塗装の受注機会を持ちながら、改修工事の一括受注を目指す専門工事会社
塗装工事の仕事を増やすことと、改修工事を一括で受けられる会社になることは、つながっていても準備が異なります。 まずは、将来の受注形態と、現在対応できる工事範囲を分けて考えることが出発点です。
首都圏を中心にマンション・ビルの改修に携わる、ある塗装会社では、将来的に管理会社などから直接工事を受け、元請けとして事業を広げたいと考えていました。目指しているのは売上の拡大だけではなく、社長がすべてを担わなくても、社員が仕事を続けていける会社です。
すでに塗装を単独で発注してくれる取引先があり、ほかにも工事を依頼したいという反応を得ている相手がいます。一方、自社の施工予定が先まで埋まっていて、すぐには応じられない場面もありました。
協力会社は十数社ありますが、抱えている人数は会社ごとの差が大きく、特定の会社に多くの人員が集まっています。管理者の採用も進めているものの、必要なペースでは増えていません。
仕事の接点がまったくないわけではなく、今ある受注機会に対応する施工力と、将来の一括受注に必要な資格・管理体制をどう整えるかが、成長の焦点になっていました。
一括で受けたい工事と、現在の資格・管理者で受けられる工事の隔たり
受注を広げるうえでの課題は、営業先の数だけでなく、依頼された工事を自社の責任で受けられる条件がそろっていないことです。
この会社が目指すのは、改修工事をまとめて受け、自社から現場代理人を出して管理する形です。しかし、現状では資格面に不足があり、一括では任せてもらいにくいという認識がありました。
そのため、当面の受け方として挙がっていたのは、塗装単独のほか、塗装と防水、塗装とシーリングの組み合わせです。これらは相談時点で想定していた範囲であり、実際に受注できるかは、工事内容と自社の資格・許可、配置できる人員を照らして確認する必要があります。
ここで整理したいのは、次の二つです。
- 将来受けたい工事に対して、資格・許可や現場管理者が足りない状態
- 現在受けられる工事に対して、施工を担う協力会社や人員が足りない状態
前者は、一括受注に向けた準備の課題です。後者は、目の前の受注機会に応じるための課題です。どちらも人の問題に見えますが、協力会社を増やすだけで資格・管理体制の不足まで解消できるわけではありません。
「どの工事を受けたいか」と「何が足りずに受けられないか」を対応させると、採用・資格取得・協力会社開拓の役割が明確になります。
資格取得には時間がかかり、有資格者の採用にも慎重な判断が必要な事情
一括受注への移行をすぐに進めにくい背景には、資格取得までの時間と、有資格者を採用する負担があります。
相談先が想定していた資格試験は年に一度で、取得したいと思っても、その場で条件をそろえられるものではありませんでした。資格取得を待つ間にも、社員の仕事を確保し、売上と実績を積んでいく必要があります。
有資格者の採用についても、単に人数を増やせばよいとは考えていませんでした。給与に加えて採用に伴う負担があり、任せられる工事と、その人が実際に担える管理業務を見極める必要があるためです。一定規模の工事を一人で任せられる人かどうかが、採用判断の重要な点になっていました。
一方で、塗装単独の発注先開拓と協力会社探しについては、社長は「同時に探しています」と話していました。どちらかを完全に止めるのではなく、少しだけ協力会社の確保に重心を置く考え方です。
この判断には、すでに工事の相談を受けていることが関係しています。営業先を増やしても、施工予定が埋まっていれば受注につながりません。また、接点を持った相手の中には、施工実績の不足からすぐには取引が進まない先もありました。
つまり、営業活動だけを先に広げるのでも、資格がそろうまで待つのでもなく、今受けられる工事で実績を積みながら、次の受注範囲を支える管理体制を準備する必要がある状態だったと整理できます。
今受けられる塗装工事を広げながら、一括受注に必要な条件を段階的に整備
将来の一括受注に向けた準備と、現在の塗装工事の受注拡大を、別々の進行として並行させるのが現実的です。 両方を同じ速度で進める必要はありません。現在の受注機会に対して、何が不足しているかで力の配分を決めます。
目指す一括受注の範囲と、必要な資格・許可を確認する
最初にそろえたいのは、「一括で受ける」という言葉の中身です。塗装・防水・シーリングをまとめて受けたいのか、それ以外も含む改修全体を受けたいのかによって、確認する工事範囲が変わります。
また、管理会社などから直接受けることと、複数の工種をまとめて管理することも、分けて整理しておきます。直接の取引を目指すだけなのか、工事全体を引き受ける体制まで目指すのかを明確にするためです。
