7名規模の電気工事会社がSNS広告と採用LPに取り組んでいる現在地
ある電気工事会社では、創業者とその家族を中心に、外国人スタッフを含む7名ほどで現場を回していました。設立から数年が経ち、事業を広げるために人を増やしたいと考え、SNS広告や採用LPの活用を進めています。
採用したいのは、電気工事士の資格を持ち、現場を一人で任せられる経験者です。一方で、将来性や相性が合えば、未経験の若手を育てる選択肢もあります。
ところが、既存の採用LPで伝えていたのは、主に「未経験者募集」という情報でした。経営者自身も、次のように振り返っています。
「LPはあるのですが、表面上で『未経験者募集』と言っているだけです。会社が何を目指していて、どんな人に来てほしいかまでは出せていません」
採用LPやSNSの受け皿があっても、自社で働く理由が言葉になっていなければ、応募を検討する材料は十分に伝わりません。
「未経験者歓迎」だけでは資格者にも未経験者にも選ばれにくい採用訴求
採用が難しいとき、求人媒体への追加掲載やSNS広告の増額を考えたくなります。ただ、媒体への露出を増やすだけでは、応募につながらないことがあります。
問題は、媒体そのものよりも、誰に向けた求人なのか、入社後に何を得られる会社なのかが曖昧なまま発信していることです。
たとえば「未経験者歓迎」「経験者優遇」「若手活躍」といった言葉は、応募の間口を広げるうえでは使いやすい表現です。しかし、似た条件を掲げる会社も多いため、それだけでは応募先として選ぶ理由になりにくい面があります。
今回の会社が本当に求めていたのは、単に「電気工事の経験がある人」ではありませんでした。
- 電気工事士の資格を持っている
- 現場を一人で任せられる
- 今後の事業拡大を一緒に進められる
- 経営者の考え方や会社の将来像に共感できる
ここまで具体化すると、伝えるべき内容も変わります。給与や休日だけでなく、どのような仕事を任せるのか、会社をどう成長させたいのか、入社した人にどのような役割を期待するのかまで示す必要があります。
反対に未経験者を採用するなら、資格取得や独り立ちまでの考え方、どのような人なら成長できるのかを伝えなければなりません。
経験者と未経験者では、応募を決める理由も、響く言葉も異なります。両方に当てはまる無難な表現にすると、結果としてどちらにも届かない求人になりやすいのです。
欲しい人材と自社で働く理由を言葉にしないまま媒体掲載が先行した状態
この会社では、「人が増えれば仕事を広げられる」という認識はありました。一方で、会社として何を目指すのか、ほかの電気工事会社と何が違うのかは、まだ明確な言葉になっていませんでした。
経営者の中に考えがないわけではありません。本人も「自分の中には理念のようなものがあると思うが、言葉にできていない」と話しています。
少人数の建設会社では、こうした状態は珍しくありません。日々の現場を優先するなかで、仕事へのこだわりや将来像を整理する機会を持ちにくいからです。家族や長く働く社員とは、細かく説明しなくても意思疎通できることもあります。
しかし、新しく入る人には、その前提がありません。求人情報を見た段階では、次のような疑問を持っています。
- どのような現場を任されるのか
- 経験や資格をどう評価してもらえるのか
- 入社後にどのような成長ができるのか
- 会社は今後どこを目指しているのか
- 経営者や既存社員と考え方が合いそうか
こうした疑問への答えが採用LPや求人原稿にない場合、求職者は給与、休日、勤務地といった比較しやすい条件だけで会社を判断します。条件で集めた人は、より良い条件が見つかれば別の会社へ動く可能性もあります。
また、SNS広告の成功事例を見て、先に広告費を投じるケースにも注意が必要です。SNSは会社の魅力をつくるものではなく、すでに整理された魅力を届ける手段です。
SNS広告、求人媒体、採用LPは集客の入口です。その入口で伝える中身が固まっていなければ、露出を増やしても成果は安定しません。
社員へのヒアリングを起点に採用ターゲットと訴求を一本につなぐ進め方
最初に取り組みたいのは、広告出稿ではなく、社内にある採用材料の整理です。経営者だけで考えるのではなく、現在働いている社員にも話を聞きます。
ヒアリングでは、少なくとも次の内容を確認します。
- なぜこの会社に入ったのか
- 入社前に不安だったことは何か
- 今の仕事で大変なことは何か
