前提

アンテナ工事の依頼は日々ある一方、自社集客は一県で始めたばかりの段階

工事の件数を増やすことより、今ある受注から残る利益を増やしたい。そんな段階にあるアンテナ工事会社の相談です。

主力は、一般家庭向けの地上波・BSアンテナの修理や新規設置です。売上の大部分をアンテナ工事が占め、関西に置く自社の施工班に加え、協力会社数社と広域に対応しています。施工を担うネットワークはすでにあり、日々の案件も入ってくる状態でした。

ただし、案件の大半は外部から供給されるものです。自社でお客様から直接依頼を受けるWeb集客も始めていますが、対象は広島県内に限られ、相談時点では数十件ほどの流入にとどまっていました。既存の案件供給と同じ規模で比較できる段階には、まだ達していません。

経営者の意向は明確です。「売上というより、利益を伸ばしたい」。自社集客の割合を大きく高めたいという希望はあるものの、取り組みは準備・検証の途中で、どこまで伸びるかはまだ見通せていませんでした。

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課題

外部の案件を増やすだけでは変わりにくい利益の残り方

整理したいのは受注不足ではなく、案件を獲得するための費用を差し引いた後に、いくら残るかという問題です。

外部から案件を得る仕組みは、仕事量を確保するうえで役立っています。一方、その経路を利用するための費用がかかるため、案件数が増えても、経営者が期待するほど利益が厚くなるとは限りません。

この会社では、自社で集客できれば利益の改善余地が大きいと考えていました。ただ、ここで「外部への費用がなくなれば、その分がすべて利益になる」と捉えると、判断がずれやすくなります。自社集客にもWeb集客の費用がかかり、問い合わせが来ても必ず工事になるわけではないためです。

比較すべきなのは、外部案件の獲得費用とWeb集客の費用の大小だけではなく、それぞれの経路から実際に成立した案件が残す利益です。

問い合わせ数が伸びても、成約しない依頼が多かったり、価格を下げて受注していたりすれば、利益改善という目的から離れてしまいます。直接依頼の割合は大切ですが、それ自体を最終目標にしないことが出発点になります。

背景

相見積もりと施工条件によって、問い合わせがそのまま工事にはならない構造

自社集客の収益性は、問い合わせの量だけでなく、お客様の選び方と現場での成約に左右されます。

相談では、アンテナ工事を希望するお客様が複数社に問い合わせているという話がありました。経営者は、安さだけを求める依頼を広く集めるよりも、施工品質を理解してもらえる内容にしたいと考えています。

また、修理と新規設置では依頼内容が異なり、新しい形状のアンテナを希望されても、設置場所や設備の構造によって対応できない場合があります。問い合わせが入った時点では、希望どおりの工事ができるかまで確定していないのです。

こうした事情から、現場で必要な工事を説明し、見積もりに納得してもらう力も収益に関わります。実際にこの会社では、営業経験を持つ施工担当者もおり、見積もりについての研修も行っていました。

品質については、アンテナの固定や接続部分の処理といった細かな施工の違いが、その後の不具合に関わるという認識を持っています。ただし、これは経営者が強みと考えている点であり、Web上で伝えるだけで成約が増えると確認されたわけではありません。

「品質に自信があること」と「品質を理由に選ばれていること」は分けて確かめる必要があります。 自社集客の検証では、問い合わせが増えたかと同時に、狙っているお客様から選ばれているかを見ることが重要です。

解決

既存の案件供給を残し、一県で直接依頼の利益を確かめる進め方

既存の供給を一度に置き換えるのではなく、地域を絞った自社集客で利益の改善を確認し、その結果に応じて広げる進め方が適しています。

この会社には、すでに日々の案件と協力会社による施工体制があります。その基盤を使いながら、自社集客が利益を生む条件を確認できれば、大きな割合目標だけを頼りに移行を急ぐ必要はありません。

案件を集める費用と、施工するための費用を分ける

まず分けたいのは、「どこから案件を得るか」と「誰が施工するか」です。外部から供給された案件でも自社で施工する場合があり、自社で集めた案件でも協力会社に施工を担ってもらうことができます。

案件の入口ごとの収益性を比べる際は、次の項目を分けて確認します。

  • 外部から案件を得るため、または自社でWeb集客するためにかかった費用
  • 問い合わせのうち、実際に工事が成立した割合
  • 成立した工事の売上と、施工にかかった費用
  • 集客費用と施工費用を差し引いて残る利益

