工場の電気工事経験を足場に、大手との取引拡大を目指す専門工事会社
工場での施工経験はある。ただ、若手が育成途上にあるため、大きな工事をすぐに任せられる体制ではない。 この両方を踏まえて開拓先を選ぶことが、受注拡大の出発点です。
ある電気工事会社は、社長を含めて十数名の体制で、工場の電気工事に経験を積んできました。地場の電気工事会社や建設会社とのつながりに加え、大手メーカーのグループとも取引を始めています。
社長が新たに増やしたいのも、経験のある工場系の仕事です。「電気工事にもいろいろありますが、うちは工場のほうに経験があるので、そういう現場を開拓したい」と話していました。
一方、社員はまだ経験を積んでいる若手が中心です。将来は大きな仕事も手がけたいものの、今すぐ対応できるとは考えていません。
目指しているのは、単に有名企業との取引を増やすことではありません。今のメンバーで責任を果たせる仕事から入り、成長に合わせて任せてもらえる範囲を広げることです。
大手の候補は挙がっても、今の体制で受けられる仕事が見えない状態
企業名だけで候補を並べても、自社が受けられる案件があるかどうかまでは判断できません。 大手との接点をつくることと、その先の工事を施工できることは、分けて考える必要があります。
候補として挙がったのは、素材系や電機系など、名前の通ったメーカーとその設備関連会社でした。社長には、どの会社にも挑戦してみたい気持ちがありました。その中で、より関心を寄せたのが、既存の仕事と近そうな製造分野です。
「多分、ほかの工場でも同じようなことをやると思うので」「大きな仕事は将来的にはやりたいですが、今すぐには難しい」。この言葉から見えるのは、知名度よりも、実際に入る現場を想像して選ぼうとする姿勢です。
ただし、そのメーカーなら小さな工事が多い、という点は、まだ社長の見立てでした。実際の案件規模や発注内容は確認が必要です。
人数についても同じです。十数名いるからといって、その全員が同じ範囲の施工を任せられるわけではありません。会社全体の人数ではなく、新しい現場にどのような体制で入り、どこまで責任を持てるかが判断の基準になります。
大手に求めていたのは、支払いの安心だけでなく従業員が力を注げる環境
大手と付き合いたい理由の中心には、従業員が安心して、一生懸命に働く価値を感じられる環境をつくりたいという思いがありました。 支払いへの安心感も、その一部です。
社長は、「一生懸命やるだけの価値がある仕事ができているか。従業員にとって、働く環境も大事だと思う」と話していました。報酬や支払いに問題がなければ、それでよいという考えではありません。
だからこそ、開拓先には二つの条件が重なります。自社の経験を生かせること。そして、社員が長く安心して働ける相手であることです。大手という看板は候補を探す手がかりになりますが、実際の現場や相手との関係まで確かめて選ぶ必要があります。
既存の大手との取引には、社長自身の前職での経験が土台にありました。ただ、実際に現場へ入り始めてからはまだ日が浅く、社長は継続的な評価を語る段階ではないと捉えています。
ここも大切な点です。工場での経験は開拓の足場になりますが、まだ確かめられていない他社との優劣まで、営業上の強みに仕立てる必要はありません。 まず伝えたいのは、どのような工事を経験し、今なら何を任せてもらえるのかです。
既存現場に近い小口案件を起点に、工事内容と施工体制で開拓先を絞る進め方
開拓先は「取引したい会社」から一歩進めて、「今の体制で受けられる工事がある拠点」まで絞ると、動き方が具体的になります。 将来の大型受注を否定せず、最初の一件を現実的に選ぶ進め方です。
既存現場との近さを、候補ごとの確認項目にする
最初に整理したいのは、今の工場で経験している工事と、新しい相手が発注する工事の近さです。同じ製造分野でも、依頼される工事の内容や規模まで同じとは限りません。
候補を比べる際は、次の五つをそろえて確認します。
- 工事内容:既存の工場で経験している電気工事と、どこが共通しているか
- 案件規模:最初から大規模工事ではなく、小口の工事から入る余地があるか
- 対応エリア:自社が対応できる範囲に、対象の工場や設備関連の拠点があるか
- 施工能力:現在のメンバーで、責任を持って対応できる範囲に収まるか
- 働く環境:支払いへの安心に加え、従業員が安心して仕事に取り組める相手か
すべてが分かってから接点をつくる必要はありません。分かっていることと、相手に聞く必要があることを分ければ十分です。「この業種なら工事が小さそう」という見立ては、候補を絞る仮説として使い、確認済みの事実とは分けておきます。
会社名ではなく、工場の工事を発注する窓口まで確かめる
同じ企業につながっていても、販売部門へのつながりと、工場の工事を発注する部門へのつながりは別です。 接点の有無だけで開拓先を決めないことが大切です。
相談の中でも、候補企業へのつながりはあるものの、販売側との関係が中心ではないかという確認がありました。社長からは、購買機能が本社に集まっているのか、工場ごとに分かれているのかによっても変わる、という指摘が出ています。
候補を絞ったら、工事の発注を担うのは工場なのか、購買部門なのか、グループの設備会社なのかを確かめます。紹介や顧問の力を借りる場合も、肩書きや企業名だけではなく、自社が希望するエリアと工事の窓口につながるかを見ると、目的がぶれません。
最初の一件を施工し、その実績と人の成長に合わせて広げる
最初の目標は、大手との接点そのものではなく、得意分野に近い小口案件を実際に施工することです。 接点ができても、見積もり条件が合わなければ受注には至りません。
まずは一つの開拓先に軸足を置き、対応できる案件から入る。その施工を通じて、品質・費用・納期への対応を見てもらい、継続的な依頼につなげていく考え方です。最初から複数の大手や多くの拠点へ広げるより、今の体制で実績を積める相手を見極めやすくなります。
そのうえで、若手が育ち、任せられる範囲が広がった段階で、案件規模や対応する拠点を広げます。将来の成長を見込むことと、現在の受注判断を慎重に行うことは両立します。
開拓を進めた際の反応も、次の判断材料になります。工事内容は近いが規模が合わないのか、エリアが合わないのか、見積もり条件が合わないのか。つながった・つながらなかっただけでなく、受注に進める条件を残すことが、開拓先の絞り込みにつながります。
まとめ
大手工場の仕事を増やすには、企業の知名度よりも、既存の施工経験と現在の体制に合う入口を探すことが重要です。
工事内容、案件規模、対応エリア、施工能力、働く環境。この五つをそろえて見ると、候補企業の一覧が、確認すべき相手の一覧に変わります。
大きな工事を受けられるまで、開拓を待つ必要はありません。今できる小口案件から関係をつくり、人の成長に合わせて受注を広げる。その順番なら、従業員が安心して力を注げる環境と、会社の成長を一緒に考えられます。
今の施工体制に合う工場の開拓先を整理したい方へ
「どの大手を目指すか」より先に、「今の自社なら何を任せてもらえるか」から整理することもできます。 候補企業が決まっていない段階でも、経験のある工事と現在の施工体制を並べることで、開拓の方向性を考えやすくなります。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。工場の案件獲得や取引先開拓についても、営業先だけを切り離さず、施工体制や人材の成長を踏まえて一緒に考えます。
「うちの場合、どんな相手から始めるとよいか」「何から整理すればよいか分からない」という段階でもご相談いただけます。無理にサービスの利用を勧めることはありませんので、次の整理先としてお声がけください。