前提

約20名の職人と180名規模の協力体制がありながら、現場代理人は数名に限られる大規模修繕会社

千葉県に拠点を置き、東京都と千葉県を中心に大規模修繕工事を手がける、20名弱の専門工事会社があります。

塗装だけでなく、防水、シーリング、下地補修、洗浄、タイル工事まで対応できます。協力会社は十数社。塗装に対応できる人数だけで約180名に上ります。

職人と協力会社の施工力は、ある程度確保できています。前期売上は3億円台で、今期は4億円台を見込むところまで成長してきました。

一方、社員は社長を除けばほぼ全員が職人です。現場管理を担える人材は数名に限られています。

社長はこう話していました。

「塗装だけなら受けられます。でも、足場から全部まとめて、現場代理人も用意してほしいと言われると受けられないんです」

元請会社との接点がないわけではありません。営業活動を続け、大手・中堅の建設会社や管理会社とも契約しています。それでも、塗装工事だけの分離発注は多くありません。

施工力が不足しているのではなく、施工全体を管理できる人材が不足している。この状態が、受注拡大のボトルネックになっています。

課題

一括受注の相談が来ても「現場代理人を出せない」ことで案件化しない状況

大規模修繕では、発注側が工種ごとに会社を分けず、一式で任せたいと考える場面があります。

相談企業にも、塗装以外の工事をまとめて請けられる技術と協力体制があります。しかし、現場代理人まで自社側で用意することが受注条件になると、話が止まります。

「代理人は何人いますかと聞かれて、数名しかいないと答えると、『どうせ埋まっていますよね。また連絡します』で終わってしまうんです」

発注側が足場や現場代理人を用意する案件であれば、施工部分を受注できます。実際、複数社の相見積もりから受注につながった案件もありました。

ただし、発注側が管理体制まで用意してくれる案件だけを待つと、受けられる仕事の幅は限られます。会社の売上規模や知名度よりも、発注方法との相性に左右される状態です。

「売上の大きな会社だから取引したい、ということでもないんです。塗装だけを分離発注してくれる会社のほうが、今の自社には合っています」

この言葉には、現状の受注判断がよく表れています。

取引先を増やすだけでは売上は伸びません。自社の管理体制で受けられる発注形態かどうかまで確認しなければ、契約後も仕事につながらないためです。

背景

案件が決まってから人と資格をそろえる「環境先行型」の成長

同社は、目の前の案件に対応しながら体制を広げてきました。

「現場がたくさん来た。じゃあ人を増やそう、という感じです」

「仕事が来たけど資格がない。じゃあ資格を取ろう、となります」

この進め方は、創業期から成長期にかけては自然です。先に固定費を増やしすぎず、受注に応じて職人や協力会社を増やせるからです。

実際、職人採用は進んでいます。数カ月で約40名と面接し、半年ほどで複数名を採用できました。協力会社の施工力もあります。

ところが、現場代理人や施工管理人材は、職人と同じ増やし方がしにくい職種です。案件に必要な資格、経験、管理能力を満たし、任せられるようになるまで時間がかかります。

さらに、社内には専任の内勤担当者がいません。

「事務、経理、営業、積算、面接まで全部自分です。パソコンを触れるのも自分なので、かなり大変です」

社長自身も現場に出ます。新しい管理者を育てたくても、教育計画をつくり、同行させ、経験を積ませる時間を取りにくい状況です。

そこで同社は、有資格の施工管理人材を探すヘッドハンティング型の採用と、未経験者も対象にした採用を並行して始めました。

職人採用が順調でも、現場代理人は自然には増えません。管理人材については、受注計画と連動した別の採用・育成計画が必要です。

解決

同時稼働する一括案件から必要人数を逆算し、採用・育成・外部活用を組み合わせる体制づくり

最初に整理したいのは、売上目標ではなく、今後受けたい案件の種類と同時稼働数です。

同じ売上4億円でも、塗装の分離発注を複数受ける場合と、足場から仕上げまで一括で受ける場合では、必要な管理体制が変わります。遠方案件を受けるなら、現地で指揮を取れる人材も必要です。

受注候補を、たとえば次のように分けます。

  • 塗装など施工部分だけを受ける案件
  • 発注側が足場や現場代理人を用意する案件
  • 自社で現場代理人を配置し、一式で受ける案件
  • 遠方で継続的な管理が必要になる案件