ここで大切なのは、工事になった案件だけを見ないことです。工事につながらなかった問い合わせの獲得費用も含めて比べることで、自社集客に切り替える効果を判断しやすくなります。

比較する期間や費用の範囲をそろえないと、外部案件は費用が高く、自社集客は安く見える、といった偏りが生まれます。直接依頼だから有利と決めず、同じ見方で確認することが先です。

一県での結果を、修理と新規設置に分けて見る

すでに自社集客を始めた県内を、最初の検証範囲として扱います。広域に施工できるからといって、集客対象まで一度に広げる必要はありません。

確認したいのは、問い合わせ数、成約率、成立した案件の利益です。修理と新規設置では条件が異なるため、全体の平均だけでなく、依頼内容による違いも見ます。希望する設備を設置できないケースと、見積もりが合わずに成約しなかったケースも、同じ未成約としてまとめないほうが判断に役立ちます。

そのうえで、数字の動きに応じて次の整理先を変えます。問い合わせ自体が少なければ集客の届き方を、問い合わせはあるのに成約が少なければ依頼内容と施工条件、見積もりの伝え方を確認します。成約しても利益が残らなければ、集客費用や受注価格、施工費用の関係を見直す順番です。

地域を広げる判断は、問い合わせが増えた時点ではなく、成約まで含めて利益が残る傾向を確認してから行います。 始めたばかりの数十件は手応えを得る材料にはなりますが、それだけで広域展開後の収益性まで見通せるわけではありません。

品質を伝える内容と、集まった依頼の中身を照らし合わせる

Web上では、最安値を強く打ち出す方向ではなく、経営者が強みと考える施工品質やサポートを伝える方向が検討されていました。この方針も、利益改善の目的に沿って検証できます。

例えば、相談で挙がった固定や接続部分の処理など、実際に説明できる品質上の違いを整理し、お客様が価格以外も比較できる内容になっているかを確認します。単に「高品質」と掲げるより、何を大切に施工しているかが伝わることが重要です。

同時に、品質を伝えた結果として、どのような依頼が集まり、どの程度成約し、いくら残ったかを見ます。問い合わせを減らさないことより、利益を確保できる受注につながっているかを判断軸に置きます。

自社集客が育っても、自社施工を増やすとは限らない

自社集客への移行と、自社施工班の拡大は別の意思決定です。

経営者は、集客がうまくいけば自社の施工班を持たず、集客に集中する方向も考えていました。すでに協力会社が施工を担う体制があるため、直接依頼が増えた分をすべて自社施工に置き換える必要はありません。

ただし、協力会社に任せれば必ず利益が高くなるという意味ではありません。自社で施工する場合と協力会社が担う場合で、残る利益と、集客時に伝えた品質を提供できるかを確認する必要があります。

まずは今ある施工体制で直接依頼を受け、その結果を確かめる。その後に、自社班を維持するか、集客への集中を進めるかを判断すれば、案件の入口と施工体制を同時に大きく変えずに済みます。

まとめ

外部の案件供給から自社集客へ移る目的は、直接依頼の割合を高めることではなく、案件獲得から施工までを通じて残る利益を増やすことです。

日々の案件がある会社であれば、その供給を維持しながら、一県に絞ったWeb集客を検証できます。問い合わせ数だけで判断せず、成約率と案件ごとの利益まで確認することで、広げるべきか、集客内容や見積もりを見直すべきかが見えてきます。

また、自社で集めた案件を自社で施工する必要はありません。既存の協力会社による施工体制も選択肢に残し、集客の入口と施工の担い手を分けて考えることが、利益を軸にした移行につながります。

自社集客へ移す前に整理したい、案件の入口と利益の関係

「直接依頼を増やしたいが、今の案件供給をどこまで残すべきか」「集客と施工のどちらから整理すればよいか」。そうした段階では、施策を増やす前に、現在の案件経路と費用、施工体制を並べてみることが役立ちます。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。自社集客についても、まずは利益改善の目的と現在の体制を確認し、支援できる範囲や必要な連携先を見極めるところから考えます。

「うちの場合は、何から整理すればよいか」という段階でもご相談いただけます。 無理にサービスをおすすめするのではなく、状況に合う進め方を一緒に整理します。

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