そのうえで、目指す工事内容に対して必要な資格・建設業許可と、人員配置の条件を確認します。現場代理人として管理を担う役割と、法令上求められる技術者の配置要件は、同じものとして扱わずに確認することが大切です。 「資格を持つ人を一人採れば、どの工事も一括で受けられる」という前提では進めないようにします。
現在対応できる範囲と不足条件が見えれば、資格取得を進める部分と、採用によって補う部分を分けて考えられます。
管理者の採用は、任せたい工事から逆算する
管理者の採用では、保有資格だけでなく、どの工事をどこまで任せたいかを先に整理します。相談先が重視していたのも、資格の有無だけではなく、一定規模の工事を一人で管理できるかという点でした。
採用する人の条件は、「欲しい資格」だけでなく「受注後に任せる仕事」まで含めて定めると、判断しやすくなります。 実際に任せられる見込みのある案件と照らし、採用に伴う負担に見合う役割を担ってもらえるかを考えます。
資格取得を進める場合も、試験時期と取得までの見通しを確認し、それまではどの工事範囲で事業を進めるかを合わせて決めておきます。取得予定を、そのまま受注可能な状態とみなさないことも必要です。
準備期間は、塗装単独や対応可能な組み合わせで実績を積む
資格・許可と管理体制がそろうまで、営業を止める必要はありません。現在の条件で受けられる塗装単独の案件や、確認のうえで対応できる防水・シーリングとの組み合わせを開拓していきます。
ただし、新しい発注先を増やす前に、既存の取引先や、すでに工事の相談がある相手に応じられているかを確認します。この会社のように、施工予定が埋まっているために受けられない仕事があるなら、先に協力会社の確保へ力を寄せる意味があります。
判断軸は、次のように整理できます。
- 受けられる工事の相談はあるが、施工人員が足りない場合は、協力会社の確保を優先する
- 施工・管理に余力があるのに、対応可能な案件の接点が少ない場合は、発注先の開拓に力を入れる
- 一括受注の機会があっても、資格・許可や管理者が足りない場合は、その不足条件の整備を進める
営業か体制整備かを会社全体で一つに決めるより、受けたい工事ごとに判断するほうが、動きを止めずに進められます。
協力会社は、社数ではなく任せられる工事で見る
協力会社の確保では、登録社数を目標にするだけでは実際の施工力が見えません。相談先でも、人員規模は会社によって大きく異なり、売上目標に対して必要な社数を一律には出せないという認識でした。
確認したいのは、マンション・ビル改修の実績、塗装・防水・シーリングなどの対応工種、必要書類を提出できること、そして工事に対応できる人数です。法人か個人事業主かだけで線を引かず、必要な条件を満たし、実際に協力関係を築けるかを見ていきます。
協力会社の一覧は、単なる連絡先ではなく、「どの工事を任せられる相手か」が分かる状態にすることが重要です。 公開情報だけでは、自社の工事に協力してもらえるかまでは判断できないため、直接確認しながら候補を広げます。
この施工体制づくりは、現在の塗装工事を受けるための準備であると同時に、将来、複数工種をまとめて受ける際の土台にもなります。ただし、自社に必要な資格・許可や管理責任を代わりに満たすものではないため、両方を並行して整えます。
まとめ
一括受注を目指す塗装会社が最初に整理したいのは、目指す工事範囲と、現在受けられる工事の間にある不足条件です。
資格・許可、現場管理者、施工を担う協力会社は、それぞれ役割が異なります。何が足りないかを分ければ、管理者の採用や資格取得を進める一方で、塗装単独など現在対応できる案件を受け、実績を積む道筋が見えてきます。
既存の受注機会に応じきれていないなら、営業先を増やすことより施工体制の整備に重心を置きます。体制に余力があるなら、その範囲に合う発注先を開拓します。
一括受注は、資格がそろった日に突然始まるものではありません。今の受注を支える施工体制と、次の工事範囲を担う管理体制を、段階的につなげていくことが成長の進め方です。
一括受注に向けた、営業と施工体制の優先順位の整理
自社では管理者の採用を先に進めるべきか、協力会社を増やすべきか。それとも、現在の体制で受けられる発注先を探すべきか。判断に迷う場合は、すでに来ている工事の相談と、受けられない理由を並べるところから整理できます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。一括受注に向けても、目指す受注形態と現在の体制を照らし、案件開拓、協力会社の確保、管理者採用の進め方を一緒に考えます。
「うちの場合は何から整えるべきか」という段階でもご相談いただけます。無理にサービスの導入をお勧めすることはありませんので、次の一手を整理する場としてご活用ください。