社員と協力職人で施工を回しながら、手間請けが受注の一部を占める専門工事会社
仕事が足りないのではなく、今ある仕事の中身を変えたい。受注構成を見直す出発点は、ここにあります。
埼玉県を拠点に首都圏で窓まわりのフィルム施工を行う、社員数名の専門工事会社では、日々の仕事は十分にありました。住宅を中心に、集合住宅やオフィスなどにも対応し、防犯用途の施工を長く手がけてきた会社です。
受注の一部を占めていたのが、材料を含めず、施工の手間を請ける仕事でした。その割合は半分に満たないものの、会社としては、材料・施工込みで請ける仕事を増やし、利益率を改善したいと考えていました。
施工する人数が足りないわけではありません。社員に加えて、長年付き合いのある一人親方とのネットワークがあり、月の半分ほど継続して協力してもらう職人もいます。一方で、社員だけではまだ任せにくい、難易度の高い施工も残っていました。
この会社が求めていたのは、単に受注件数を増やすことではありません。現在の施工体制を生かしながら、給与を確保できる仕事量と、利益を残せる受注内容を両立することでした。
社員の給与を支える手間請けを、利益の残る仕事へ置き換えにくい状況
手間請けを減らしたくても、その仕事が社員の給与を支えているため、先に減らす判断は取りにくいものです。
この会社でも、社員に任せられる仕事を確保するために、手間請けを受け続けていました。難しい施工をまだ任せきれない社員にも、働ける現場を用意する必要があります。経営側から見ると、利益率だけでは受注を選べない事情がありました。
ここには、二つの判断が重なっています。一つは、社員の稼働を保つために必要な仕事量です。もう一つは、会社として増やしたい仕事の採算です。前者だけを優先すれば、忙しさは維持できても受注構成は変わりません。反対に、後者だけで仕事を選ぶと、社員に任せられる現場が不足する可能性があります。
そのため、見直すべきなのは手間請けの有無そのものではなく、どの仕事を残し、どの仕事から入れ替えるかです。材料・施工込みの案件でも、社員では対応しにくい施工ばかりが増えるなら、目指していた状態とはずれてしまいます。
利益率の改善と、社員が実際に担える施工量を、同じ受注計画の中で考える必要があります。
施工力はあっても、既存の取引関係と商流が受注の選択肢を狭める構造
施工を担う力があることと、希望する条件で仕事を受けられることは、別の問題です。
この会社には、防犯用途の施工を長く続けてきた実績がありました。道具が多く、手間もかかるため、同業者が積極的には扱わない施工も引き受けてきた結果、依頼が集まる関係ができていました。
取引先も、ガラス・サッシ会社、工務店、リフォーム会社など複数あります。ただし、それらの会社が最終的な発注者から直接請けているとは限りません。間に別の会社が入り、自社が商流の下位で施工だけを担う場合もありました。
ここで整理しておきたいのが、「自社にとっての直接の発注者」と「工事全体の元請け」の違いです。自社へ直接注文をくれる会社でも、その会社自身が二次請け、三次請けであれば、新たな取引先が増えても商流上の位置は大きく変わらないことがあります。
取引先の社数だけでなく、その会社が誰から、どの範囲の仕事を請けているのかまで見ることが、受注構成の見直しには欠かせません。
また、長年の取引関係を飛び越えて、上位の発注者へ直接働きかけることには慎重でした。既存の関係を守りながら、新しい受注経路をつくりたいという意向です。
一方、管理会社などとの直接取引を進めてこなかった理由は、施工体制だけにあるわけではありませんでした。営業が得意ではなく、これまで具体的に働きかけてこなかった面もあります。対応できない仕事と、まだ接点をつくっていない仕事を分けると、検討できる選択肢が見えてきます。
任せられる施工と必要な仕事量を基準に、材料・施工込みの受注へ段階的に入れ替える進め方
先に手間請けを減らすのではなく、今の体制で受けられる材料・施工込みの仕事を見極め、受注の見通しに合わせて入れ替える進め方が適しています。
判断の順番は、施工体制、確保すべき仕事量、取引先の条件です。営業先のリストづくりから始めるよりも、何をどこまで請けられる会社なのかを先に整理した方が、狙う相手を絞りやすくなります。
まず、社員だけで任せられる施工と、社長や協力職人の力が必要な施工を分けます。この会社のように、協力職人との長い付き合いがあれば、社員数だけで受注の上限を決める必要はありません。ただし、人数がそろうことと、必要な難易度の施工を担えることは分けて確認したいところです。
整理する項目は、次の三つに絞れます。
- 社員に任せられる施工の種類と難易度
- 協力職人を含めて対応できる仕事量
- 社員の給与を支えるために継続して確保したい仕事量
この整理によって、残す意味のある手間請けと、優先して入れ替えたい手間請けが見えてきます。社員が担える仕事を確保する役割が大きい案件まで、一律に減らす必要はありません。
次に、材料・施工込みで請ける候補を、現在の仕事と比較します。材料を含めれば売上の見え方も変わるため、売上額の増加だけで利益改善を判断しないことが重要です。 材料と施工にかかる費用を踏まえて何が残るか、今の体制で無理なく施工できるかを併せて確認します。材料・施工込みという受注形態だけで、採算がよくなるとは限りません。
取引先を選ぶ際には、次の二つを別々に確認します。
- 材料・施工込みで、どの範囲まで発注してもらえるか
- 工事全体の商流の中で、その取引先と自社がどの位置に入るか
今回の会社で候補になったのは、得意な防犯施工と接点のある警備会社や、既に施工経験のあるガラス・サッシ会社、管理会社などでした。大手との直接取引だけを目標にするのではなく、一次請けの会社から材料・施工込みで請けるなど、今の施工体制に合う経路も検討できます。
既存の取引関係への配慮も、候補を選ぶ条件に含めます。現在の発注者を飛び越えることを前提にせず、既存取引と競合しにくい新しい相手を探す方が、関係を保ちながら選択肢を増やしやすくなります。
最後に、新しい仕事が一度入っただけで、従来の受注を大きく減らさないことです。継続して発注される見通しと、社員・協力職人で対応できる状態を確かめながら、入れ替える量を決めます。目標は手間請けをなくすことではなく、必要な稼働を守りながら、利益が残る仕事の割合を高めることです。
まとめ
忙しさを利益につなげるには、仕事を増やす前に、誰が施工できる仕事を、商流のどの位置で、どこまで請けるのかを整理することが出発点です。
社員の給与を守るための手間請けには、現在の会社を支える役割があります。その役割を確認せずに減らすのではなく、社員に任せられる施工、協力職人を含めた対応力、確保すべき仕事量を基準に、入れ替える対象を選んでいきます。
材料・施工込みの受注や、より上位の商流への移行は、そのための選択肢です。それ自体を目的にせず、採算と施工体制、継続性が合う仕事を増やすことで、今の忙しさを保ちながら受注の中身を変える道筋が見えてきます。
手間請けをどこから見直すか、受注構成の整理から
新しい取引先を探す前の段階でも、残したい仕事と増やしたい仕事を分けるところから相談できます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場の対応力や組織、原価などのつながりから整理し、実行まで支援しています。受注構成の見直しでは、現在の仕事量と施工体制を踏まえ、狙う取引先の条件整理から開拓、その後の継続的な関係づくりまで一緒に進めます。
「うちの場合は、どの手間請けを残すべきか」「材料・施工込みの仕事を増やしたいが、何から整理すればよいか」という段階でも構いません。無理にサービスを勧めることはありませんので、自社に合う進め方を考える整理先としてご相談ください。