そのうえで、案件ごとに工期、受注確度、必要な資格・経験、管理者の拘束期間を並べます。

必要な現場代理人数は、売上目標からではなく「管理者が必要な案件の同時稼働数」から逆算するのが現実的です。

たとえば、来期に一括案件を同時に3現場動かしたいなら、その3現場を誰が管理するのかを受注前に決めておきます。現在の管理者が既存案件で埋まるなら、不足人数が見えてきます。

不足分を埋める方法は、一つに絞る必要はありません。時間軸の異なる三つの方法を組み合わせます。

1.直近の一括案件に備える有資格者の中途採用

すでに受注相談が来ている場合は、経験者採用が優先候補になります。施工管理人材に特化した紹介やヘッドハンティングを使い、配置までの時間を短くする方法です。

ただし、「資格がある」だけでは決めにくいところです。大規模修繕の経験、対応できる工種、元請会社との調整力、担当できるエリアまで確認したいものです。

経験者採用では、保有資格だけでなく、自社が増やしたい案件を実際に任せられるかを判断軸にします。

2.社内の職人から管理者候補を決める資格取得と実務育成

中期的には、現場をよく知る職人の中から管理者候補を決める方法があります。

ただし、「資格を取ってほしい」と伝えるだけでは進みにくいものです。本人が職人を続けたいのか、管理側を目指したいのかも確認する必要があります。

候補者が決まったら、資格取得の時期とあわせて、見積もり、工程確認、協力会社との調整、元請対応など、現在の管理者や社長が担っている仕事を段階的に経験してもらいます。

社長一人で育成を抱えると止まりやすいため、誰が何を教えるかまで決めておくことが大切です。

3.発注側や協力会社を含めた外部体制の活用

すべてを正社員だけでそろえる必要はありません。発注側が現場代理人を用意する案件を組み合わせることも、当面の選択肢になります。

また、同社が求めているような「法人として一定人数を抱え、大規模修繕を任せられる協力会社」と組めれば、施工だけでなく管理面を含む体制を補える可能性があります。

ただし、案件ごとに求められる資格や配置条件、契約上の役割は異なります。誰をどの立場で配置できるのかは、受注前に発注側と確認しておく必要があります。

中途採用は直近対応、社内育成は中期の基盤、外部体制は繁閑への対応と、それぞれの役割を分けて考えると組み合わせやすくなります。

案件獲得と人員整備を止めずに並行させる

人がそろうまで営業を止める必要はありません。一方で、受注してから慌てて管理者を探す状態も避けたいところです。

そこで、受注候補ごとに次の確認項目を持ちます。

  • どの工種まで一括で求められるか
  • 現場代理人をどちらが用意するか
  • 必要な資格・経験は何か
  • いつから何カ月拘束されるか
  • 現在の管理者で対応できるか
  • 採用、社内育成、外部体制のどれで補うか

「受注できるか」ではなく「誰が管理するかまで決まっているか」を案件判断の基準にすると、営業と人員整備を並行しやすくなります。

まとめ

仕事があるのに受けられない原因は、職人不足とは限りません。

今回の会社には、20名弱の職人と約180名の協力体制がありました。塗装、防水、シーリング、下地補修などの施工にも対応できます。それでも、一括受注で現場代理人まで求められると、案件を断らざるを得ませんでした。

まずは、今後受けたい案件を発注形態ごとに分け、同時に何現場を動かしたいのかを整理します。そこから必要な管理者数を逆算します。

その不足を、有資格者の中途採用だけで埋めようとすると時間がかかることがあります。社内人材の資格取得と育成、発注側や協力会社を含む外部体制も組み合わせると、選択肢が広がります。

受注機会を逃さない体制づくりでは、職人数ではなく、案件ごとの管理責任を誰が担うかを先に決めておくことが重要です。

自社の受注計画に必要な現場代理人数を整理したい方へ

「案件の相談は来ているが、どの体制なら受けられるのか分からない」「経験者採用と社内育成のどちらを先に進めるべきか迷っている」という段階でも、整理できることがあります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の受注計画と人員体制を確認し、現場代理人や施工管理人材の採用、社内育成、協力会社の活用まで横断して整理しています。案件獲得と体制整備を別々に考えず、実行の順番まで一緒に組み立てます。

まだ方針が固まっていなくても問題ありません。無理にサービスをおすすめすることはありませんので、自社の場合に何から整理すべきかを確認する場としてご活用ください。

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