事を進める場合、各工種の業者を手配するだけでは終わりません。積算、見積もり、発注、工期の調整、現場管理を担う人が必要になります。
代表の話には、社長一人で分離発注を回している会社や、営業担当者が現場監督・積算・見積もりまで兼ねている会社も登場しました。
「分離発注は、工期もあるし、現場を見る人も置かなければならない。積算ができる人も必要なんです」
ある取引先では、営業・設計・積算などの担当者が辞めるたびに、誰がその仕事を引き継ぐかが課題になっていたといいます。そこで、新築を一式で受ける施工会社に任せれば、工事側の管理負担を減らせるという期待が生まれていました。
ただし、人の入れ替わりは、受注の継続にも影響します。その取引先では、新築事業を拡大する計画があったものの、担当者の退職などが重なり、相談企業への発注も想定どおりには続いていませんでした。
ここから見える判断軸は二つです。「工事管理を任せたい事情」があるか。そして、「新築を継続して受注できる営業体制」があるか。 片方だけでは、安定した取引になるとは言い切れません。
工事管理をまとめて任せたい会社を、自社の対応範囲と施工余力から絞る営業先選び
営業先は、業種名や知名度ではなく、発注側の負担と自社が引き受けられる役割の重なりで選びます。
集客・営業と工事管理を分けて確認する
まず対象にしたいのは、自社で新築の集客・営業を行い、施工を外部に任せたい不動産会社や設計事務所です。そのなかでも、分離発注や現場管理に手間がかかっている会社は、一式請負の価値を話し合いやすい相手になります。
初回の接点では、次の点を確認すると、希望する取引とのずれを整理しやすくなります。
- 新築の集客・営業を自社で行っているか
- 積算、発注、現場管理を誰が担っているか
- 求めているのは工種別の業者か、建築一式を担う会社か
- 発注単価が固定されているか、自社の見積もりを提案できるか
- 現在の受注棟数と、今後任せたい棟数はどの程度か
大手だから外す、地場企業だから狙う、という分け方だけでは十分ではありません。会社の規模よりも、一式で任せる必要性と、見積もりを協議できる余地を優先するほうが、今回の施工体制には合っています。
反対に、分離発注を担う人員が揃い、その仕組みで問題なく回っている会社は、営業の優先度を下げる判断もできます。相手にとって、体制を変える理由が小さいためです。
施工力だけでなく、工事の窓口一本化を提案する
提案の中心は、「木造住宅を建てられます」だけではありません。積算・発注・現場管理・工事に関する相談窓口をまとめて引き受け、発注側が営業に集中しやすくすることです。
相談先の代表も、分離発注より一式請負のほうが高くなることを前提にしていました。その分、施工会社側が管理を担い、工事に関するクレームにも対応するという考えです。
この価値は、工種別の単価だけでは伝わりにくいものです。相手が現在担っている積算や発注、現場管理と照らし合わせて、何を任せられるのかを具体的に説明する必要があります。
その際には、どこまでを施工会社が受け持ち、どこを発注側に残すのかも揃えます。「一式で対応できます」という一言より、相手が手放したい業務と、自社が担える範囲を一致させることが大切です。
年間施工余力と継続案件の見込みから、開拓エリアを決める
営業先を広げる前に、自社の対応構造・用途・年間施工余力を明確にします。相談企業なら、木造を中心に、住宅・低層アパート・店舗を対象とし、既存案件に加えて何棟受けられるかを整理するところが出発点です。
営業リストも、会社名を並べるだけではなく、相手の反応を残していく形が合っています。一式請負に関心があるのか、既存体制で足りているのか、固定単価での発注なのか。それを記録し、対応エリアを少しずつ広げていきます。
継続性の確認では、将来の拡大計画と、現在の受注実績を分けて見ます。年間の目標棟数が大きくても、営業担当者の退職などで契約が止まれば、施工側への発注も止まるためです。
また、発注元の本社が県外でも、工事場所が自社の対応エリア内なら候補になります。見るべきなのは本社所在地よりも、実際にどこで工事が発生するかです。
遠方への展開について、代表は「継続して仕事をくれる会社が見つかれば、その地域の外注部隊をつくれる」と話していました。
エリア拡大は、継続案件の見込みと現地の協力業者体制をセットで判断します。 単発の案件に合わせて広げるより、継続して管理できる条件を確認してから進めるほうが、自社の施工余力を活かしやすくなります。
まとめ
新築の一式請負を増やすには、「新築を売っている会社」から「新築の工事管理を任せたい会社」へ、営業先の見方を一段深めることが有効です。
集客・営業はできる一方で、積算、分離発注、現場管理を社長や営業担当者が兼ねている。担当者の退職で、工事を回す体制に負担が出ている。こうした事情が、一式請負を検討する入り口になります。
提案するのは、施工だけではありません。工事の管理と窓口をまとめることで、発注側の負担を減らすことです。ただし、その価値を話し合える見積もりの余地と、継続受注の見込みは確認しておきたいところです。
まずは、自社が対応できる構造・用途・年間棟数を整理し、それに合う相手の発注体制と受注状況を確かめる。 この順番なら、営業先を増やす動きと、無理なく施工する体制をつなげられます。
新築の一式請負につながる営業先を整理するために
「うちの施工体制なら、どんな会社を優先すべきか」という段階から、営業先を整理できます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。新築の法人受注についても、対応できる工事と管理体制を踏まえ、営業先の選び方や提案する役割を一緒に整理します。
狙うべき不動産会社や設計事務所がまだ明確でなくても構いません。何から整理すべきかを考えるところからご相談いただけます。無理にサービスをおすすめすることはありませんので、自社に合う開拓の進め方を考える機会としてお声がけください。