職長と常時入る職人を軸に、仕事の波に合わせて応援を頼む専門工事会社
普段の現場は回せても、工事が重なる時だけ職人が足りない。かといって、年間を通して人を増やせるほど仕事量は読めない。 ある内装系の専門工事会社が抱えていたのは、このバランスの難しさでした。
現場をまとめる職長は2名ほど。継続して工事に入る職人は7名ほどです。職人全員を社員として雇用する形ではなく、一人親方などとの長い付き合いを軸に施工しています。大きな工事が入れば、以前からつながりのある職人にも声をかけます。
「仕事があったり、なかったりの繰り返しです。ない時に来ても困るし、ある時にいないと困る。そのバランスは、ずっと悩んでいます」
依頼そのものが途絶えているわけではありません。付き合いの長い発注先に加え、別の会社から施工を頼まれることもあります。ただ、時期が重なれば、すべては受けられません。
経営者の意向も、むやみに会社を大きくすることではありません。今の規模を維持しながら、引き受けた工事をきちんと納めたい。その前提で、繁忙期の備えを考える必要があります。
施工する職人の不足が、受けられる仕事の幅を狭める状態
この会社で先に整理したいのは、職長の不足ではなく、実際に施工する職人が足りなくなる時期への対応です。 「人手不足」という一言では、必要な打ち手が見えにくくなります。
経営者に不足している役割を確認すると、答えは「職人ですね」でした。職長も自ら施工しながら、工程を見て、周囲を指導しています。さらに、経験の長い職人に現場を任せられる場合もあります。
「今やっている職人を、職長に据えることもできます。この現場を見てくれ、とお願いできる人はいます」
現場をまとめる人がまったくいないわけではありません。一方で、職長を任せられる人がいることと、施工に必要な人数がそろうことは別です。職長も手を動かす体制だからこそ、役割と人数の両方を見る必要があります。
同じような悩みを整理する時は、まず次の三つを分けてみると考えやすくなります。
- 施工する職人の不足:依頼はあるものの、必要な人数をそろえられない状態です。
- 職長の不足:施工する人を確保しても、現場をまとめる役割が足りない状態です。
- 仕事量そのものの不足:人がいても、継続して任せる工事が足りない状態です。
この会社では、仕事量に波がある一方、繁忙期には施工人数が受注の上限になっていました。単に依頼を増やしても、重なる時期の受け皿がなければ、断る仕事が増えてしまいます。
付き合いのある職人も同時に忙しくなり、応援が集まらない構造
長年のつながりがあっても、繁忙期が重なれば応援は確保しきれません。 声をかける努力が足りないのではなく、頼れる相手も同じ時期に忙しくなることが難しさの中心です。
この会社では、まず普段入っている職人に相談します。その職人にも横のつながりがあります。そこから何人集められるかを確認し、足りない人数を補っています。
「それで大体は回るんです。でも、どうしても回らない時がある。こっちが忙しい時は、他も忙しいですから」
一方、以前付き合いのあった職人から声がかかっても、仕事が少ない時には入ってもらえません。応援を頼める関係があることと、年間を通して仕事を用意できることは違います。
社員として職人を採用することにも、慎重でした。
「コンスタントに、ずっと仕事が入る形にはなりませんから」
閑散期にも人件費を負担できるか。この見通しが立たないままでは、繁忙期の不足だけを理由に採用へ進みにくいのも自然です。
さらに、受注を断る側にも迷いがあります。長い付き合いの発注先を優先すると、関係の浅い会社の依頼から断ることになります。
「一度断ると、もう次が来ないんです」
必ず次の依頼がなくなるという話ではありません。ただ、この経営者には、断った後に声がかからなくなった実感がありました。繁忙期に受けられないことが、新しい取引を続けにくくする。その一方で、仕事の波があるため人も増やしにくい。 この循環を踏まえて、備え方を選ぶ必要があります。
仕事量の安定性と施工余力で選ぶ、応援先の拡充と受注調整
採用を急ぐか、今のつながりだけで乗り切るかの二択にせず、仕事量の安定性と施工余力を見て備えを組み合わせることが出発点です。 この会社のように規模維持を望む場合は、人数を増やすこと自体を目的にしないほうが、判断しやすくなります。
協力会社・一人親方・採用を、同じ目的で比較する
