足場工事が売上の大半を占める、少人数の専門工事会社の新たな受注構想
足場工事を減らしたいという相談の中心にあったのは、本業から離れることではなく、足場が必要になる仕事を自社で受注したいという考えでした。
岐阜県にある、正社員5名ほどの専門工事会社です。複数の一人親方や協力業者と施工を進めており、売上の8〜9割を足場工事が占めています。住宅や工場の現場に対応し、取引先には塗装会社、板金会社、住宅会社などがあります。
足場工事の取引先は幅広く、特定の1社に受注が偏っているわけではありません。それでも、今の受注をそのまま増やすのではなく、仕事の取り方を変えていきたいという意向がありました。
その接点になるのが、取り組み始めた遮熱シートによる遮熱工事です。同社が対象としている遮熱工事では、施工に伴って足場が必要になります。遮熱工事を自社で受注できれば、その足場工事も自社で担えるという構想です。
まだ取り組みを始めた段階であり、受注の安定化や収益改善が実証されたわけではありません。ここで整理したいのは、新しい工事の売上を増やすだけでなく、既存の足場技術を使う機会まで自社で生み出す受注の考え方です。
取引先が多くても、受けたい足場工事を選びやすいとは限らないという悩み
受注先の数が十分にあることと、望む条件の仕事を選べることは別です。 同社では、既存取引先から仕事が入る一方で、単価の低い案件や、今後は受注を抑えたい取引もありました。
足場工事は、取引先が獲得した塗装や改修などの工事に伴って発注されます。そのため、既存取引先からの依頼を受ける形だけでは、自社が増やしたい仕事と、実際に入ってくる仕事が一致するとは限りません。
人員を増やして施工できる量を広げても、受注の中身が変わらなければ、条件を見直したい案件まで増える可能性があります。相談の焦点は、単に仕事量を確保することではなく、今の取引を支えながら、受けたい仕事へ徐々に移れる状態をつくることでした。
そのための選択肢として挙がったのが、遮熱工事から足場工事を生み出す方法です。他社が工事を獲得するのを待つだけではなく、足場が必要になる施工そのものを自社の受注にしていく。受注の入口を持つことで、既存の依頼を受け続ける以外の選択肢を増やそうとしていると捉えられます。
遮熱工事に伴う足場を自社で担えることが、本業との接点
遮熱工事への取り組みには、すでに持っている足場の施工力を活用できるという理由がありました。 本業とは関係のない事業を増やす構想とは、この点が異なります。
相談者は、その狙いを「遮熱を取れるようになれば、自分で足場の工事もつくれる」と説明していました。遮熱工事と足場工事を別々の事業として伸ばすのではなく、一つの受注から両方の施工につなげる考えです。
この見方をすると、「足場の割合を減らしたい」という言葉の意味も変わります。足場の技術を使わなくするのではありません。既存取引先から足場だけを受ける案件への依存を下げ、遮熱工事に付随する足場も含めて、自社で仕事を組み立てたいという意向です。
背景には、住宅の足場案件を多く扱うことによる調整負担もありました。日々異なる現場を組み、天候で予定が崩れると複数の取引先や施工者との再調整が必要になります。新しい受注を考える際には、売上だけでなく、現場を回せるかどうかも外せません。
ただし、遮熱工事を増やせば、その負担まで自動的に減るとは言えません。本業と接点があることは取り組む理由になりますが、受注できることと、無理なく施工できることは分けて確かめる必要があります。
遮熱の受注と足場の施工体制を確かめながら、既存案件を段階的に見直す進め方
先に既存の足場案件を減らすのではなく、遮熱工事を受注できる見通しと、付随する足場を担える体制を確かめながら、案件構成を変えていく順番が基本です。
同社の構想を実行に移すうえでは、次の三つを判断軸にすると整理しやすくなります。
- 本業の需要につながるか:受注しようとしている遮熱工事に足場が必要で、その足場も自社の施工につなげられるか。
- 既存の施工体制を活用できるか:正社員や協力業者で担える範囲はどこまでで、既存の足場案件と重なっても対応できるか。
- 見直したい案件の代わりになるか:遮熱と足場を合わせた受注が、単価の低い既存案件を減らすための仕事量や採算につながるか。
まずは、遮熱工事の受注と、それに伴う足場工事を一続きで整理します。遮熱だけの売上を見るのではなく、その施工によって自社の足場工事がどれだけ生まれるかまで確認することが、この構想の判断に直結します。
同時に、足場を自社で担えることと、遮熱工事全体を施工できることは同じではありません。現在の体制で引き受けられる範囲を明確にし、既存案件を抱えたままでも施工を進められるかを確認します。受注を増やしても施工できなければ、狙っていた仕事を継続して受けることが難しくなるためです。
既存取引の見直しは、その確認と並行して進めます。すべての取引を一度に変えるのではなく、単価や利益の薄さ、現場調整の負担から、今後受注を抑えたい案件を整理しておきます。そのうえで、遮熱工事の受注が確保できた段階から、施工の余力に合わせて受け方を見直していく形です。
ここで大切なのは、足場工事の売上比率そのものを目標にしないことです。遮熱工事の売上が増えれば、足場の比率は下がるかもしれません。しかし、それだけでは採算や仕事の選びやすさが改善したかは分かりません。見るべきなのは、遮熱から足場の仕事を生み出せたか、既存体制で施工できたか、見直したい案件を減らす余地ができたかです。
この進め方なら、足場の施工力を維持しながら、新しい受注の入口が本業を支えるかどうかを確かめられます。構想を成果として扱わず、受注と施工の状況を見ながら次の判断を重ねることが、無理のない転換につながります。
まとめ
遮熱工事から足場工事を生み出す考え方は、本業を離れる多角化ではなく、本業の仕事を自社でつくるための受注構想です。
既存取引先が多くても、単価や施工負担の面で、受け方を変えたい仕事はあります。そのときに考えたいのは、依頼先を増やすことだけではなく、自社の技術が必要になる関連工事を受注の入口にできるかどうかです。
ただし、関連性があるだけで成功が決まるわけではありません。遮熱の受注を確保できるか、足場を含めて施工できるか、既存案件の見直しにつながるかを順に確かめます。新しい受注を育てながら既存案件を段階的に見直すことが、仕事を選べる状態へ近づくための一歩です。
遮熱と足場を組み合わせた受注の進め方を整理するために
「うちの施工体制で関連工事まで受けられるか」「既存案件をどこから見直すか」という段階から、整理を始められます。 新事業の方向性が固まっていなくても、今の取引先、受けたい工事、施工できる範囲を並べることで、次に確かめることが見えてきます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、受注と現場の体制を切り離さずに整理し、方針づくりから実行まで支援しています。遮熱工事のような関連領域の受注づくりも、本業とのつながりや、既存案件とのバランスから一緒に考えます。
無理にサービスを勧めることはありません。自社の場合は何から整理すべきか、というところからご相談ください。