- ほかの会社と比べたときの働きやすさや特徴は何か
- これからどのような仕事ができるようになりたいか
- 会社に今後どうなってほしいか
経営者が強みだと思っていることと、社員が入社理由として感じた魅力は、必ずしも同じではありません。社員へのヒアリングによって、普段は当たり前になっている自社の特徴が見つかることがあります。
そのうえで、次の順番で採用の骨組みをつくります。
1.最初に採用する一人を決める
「良い人がいれば」ではなく、最初に採用したい一人の条件を具体化します。
今回の会社であれば、まず経験者を狙うのか、未経験の若手を育てるのかを分けて考える必要があります。資格、経験、任せたい仕事、期待する役割だけでなく、どのような働き方や将来像を求めている人と相性がよいかまで整理します。
採用ターゲットは、応募者を狭めるためではなく、届ける言葉を明確にするために設定します。
2.条件以外の「入社する理由」を言語化する
経験者は、現在の勤務先と比較して転職を判断します。給与だけで動かない人に対しては、今後任せる仕事や会社の将来像が重要になります。
たとえば、経営者と近い距離で事業拡大に関われること、将来は現場をまとめる役割を担えること、会社の成長に応じて仕事の幅を広げられることなどです。ただし、実際に実現する考えがある内容だけを伝えます。
未経験者を採る場合は、どのような人を育てたいのか、資格取得や独り立ちをどう考えているのかを明らかにします。
会社の理念や将来像は、立派な標語をつくることではありません。「入社した人と何を実現したいか」を具体的に説明できる状態にすることです。
3.求人原稿・採用ページ・SNSの順に反映する
ターゲットと自社の強みが固まったら、まず求人原稿の中心となるメッセージをつくります。その内容を採用ページやLPに広げ、SNSでも同じ方向性で発信します。
求人原稿では経験者向けのメッセージを出しているのに、採用LPでは「未経験者歓迎」、SNSでは日常の写真だけという状態では、会社が誰を求めているのか伝わりません。
最低限、次の項目はそろえておきたいところです。
- 求める人物像
- 任せたい仕事
- 会社が今後目指す姿
- 自社で働くことで得られる経験
- 給与や休日などの条件
- 入社後の育成や役割の考え方
求人原稿、採用ページ、SNSで同じ人物に向けて同じ約束を伝えることが、採用発信の一貫性です。
4.反応を見ながら媒体と表現を調整する
骨組みを整えた後に、無料求人媒体、有料掲載、SNS広告などの手段を選びます。判断基準は、流行している媒体かどうかではなく、設定した採用ターゲットが利用しているかどうかです。
掲載後は、閲覧されているか、応募につながっているか、狙った人物から反応があるかを確認します。反応が少なければ、すぐに広告費を増やすのではなく、ターゲット、原稿、採用ページのどこにずれがあるかを見直します。
広告費をかけるのは、誰に何を伝えるかを整えた後です。先に採用の骨組みをつくることで、媒体選びや改善の判断もしやすくなります。
まとめ
SNSで求人を出しても応募が来ないとき、媒体の追加や広告費の増額だけで解決しようとすると、投資が表面的になりやすくなります。
先に整理したいのは、次の3点です。
- 最初にどのような一人を採用したいのか
- その人が自社を選ぶ理由は何か
- 求人原稿、採用ページ、SNSで同じ内容を伝えられているか
その材料は、経営者の頭の中だけでなく、現在働いている社員の入社理由や仕事への実感の中にもあります。
社員へのヒアリングから自社の強みと将来像を言語化し、採用ターゲットに合わせて発信をそろえる。この順番が、SNS広告や求人媒体を活かす土台になります。
自社の採用ターゲットと強みを一度整理したい方へ
「経験者と未経験者のどちらを優先すべきか決めきれない」「会社の良さはあるが、求人原稿の言葉にできない」という段階でも、整理できることはあります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の採用課題について、社員へのヒアリング、求める人物像の具体化、会社の強みや将来像の言語化、求人原稿・採用ページ・SNSの設計まで、実行を見据えて整理しています。
広告を出すべきか迷っている段階でも、まず何を整えるべきかを一緒に確認できます。無理にサービスを勧めることはありませんので、自社の場合はどこから考えるとよいか、気軽にお聞かせください。