ベテランの技能を次につなぐ必要がある内装系の専門工事会社
若手を採用する取り組みと、入社した若手を育てられる体制づくりは、分けて考える必要があります。 鹿児島県にある内装系の専門工事会社でも、採用の先にある育成と定着が課題になっていました。
社内には長年現場を担ってきた職人がいる一方、職人の年齢層は高く、次の世代への技能継承が必要な状況です。若い世代の社員もいますが、これから現場を支える職人を育てていかなければならないという認識がありました。
採用では、近隣の高校に求人票を送り、高卒者を迎える取り組みを進めています。ただ、仕事のきつさもあるなかで、若手に長く働いてもらうことは簡単ではありません。
目指しているのは、まず一年、次に二年と仕事を続け、経験を積むうちに職人としての仕事が見えてくる状態です。その時間を支えるには、本人の意欲だけでなく、現場で教える側の体制も欠かせません。
工事を進めながら教える負担がベテランに重なる育成体制
技能を持つ職人がいることと、若手を育てられることは同じではありません。 この会社では、長年の経験を持つ職人が指導を担うものの、教え方が分からず、周囲の社員がフォローする形になっていました。
従来の「見て覚える」だけでは、若手に十分伝わりにくいという認識もあります。しかし、教えるための余裕があるわけではありません。ベテラン自身が工事を進めながら、若手の作業を見て、必要なことを伝える必要があります。
ここでは、二つの負担が重なっています。一つは、身についた技能を相手に分かるように伝える負担です。もう一つは、自分の施工と若手への指導を同時に進める負担です。育成経験が少なければ、何をどこまで教えるかの判断にも手間がかかります。
そのため、単に「若手には丁寧に接してほしい」と伝えるだけでは、現場の難しさは残ります。受け入れ体制の点検では、教える人がいるかだけでなく、その人に教える適性と時間の余地があるかまで見ることが重要です。
職人向けの学び先が限られ社内の現場教育に頼る事情
育成が現場に集中する背景には、自社が求める技能を外で学べる場所の見つけにくさもあります。 この会社が必要としているのは、設計やCADを中心に学ぶ人材ではなく、現場で手を動かす職人です。周辺の学校や職業訓練の内容を見ても、自社の内装系の作業に合う学び先は限られていました。
そうなると、社内で教えるか、協力会社や一人親方の力を借りることになります。ただし、現場が多いなかで、教え方の上手な職人を育成に回す余力も十分ではありません。
協力会社に若手を預ける方法にも、別の注意点があります。ほかの会社の例として挙がったのは、若手が毎日一人親方と行動する一方、自社の社員とほとんど交流がなく、どのような社員がいるかも分からない状態でした。
外部の職人から技能を学べることは利点です。しかし、それだけで自社への定着まで支えられるとは限りません。技能を教える役割と、自社の一員として若手を支える役割を、誰が担うか分けて考える必要があります。
また、同じ説明を毎回現場で繰り返す形では、指導者の負担を減らしにくくなります。人に任せる範囲を整理するとともに、繰り返し使える教材に置き換えられる部分を探すことが、現場仕事との両立につながります。
指導者の業務量と工程別動画を組み合わせた受け入れ体制
教育体制は、指導者を決めること、社内外の役割を分けること、繰り返し教える部分を教材にすることの三つから整えられます。 すべてを動画にする必要も、社内だけで教え切る必要もありません。現場で人が担う部分を残しながら、その負担を軽くする考え方です。
指導者は技能の高さだけでなく教える適性と業務量で選ぶ
指導者を選ぶ際は、施工技能の高さに加え、相手に伝えることが得意か、教えながら作業を進められる業務量かを確認します。この会社にも、比較的教え方の上手な職人はいました。まずは、そのような人を把握することが出発点になります。
ただし、教えるのが上手だからといって、通常の施工に育成をそのまま上乗せすれば、負担は集中します。指導を任せる判断と、担当する業務量を調整する判断はセットです。
社内に技能を伝えられる人がいても、施工との両立が難しいのであれば、気持ちや工夫だけで補うのではなく、協力会社の力を借りる選択肢も含めて考えます。判断軸は「社内か社外か」よりも、「若手に教える余地を確保できるか」です。
協力会社に頼む範囲と社内で支える範囲を分ける
協力会社や一人親方に育成を依頼する場合は、単に若手を現場につけるのではなく、教えながら作業してもらう役割を共有します。施工を手伝ってもらうことと、若手を育ててもらうことでは、相手に求める関わり方が異なるためです。
そのうえで、外部に技能指導を頼んでも、若手と自社の接点は残します。社内の誰がフォローするかを明確にし、若手が自社の社員と関わりを持てる状態にしておくことが大切です。
外部に任せるのは技能指導の一部であり、若手との関わりまで手放さないことが、役割分担の基本です。 社内で既に行っているフォローを、外部の指導者と組む場合にも途切れさせない考え方です。
工程別動画は視聴で終わらせず実践と習熟確認につなげる
現場で繰り返し伝えている作業については、動画を教材にする方法があります。別の専門工事会社では、職人の作業工程を動画で撮影し、工程ごとの動画をQRコードから見られるよう、紙の資料にまとめていました。
教育の流れは、動画を見て作業を知り、実際に試し、一定の水準に達したことを確認してから次の作業へ進む形です。動画を渡して終わりではなく、実践と確認を組み合わせている点が参考になります。
取り組む際は、次の順序で整理すると、教材と現場指導の役割がつながります。
- 教える作業を工程ごとに整理し、どの作業を先に学ぶかを決めます。
- 各工程の動画をQRコード付きの資料にまとめ、若手が見返せるようにします。
- 視聴後は指導者のもとで実践し、次の作業へ進めるかを確認します。
ここでの判断軸は、作業の様子を事前に知ることで説明を補える部分と、実際の作業を見なければ確認できない部分を分けることです。すべての技能を動画だけで伝える必要はありません。
動画は指導者を不要にするものではなく、説明の繰り返しを補い、現場で実践と確認に向き合うための教材です。 ベテランに動画作成から日々の指導まで一括して任せるのではなく、教材づくりも含めて社内で負担を分ける視点が欠かせません。この方法による定着率の改善までは確認されていませんが、教える負担を分散する取り組みとして検討できます。
まとめ
若手職人の育成と定着を考える際は、採用人数を増やす前に、入社後に誰が、どの余力で、何を教えるかを整理することが出発点です。
長年の技能があっても、教え方が分からず、施工との両立も難しければ、育成は進めにくくなります。教える適性のある人を選び、業務量を調整し、必要に応じて協力会社の力を借りる。その際も、若手を社内で支える役割は残します。
工程別動画とQRコード付き資料は、現場指導を補う手段です。視聴・実践・習熟確認をつなぎ、できるようになったことを確かめながら次へ進む形にすれば、若手にも学ぶ順序が伝わります。
まず整理したいのは、現在教えている人の負担と、繰り返し説明している作業です。そこから、人が関わる部分と教材で補う部分を分けていくことが、現場仕事と両立する教育体制につながります。
若手を迎えた後の教え方と役割分担を整理するために
自社に合う教育体制を考えるには、教材だけでなく、現場の業務量や若手への社内フォローも一緒に整理することが大切です。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。若手育成についても、指導者の負担、協力会社に頼む範囲、動画で補える作業などを、現場の状況に合わせて考えます。
「うちの場合は誰に指導を任せるべきか」「何から整理すればよいか」という段階でもご相談いただけます。無理にサービスをおすすめすることはありませんので、受け入れ体制を見直す際の整理先としてご活用ください。