選択肢として挙がったのは、協力会社を増やすこと、一人親方とのつながりを増やすこと、新しく人を採用することの三つでした。どれも職人を確保する方法ですが、支えられる仕事量によって向き不向きがあります。
協力会社の拡充は、既存の応援先だけでは足りない工事への備えです。一人親方との関係づくりは、現在の体制に近い形で、施工に入ってもらえる相手を広げる選択肢です。ただし、どちらも相手に別の仕事があれば、必要な時に頼めるとは限りません。
採用は、継続して施工する体制を持つ選択肢です。その分、繁忙期だけでなく、仕事が薄い時期にも任せられる工事があるかを確かめたいところです。
「何人足りないか」だけでなく、「その人数が必要なのは重なる時期だけか、継続的か」を判断軸にします。 ピーク時だけの不足であれば応援先の拡充を先に検討し、年間を通して仕事を用意できる見通しがあれば採用も比較する、という順序が考えられます。
同じ地域のつながりに加えて、地域外の応援先も探る
応援先を増やす際は、知っている会社の数だけでなく、忙しくなる時期が重ならない相手を探せるかがポイントです。
地元の同業者同士で助け合えていても、全員が同時に忙しくなる時には限界があります。そこで、地域外で手が空いている工事会社を探し、施工につなぐ方法も選択肢に入ります。
実際に、地域外の工事会社から応援先を探してほしいという依頼に対し、つながりのある会社を紹介する支援が行われていました。ただし、地域外なら必ず確保できるわけではありません。既存の関係を大切にしながら、同じ繁忙期に集中しない応援先も探ることが、備えの幅を広げます。
応援で埋まらない分は、工期と施工範囲を相談する
人を探すだけでなく、今の人数でどこまで施工できるかも併せて確認します。この会社では、人手が足りない時に作業期間の延長をお願いし、工事を納めていました。
また、大きな現場では、最初に自社が担う範囲を相談しています。施工できる作業であっても、別の業者へ回してもらう場合がありました。
「ここまでは私たちがやります。他もできないことはありませんが、他の業者に回してください、と相談することもあります」
仕事が少ない時には広く引き受けられても、繁忙期には同じ範囲を抱えきれないことがあります。必要人数を確かめる際は、職人だけでなく職長が見られる現場の範囲も確認します。そのうえで、応援の確保、工期の相談、施工範囲の調整で納められるかを考えます。
対応できない案件は、相手が動けるうちに回答する
調整しても施工できない時は、早く回答することも大切な対応です。この点について、経営者の考えははっきりしていました。
「できない時は、早いところ『今回はできません』と断らないと、相手に大きな迷惑がかかるんです」
返事を延ばした先で施工できなければ、発注先も切迫した状況で別の職人を探すことになります。受けたい気持ちがあるからこそ、判断が難しいところです。
応援を探すことと並行して、工期や施工範囲を相談し、それでも対応できなければ早期に伝える。 受注できるかどうかだけでなく、相手が次の手を打てるかも、回答の判断軸になります。
まとめ
忙しい時だけ職人が足りない会社では、施工する人の不足、職長の不足、仕事量の不足を分けることから整理が進みます。 依頼があるからといって、年間を通した雇用を支えられるとは限りません。一方、仕事に波があるからといって、応援先を広げる余地までなくなるわけでもありません。
まずは、今の体制で施工できる範囲を確認します。そのうえで、協力会社や一人親方との関係を広げるのか、地域外にも応援先を探すのか、継続的な仕事量を見て採用を考えるのかを比べていきます。
人数で埋めきれない部分は、工期や施工範囲の相談へ。それでも難しい案件は、早めの回答へ。会社を大きくするためだけではなく、今の規模で無理なく工事を納めるための備えとして考えてみてはいかがでしょうか。
職人を増やす前に、自社の仕事の波と施工体制を整理したい方へ
「採用するほど仕事は安定していない。でも、今の応援先だけでは足りない」。そんな段階でも、整理できることはあります。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。職人不足についても、採用だけを前提にせず、仕事量の波や職長の体制、協力会社とのつながりを踏まえて、次の一手を一緒に考えます。
「うちの場合は、何から整理すればよいか」というご相談でも構いません。無理にサービスをおすすめすることはありませんので、状況を整理する相手として、お気軽にご相談ください。